6 辿り着いた(落ちた)場所
■ ■ ■ ■
体が浮いている。 飛んでいる? ……否、この場合、<落ちている>というのが正しいだろう。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
そう、俺---神薙恭平は、現在進行形で、落下中だった。もちろん、服は学校の制服、命綱などもない。所謂、<紐なしバンジージャンプ>というものだった。 ということはつまり、落下しきってしまう前になんらかの手を打たないと、世にも奇妙な落下死体が出来上がってしまうわけで───。
「───くそっ!!」
ようやく、落下場所が見え、そして、視界もクリアに、すると、
「お……おお~~。」
とても、きれいな光景だった。 それ以上の言葉が見当たらなかった。 俺は、しばし自分の状況も忘れ、その景色に見入ってしまった。 そのせいで───
「────あっ」
地面が、すぐそこまで迫っていることに、気が付かなかった。
「やべっ。俺、死ん───」
その瞬間、ふわりと、自分の体が浮くような感覚。 空中で止まったため、何とか死なないで済んだ。 どうやら、あの自称神(笑)が、どんな手段かはしらないが、助けてくれたらしい。……考えてみれば、異世界召喚一手目が落下死なんて、恥ずかしすぎる。
「でも、でもさぁ……何でこんなひっろい草原にポイ捨てするかねぇ……」
だがこの際、そんなことはどうでもいい。 とりあえず、持ち物の確認をしないと。
「木刀と、竹刀……か」
木刀はいつも竹刀袋に入れているからわかる。 けど、竹刀は普段剣道場に置きっぱなしのはずだけど……?
「あ、そうか、手入れしようと思ってたんだっけ」
竹刀には、中結という部分があり、そこが緩むことが多々ある。手入れと言っても、竹を変えたり、なんてことはいまは必要ないらしい。
「とりあえず、人のいる場所を探さないと……」
俺はそう言い、とりあえず木刀を上に放り投げ、落ちた時に指した方角に進むことにする。 そして、木刀が指した方角と、太陽の位置を確認して、
「東……か」
夜じゃなくてよかった、とやや場違いなことを考えながら、俺はまず東へと向かうことにした。