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英雄とスライム  作者: ソマリ
英雄編
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3章 第52話D ぶっ飛んでやがるぜ

 鑑定魔術とかよくわからねえが、俺には関係無さそうだな。話は終わったようだし、さっさと銀猿ぶっ飛ばしに行ってくるか。


「んじゃ俺は銀猿退治に行って来るぜ」

「ちょっと待つのじゃダグ、異界まではわしらも一緒に行くのじゃ。そこで軍用ゴーレムを預けるでのう、よろしく頼むのじゃ」


 何だ、ナナと新入り四人は蜜蜂集めか。


「補佐を任されましたから~、わたしも行きますね~」

「姉御にあげる大物退治してくるよ!」


 リオとセレスも来るのかよ。だが今のこいつ等には大抵の相手なら任せられるからな、俺がボス猿倒すのに邪魔が入らねえようにするってんだから歓迎だぜ。

 あとはナナの軍用ゴーレムか。そんなに強くねえとは言ってたけどよ、その辺についてはナナは一切信用できねえ。どうせ無茶苦茶な奴が出てくるんだろうぜ。




 なんて思ってたけどよ、別の意味で無茶苦茶じゃねえか。これを俺が連れて歩く、だと……


「鷹型ゴーレムの『タカファイター』と熊型ゴーレムの『くまキャノン』、それと亀型ゴーレムの『カメタンク』じゃ。よろしく頼んだのじゃ」

「ナナよぉ……鷹はわかる。姿も形も随分リアルだな。だが問題はこっちだ。熊型ゴーレムに亀型ゴーレムだと? こんな熊や亀がいてたまるか! ナナの部屋にあるぬいぐるみそっくりじゃねえか!!」


 熊型はずんぐりむっくりな三頭身で俺より少し背が高く、そして鮮やかな黄色い毛皮で覆われているし目も可愛いしで、巨大なぬいぐるみにしか見えねえ。

 亀型は完全に旧わっしーの小型版だ。熊型より少し背が高くて大きな甲羅で暗めの緑色と、グランドタートルっぽいけどあいつはこんなに可愛い顔はしてねえ。

 そしてこの熊と亀の共通点が一つ。両肩から一本ずつ伸びる金属製の太い筒、これってナナが持ってる『ハチ』と同じ奴じゃねえだろうな。


「簡単に説明しておくのじゃ。タカファイターは偵察兼高機動ゴーレムで、くまキャノンは近接戦闘も可能じゃ。カメタンクは四人乗りの小型わっしーだと思えば良いのじゃ。ただし腹の下にある『きゃたぴら』というものを使って移動するようにしておるので、揺れは少ないのじゃ。本体は硬く空間障壁も張れるでのう、防御力はずば抜けておるので乗っておればまず安心じゃよ」


 ナナめ、無視して説明始めやがった畜生。この面白動物ゴーレム出してから、一度もこっち見ねぇでニヤニヤしてやがる。


「わあ、くまキャノンの毛皮、ふわふわで触り心地がいいよ! カメタンクも可愛いね、姉御!」

「ふふふ、そうじゃろう。これらは三対で一組として、有人での使用を前提としたゴーレムなのじゃ。カメタンク内のモニターで、タカファイターからの映像が見えるようになっておる。タカファイターで索敵して、くまキャノンとカメタンクで砲撃というのが基本的な戦闘スタイルなのじゃ」


 今『砲撃』っつったな。間違いなくこの金属の筒、ハチの同類じゃねぇか。

 とりあえず約束しちまったものはしょうがねえ、連れては行くが後方で待機させておけばいいだろ。




 とは思ってたが、思いのほかカメタンクは揺れが少なく乗り心地が良かったので、銀猿の発見地点までカメタンクに乗って移動することにする。カメタンクの中にあったクッション付きの椅子、座り心地良すぎるぜ。魔狼ゴーレムより遅いけどよ、あれ長く乗ってるとタマが痛くなるんだよな。

 それに先行偵察に出したタカファイターからの映像が映る『もにたー』とかいう奴もおもしれーし。ぶっちゃけこれだけでもアルトがひっくり返るんじゃねえか。

 そんでカメタンクの横で四速歩行で走ってるくまキャノン。何だよあの楽しそうに開いた瞳は。



「ねえダグ! 鷹さんが銀猿見つけたみたいだよ!」

「ああ? 随分と近いとこにいるな、地上だとブランシェ作ってる辺りじゃねぇか。恐らく偵察だろ、無視して行くぞ」

「あら~? モニター横の黄色いボタンが光りだしましたわ~?」


 嫌な予感しかしねえ。


「ぜってえ『カチッ』触んな。ナナの事だ、間違いなく……かちっ?」

「あ、ごめんダグ押しちゃっ『バスッ! バスッ!』え、何!?」


 体に軽い揺れを感じたが、カメタンクの両肩の筒から何か発射されたっぽいな、白煙が上がってやがる。隣のくまキャノンまで筒先から白煙が――


『ドドドドオオオオン!!』


 あーこれ見たことあるぜー。こないだナナに牛の乳を出せって言って撃たれたとき、こんな感じだったんだよなー。木が土砂ごと根元からえぐられて空をぶっ飛んでやがる、生き埋めにされた嫌な記憶が思い出されるぜ。お、あれは銀猿の一部じゃねえかなー、木っ端微塵にぶっ飛んでやがる。ははははは。


「リオちゃ~ん、不用意にあちこち触るのはやめましょうねぇ~」

「あ、あははー、ごめんセレス。でもこれ凄いね!!」

「……何でおめえら二人とも平気な面してんだよ」

「「だって姉御 (ナナちゃん)の作ったものだし?」」


 あーそりゃそーだ。あいつの作るもんが、常識の範囲に収まるわけがねえ。


「く、くくくっ、はははははっ! とりあえずあれだ、人のいねえ場所でよかったと思っておくか! 土煙が収まったら、状況の確認だけして銀猿探しを続けんぞ。リオはもうその黄色いボタンが光っても押すんじゃねえぞ!」


 結局さっきの砲撃は辺りの森をなぎ払い、一面の荒野へと変貌させやがった。火が着かねえ攻撃で良かったぜ。

 それからしばらくしてようやくタカファイターが銀猿の群れを発見、また黄色いボタンが光ったが、今度はリオもおとなしくしてくれて安心したぜ。

 ボス猿に向けて真っ直ぐ突っ込むよう指示すると、肉眼でもボス猿が見えるようになった。ボス猿は俺の倍はありそうだな、あのサイズ以前はブルっちまったが今の俺なら余裕で勝てる。隣にいる一回り小さい奴等ごとやりゃあ少しは楽しめそうだ。


「くくくっ、リベンジと洒落込もうじゃねえか! いいか、あいつらは俺の獲物だからな!!」

「あら~? 今度はモニター横の青いボタンが光りだしましたわ~?」


 嫌な予感しかしねえ。


「ぜってえ『カチッ』触んな。間違いなく……かちっ?」

「あ、ごめんダグ押しちゃっ『タタタタタタタタタタタ』『パスン! パスン!』え、何!?」


 体に小気味良いリズムと共に軽い揺れを感じるな、カメタンクの両肩の筒から何かが連続で発射されてるっぽいぜ、白煙が上がってやがる。隣のくまキャノンなんて肩の筒先だけじゃなく、何か両手からも例の筒が二本ずつ出てきて良い音出してやがる。ありゃナナのトンファーと同じ『散弾』とかいう奴じゃねえか。


「おい、リオ」

「……す、すごいねーダグ、あっという間に銀猿の群れが壊滅していくよ?」


 カメタンクは小回りが利かないからか前方にしか撃っていないが、くまキャノンがとんでもない。二本足で器用に走り回り、腕の先を向けた先にいる銀猿があっという間に穴だらけになり、血しぶきを上げてぶっ倒れていく。よく見るとつぶらな瞳が凛々しく変わってやがる。変なところで芸が細かいが、ナナらしいっちゃあナナらしいな。

 それとたまに上空から氷の矢が大量に降ってきてるのが見えるんだが、タカファイターの仕業みてえだ。逃げていく奴を集中的に狙ってるな。

 ボス猿はすぐ隣りにいた一回り小さいやつの死体を盾にしているが、カメタンクの正面から動けないようだし時間の問題か。つーか、俺の獲物……


「こうなると~、光っていないもう一つのボタンが気になるわよね~?」

「そういや赤いのだけ光って『カチッ』ねえな。ああ、予想してたぜリオ」

「えへへー」


 何も起こらないから光っていなきゃ駄目なのかと思ったが、カメタンクに軽い揺れが伝わった。


「何だ? 足を全部地面につけて……固定した?」

「ダグ! セレス! カメタンクの口がものすごいおっきく開いたよ!!」

「あら~、何かもの凄いのが出そうね~」


 魔力視を発動させてみる。ああ、カメタンクの口にとんでもねえ量の魔素が集まってんな。


 今日三度目だな。ああ、嫌な予感しかしねえ。


『ドゴオォォォォォン!!』


「……」

「……」

「……」


 爆風で何も見えねえ。つーかカメタンクが障壁張ってなきゃ、俺達もカメタンクにしがみついてるくまキャノンも吹っ飛んでたんじゃねえかこれ。ってくまキャノン、泣きそうな目でカメタンクにしがみついてんじゃねえよ……軍用ゴーレムだよな、これ……。

 それとモニターに映るタカファイターの映像……すげーぐるぐる回ってるっぽいけど、吹き飛ばされてねえかあいつ。

 お、タカファイターが体勢立て直したな、一体どんだけの範囲が吹き飛んで……うわぁ……。

 森がたった一発で跡形もなく吹き飛んでやがる。広さにすると元拳王都市と同じくらいの範囲か。

 ナナはこんなもん量産する気か。あいつは大陸丸ごと吹き飛ばすつもりじゃねえだろうな。


「リオ。ぜってーボタン触んな。セレス、次リオがボタン触ろうとしたらふん縛れ」

「「はーい……」」

「んで、これどーするよ……確かこの先に光人族の元集落があったはずなんだが、それも跡形なくぶっ飛んでるぞ……」


 肉眼で見える範囲には、まともに立ってる木が一本もねえ。つーかかめタンクの回りも爆風ですげーことになってんな。


「姉御へのお土産が粉々になっちゃった……」

「リオちゃ~ん、自業自得よ~? それにお土産どころか、森が一つ木っ端微塵よ~」

「とりあえず……戻るか」


 何か気が抜けちまった。ナナの軍用ゴーレムの試験は終わったし、こんだけやりゃ銀猿も二度と近付いて来ねえだろ。




 それにしても……いくら強さを求めても、あんなもん食らったら一発で終わりじゃねえか。惚れた女を守れなかった分、ヒルダの身内であるナナを守るつもりで鍛えてきたが、俺っていらねえんじゃねえか?

 未だにぶぞーととーごーには勝てねえしな。


 俺はナナの役に立っているのか?


 拳王として守ってきた民も、今は魔王ナナの民だ。俺にはもう、守れるものが何も――


「あらあらダグさん、難しい顔してるわね~?」

「ダグは馬鹿なんだから考えても無駄だよ!」

「リオ、何も考えてねえお前よりはマシだぜ」


 馬鹿なのは自覚してるが、リオにだけは言われたくねえな。


「オレだってちゃんと考えてるもーん。次は姉御、どんな事をするのかなーって! それ考えてると、すっごいワクワクするよ!!」

「ほんとね~。あら、もしかしてリオちゃんがナナちゃんの側を離れてこっちに来たのって、かめさん・たかさん・くまさんに興味があったからかしら~」

「え、えへへー」


 ああ、今理解した。こいつ最初からボタン押す気満々だったな!


「く、くくくっ、はははははっ! そうだ、そうだったな! ナナの側にいるだけで、面白えことが盛り沢山だ!! ……俺の力じゃナナの役に立てねえとか考えてたけどよ、何かどーでも良くなってきたぜ」

「ダグの力で駄目なら、オレとセレスなんてお荷物でしか無いよ! でも姉御の近くで一緒に笑ってるだけで、姉御はきっと喜んでくれてると思うよ!」

「そうね~、ナナちゃんああ見えて寂しがり屋さんだから~。ナナちゃんね~、ぱんたろーかぬいぐるみか、わたし達のどっちかに抱きついてないと夜は休めないのよ~」


 そういやヴァンの野郎をぶっ飛ばして戻ってきてから、狂ったみてえにぬいぐるみ作りまくってたな。


「それにこの軍用ゴーレム、姉御は市街地とか人の多いところじゃ戦闘させないと思う。だから万が一の時は、オレが体を張ってでも姉御を守る」

「わたしもそうよ~。ゴーレムが間に合わない時だって、あるかもしれないわよね~」

「そうだな、いくら強くてもぶぞーもとーごーもゴーレムだ、命令がなきゃ動けねえ。くくっ、ぶっちゃけ地上の危険度の低さに気が抜けてたけどよ、何があるかわかんねえのが人生だ。万が一なんて起こさせねえ、あの小憎たらしくて可愛らしい魔王サマを守るのが俺達の仕事だ! これからも鍛えてやっから覚悟しとけ!!」


 リオの言うとおり、考えるだけ無駄だったぜ。俺達が楽しめば、ナナも楽しむ。そしてリオやセレスに万が一があったら、ナナが悲しむ。プディング魔王国の民に何かあっても悲しむだろう。なら俺は、その悲しみからナナを守るため、リオやセレス、そして国民を守りゃ良いじゃねえか。


 リオもセレスも万が一の盾になんかさせねえ。

 この俺が、その前に敵をぶっ飛ばしてやる。

 ああそうだ、守るだなんて俺の性には合わねえ。敵を討つ。それが俺の拳にできることだ。

 敵を討った結果、守れてりゃ良いじゃねえか。今やっとわかったぜ。


 これが俺なりの、ナナの守り方だ。


 それによ、ジル達と森人族のガキを助けた時の『わしの敵を、滅ぼせ』って命令、ありゃ最高にシビレたぜ。

 ナナに代わってナナの敵を討つ。ああ、最高の気分だぜ。


 それと今度ヒデオが来たら徹底的に鍛えてやるか。ヒルダの遠い血縁らしいエリーまでは、流石に手が届かねえからな。ヒデオに守らせりゃいいだろ、ヒデオが強くなればナナも喜ぶだろうしな。


「そーいやよ、何だってさっさとナナとヒデオをくっつけねえんだ?」

「え。だって今の姉御にその気がないんだもん」

「そうね~。観察してニヤニヤしていたいのもあるけれど~、ナナちゃんが一歩踏み出す決断をしないことにはね~、外から口を出すとこじれてしまうわ~」


 意味がわかんねえ。


「それにナナちゃんとヒデオくん、多分だけど寿命が無いわ~。だから焦ってくっつけようとしなくても、いずれくっつくわよ~」

「でも今は機会があればなるべく会わせるようにして、姉御とヒデオのやり取りを見てニヤニヤしてようって、エリー達とも話してあるんだ!」

「悪趣味過ぎねえか?」


 女こええ。


「だって、他に思いつかないんだもん。エリー達が寿命で亡くなった後か、姉御がエリー達と一緒にヒデオと結婚する決断をするかの、どっちかしか無いんだよね」

「だからダグさん、余計な事は言わないようにして下さいね~」

「お、おう。わかったぜ」


 一歩間違えば全員を敵に回すな、俺はこの件に一切関わらないでおこう。むしろ忘れよう。


 そんなことより、カメタンクの乗り心地マジで良いな。

 この椅子魔狼ゴーレムにつけりゃ、キン○マ痛くならねえんじゃねえかな。今度ナナに相談してみるか。






 地上へのゲート近くに着くと、ナナ達が待ち構えていた。ジル達の表情が強張っているのを見ると、どうやら無事に巨大蜜蜂とは対面できたようだな。


「おかえりなのじゃー。ずいぶん派手にやらかしたようじゃの」

「えへへー、ボタン全部押しちゃった! 姉御ただいま!!」

「ナナちゃんただいま~。軍用ゴーレムって凄いわね~、特にくまちゃんが可愛いわ~」

「おうナナ。あのカメタンクの中にある椅子だけどよ、魔狼ゴーレムに取り付けたりできねえか? 狼は長く乗ってるとキ○タマが痛『ガスッ!』ぐげらっ!?」


 硬い何かが顔面にって、スライムか! 金属の塊かと思ったぞ!!


「ダグはデリカシーというものを勉強せいと、あれほど!」

『ゴスッ!』


 あ、やべえまたやった。ところで空と地面が交互にぐるぐるぐるぐる見えるんだが、俺は今どうなっているんだろう。


『ズシャッ』


 ああ、俺はナナに殴られてぶっ飛んでいたのか。いつものことながら容赦ねえぜ……

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