5 自称神(笑)との出会いと異界へ
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「くっ……いっ……てぇ……」
目を覚ますと、異世界だった。────なんてことはなくて、
「……ここは?」
俺はとりあえず、現在地と自分の体の無事を確認する。とりあえず5体満足、現在地は知らん。はっきり言って見覚えはない。
「あれ? 思ってたより早く起きたんだね?」
聞き覚えのない声、俺が素早く声のした方を向くと、そこには、少年がいた。いや、ひょっとしたら少女かもしれない、それぐらい中性的な顔立ちだった。
「……あんたは?」
一応警戒しながら訊ねる。
「うーん……なんて言おうかな……? 君たちの世界で一番有名な言い方だと……神様、かな?」
「ハッ、神様、ね。悪いけどそういうの信じてないんで」
俺は軽くあしらい、その場を後にしようとしたが、
(……そうじゃん。現在地わかんねぇんじゃん……)
その事実を思いだし、ゲンナリとする。
「帰れないってことがわかったみたいだから説明に戻るよ? まず、君は端的に言って、死んではないんだ」
死んではない。つまり多少はヤバいってことだろう。生きてる=死んでないというわけではない。
「俺が覚えてるのは、えげつない頭痛がして倒れたってとこまでで、後はそれきりだ」
「うん、最後はそうだろうね。でもその後に偶然にも訪れた人が救急車を呼んでくれてね、危うく一命をとりとめた、ってわけさ」
「……で? 俺は、どうするべきなんだ?」
俺は一応聞いておく。 こういう話では、そのまま帰れない、という場合が多いし、冷静さを失うのは愚策だろう。
「話が早くて助かるよ。けど、一応聞いてみようかな? ……君、異界って言葉に聞き覚えは?」
異界、漫画やアニメなどでは有名なワードだが、現実で聞くのは初めて、のはずだ。けど、なぜかおぼろげに記憶がある。
「その様子だとあるみたいだね。けど、覚えてるのはおぼろげにってとこかな?」
「へぇ? 神様(笑)はそんなことまでご存じで?」
俺は茶化すように聞く。しかし、自称神(笑)はあくまで真面目な顔をしている。というわけで茶化すのはやめにすることにした。
「異界っていうのはこの現実にも存在するものなんだよ? 極端な話、君にとってついさっきまでいた世界は、君にとって、異界なんだよね」
コロコロと笑いながら言う。……ちょっと待ってほしい。今こいつなんていった?
「おい、今何つった? 俺にとってこの世界が異界だと?」
「残念ながら、ね」
自称神(笑)が言う。
つまりあれか?俺はホントは異界人で、凪先輩達との時間は、俺が本当にこの世界の住人として体験した時間じゃなかったと。
「ふざけんな!! そんなの、絶対に認められるか!!」
俺は声を荒げて叫ぶ。そんなのは絶対に認めない。しかし、あくまで、自称神は冷静だった。
「そんなに信じられないのなら、見てみるといいよ。君が体験した、本当の時間をね」
トンッ。 自称神が俺の額を軽く打つ。すると、俺の頭のなかに流れ込む大量の情報。
「くっ、があぁぁぁ!?」
思わず頭を抱える、しかしそんなことで収まるわけがない。
「君を時折襲った頭痛は、この事を思い出そうと無意識に考えていたからさ。だからついにその痛みがピークに達してここによびだされた」
嘘だ。でも、他でもない俺自身の理性が語ってくる。この記憶は、紛れもない俺自身の記憶だと。
俺はしばらくうめいた後、少しだけ冷静さを取り戻し、再び問う。
「この記憶をみせて、俺にどうしろと?」
この記憶をみるかぎり、俺はその世界で命を落としたらしい。しかし、その前、信也と名乗っていた少年の言葉が妙に引っ掛かる。
「この世界を救ってくれって、どういうことだ?」
そう、失敗したと信也は言っていた。つまり、信也も俺と同じような境遇だった可能性もある。
「……行けば分かるよ」
「はぁ?」
と、俺がいった瞬間、ガタン!という音とともに、一瞬の浮遊感。 こういうときってしたをみるべきなんだっけ?とか場違いなことを一瞬考える。
「ひっ……うわぁぁぁぁぁ!?」
俺はそのまま、暗闇へと落ちていった。
「あんっ……の自称神(笑)がぁぁぁ!!」
────最後に捨て台詞を残して。
どうも皆さんrengeです。 今回すごい長いね(笑)ちょっと2話にわけようか真剣に考えました(笑) 次回からついに異界、主人公にとっての元の世界編です。主人公が、ここからどんな出会いや、戦いをしていくのかをお楽しみください。