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大魔導師、幼女におしりをぺんぺんされる 1/5

1回の話を5話に分け投稿します。4日から8日、19時での投稿です。

全体的に男性向け表現が多くなります。ご注意ください。

「遅かったじゃない!」


 目の前の金髪の幼女が言った。甲高い声だ。腰に手を当てて、えらそうにふんぞり返りながら立っている。


 服を見ると、今オレが着ているようなものと同じか少し薄いぐらいの、白くごわごわとした厚いビニールのような素材でできた、宇宙服のようなものを着ていた。


 だが、あれは宇宙服なのだろうか?


 彼女のものはオレのものと違い、胸の真ん中の部分が縦に裂けているのだ。そこから白い肌が見えている。がんばればもしかしたら先っちょが見えるんじゃないかというほど左右に開いているので、少し胸があれば起伏が見えるのだろうが、悲しくなるほどまったいらだ。胸を張って立っているが、それが無い胸をいっそう強調する結果になっている。


 へそから下の部分にも同じような縦の裂け目が開いており、ぎりぎりまでその裂け目が下に伸びているが、ああ、まだ生えていないんだろうな、というような感想しかいだけない。


 彼女は何を考えているんだろうか。あんな服は宇宙服たりえない。真空に出たら、たとえヘルメットをかぶっていたとしても、あの裂け目から空気が全部漏れてしまうだろう。もしかして、バカの子なんだろうか。


「こら、ティタニア……、どうも、すまないな」


 幼女の横に立った、肌の黒い女が言った。背の高い女だ。すっと通った鼻筋に、黒曜石のような黒い瞳が輝く。ゆるくウェーブしたような長い黒髪だが、日本人の髪とは違う、とても柔らかそうな髪質だ。それが耳を隠している。


 その女もまた、幼女と同じ、二つのスリットが開いた宇宙服のようなものを着ていた。

 そこから見える小麦色に焼けた肌。胸の谷間が見え、彼女が動くたびにそれが左右にふれる。まるで催眠術にかかろうとしている人間が、目の前のライターの火を見続けるように、オレはその胸の谷間を追ってしまう。吸い付いて離れない。これが魔乳か。


 こちらの目線に気がついたのだろう、彼女は肩をすぼめるようにして、手を胸の前に持ってきて腕を組んでしまうのだが、そのために、胸の谷間がより深くなってしまった。恥らう姿。それがまた男の心を魅了するのだ。


 しっかりと毛を処理していることがハッキリとわかる、下のほうの裂け目にできるだけ視線が行かないよう、鋼の精神を総動員しながら、オレは紳士的な声を出して答えた。


「いいんですよ、あの時は私たちも助かりましたし」


 幼女の左ほほに黄色のものが三つ、そしてきれいなお姉さんの左ほほに赤いものが五つ、貴族の証が輝いていた。


 ああ、すばらしい。なんていい宇宙服だ。たとえそれが宇宙服としての機能を果たさないとしても、その「機能を果たさない」という、そのこと自身が、ファッションとしての美しさを際立たせている。


 全裸より着衣のチラリズム!

 オレはこの人を見れただけで、この世界に来て本当によかったと思うよ。




 機械と宇宙船が合体したような怪物、マッドリーパーの巣に突入したあの日より二十五日が過ぎていた。マッドリーパーの巣の中ほどにあった、カナデがもともといたヴィオナムルの遺跡を、怪物たちより取り返そうとしたオレたちではあったが、怪物のあまりの数にほうほうのていで逃げ出そうとした。そのときあらわれたのが、カナデと同じような、謎のヴィオナムル・シップだった。


 そのヴィオナムル・シップは、マッドリーパーがオレたちに引き寄せられている隙をつき、ヴィオナムルの遺跡に突入。その起動を果たし、マッドリーパーたちの弱点となる亜空間力場を遺跡の機能で展開。怪物たちを滅ぼしたのだ。




『何言ってるんですか、マスタぁ! ぜんぜん助かっていませんよぅ! こいつらは私たちをおとりにして、横から遺跡をかっさらっていったんですよぅ! 亜空間力場の強制展開で出た時空乱流に殺されかかったのを忘れたんですかぁ!』


 おい、いらんこというなや。お姉さまに嫌われたらどうしてくれる。オレの左手にはめたリストバンドから発生するかなでの声に、心の中でそんな言葉を返す。


「何言ってんのよ。私たちは、他の亜空間力場に転移しちゃっていなかったし、どうせ、あんたたちだけじゃ気絶したマッドリーパー全部倒せなかったでしょ。隠れているのもいるんだから。中途半端にやるよりは、あのぐらい派手にバサッとやって、卵も何も全滅させちゃったほうがいいのよ」


 幼女が答える。


『それにしたって、警告もまったくなしに亜空間力場を強制展開した理由になりませんよぅ!』


「あー、それは……」


 彼女は視線を左右や上下、あちこちにやったあと、ひとつうなずきない胸を張って言った。


「あんなことになると思うわけ無いじゃない! 起動するときに警告も無いなんて、あんたら作ったヴィオナムルの人間って馬鹿なんじゃないの?」


『きーっ! 警告ぐらいありますよぅ! そっちのでかちちの人は聞いていなかったんですかぁ!』


「で、でかちち……」


 きれいな女の人がなぜかショックを受けたように、自分の胸をさわっている。ずっと見ていたい光景だ。


『ありましたよねぃ!』


 カナデがさらに問いかけると、彼女ははっと気を取り直したような顔をし、答える。


「あ、ああ。確かに何か言っていたな。ティタニアが、早くしろ早くしろと叫んでいて、何を言っているのかぜんぜん聞きとれなかったが」


『やっぱり、あんたのせいじゃないですかぁぁ!』

「エレナ、私を裏切るのっ!?」


 カナデと幼女、ティタニアという名前らしい、の声が響いた。

 そして、あの美人さんの名前はエレナさんだ。オレは、その情報を脳に焼き付ける。


「いや、裏切るわけではなくてだな。えーと、そうだ、それより目的の話しをしようじゃないか。なっ?」


 お姉さんが困って話をそらそうとしているぞ。ここで援護射撃をすればポイントアップだ!

 オレはできる限りのダンディーボイスで言葉をつむぐ。


「ええ、私もずっと気になっていたんです。なんでもカナデがいただいたメールによれば話しがあるとか」


 メールというより、無線通信の文字版みたいな機能らしいが、彼女たちが亜空間力場に消える前に、オレたちへ送信したらしいのだ。この人気のない宇宙港の一角、広場になっているような場所へ来るようにと。


『ま、マスタぁが気持ち悪いですよぅ!』


 おいこら、カナデ。かっこつけて声を出している人間に気持ち悪いはないだろう。


「あ、ああ、そうなんだ。君たちに、ちょっと頼みたいことがあってな」


 お姉さんが右手をひらひらさせながら答えてくれる。


「はい、かまいませんよ。いったい、どのような用件でしょう?」


 オレは答えながら、一歩近づいて、あの右手を両手で握り締めても大丈夫だろうかと考えていた。

 いや、まずいな。唐突すぎる。ここは我慢だ。鋼の精神よ、耐え切ってくれ!


「あんたたちには、私を連れて、ある鉱石をとりにいってほしいのよ!」


 オレの質問に答えたのはティタニアという幼女だ。彼女がお姉さんの前に出てきて、腰に左手を当て、こちらを右手で指差しながら、ない胸をはって言った。

 彼女の胸のせいでお姉さんの下の割れ目が見えない。もちろん、そっちの割れ目じゃなく、宇宙服の割れ目のほうだ。

 というか、なんでお前はそこに立った!

 くっそ。どうすればいい。どうすれば再び、あの割れ目を見ることができる!


 そこでオレはひらめく、自然に少し横に移動するためのナイスなアイディアを。

 オレはお姉さんの胸にいこうとする自分の目の動きを気合で制御し、お姉さんの目を見つめながら、にっこりと笑いながら言った。


「かまいませんよ。ですが、もう一人の仲間とも相談しなくてはいけません。ちょっと通信をさせてください」


 そういって、オレは左横に歩いていく。ふっふっふ、携帯とかをかけるとき、人はすみに行くもの。この世界で通信をするときも似たようなもんだろ、きっと。


 オレは左手のリストバンドを操作し、カナデの回線からおっちゃんのものに切り替えると、彼を呼び出した。

 一秒もしないうちに、リストバンドからおっちゃんの声が聞こえてくる。


「なんだー?」

「ヴィクターさーん、依頼受けていいですか?」

「おー、いいぞー」

「ありがとうございまーす」


 通信を切る。さっき切ったカナデの回線から呼び出しがあることを示す表示が出ているが無視だ。今はそれよりもはるかに重要なものが待っている。そう、男には、やらねばならないときがあるんだ。


 胸がドキドキしてたまらない。

 この角度からなら、あとは振り返るだけで、お姉さんの下の割れ目が見えるはずだった。

 オレはだらしなくゆるむ口元をもとに戻すのに苦労しながら、ゆっくりと振り向く。

 わが目に再び、あの夢の花園を!


 そしてオレの目には、幼女が両手を腰に当てながらはっている、ない胸がうつった。


 なんで移動したーっ! お姉さんとオレの視線の間にティタニアが動いていたのだ。ティタニアが聞く。


「大丈夫だったわよね!」


 大丈夫だったけどな!

 オレは、お姉さんを見ながら答えた。


「ええ、問題ないですよ」


 だが、まだだ。まだ終わらんよ。チャンスはある。一緒に鉱石をとりに行ってほしいと言われたんだ。このお姉さんの依頼を受けるということは、その依頼を達成するまで、彼女がずっとついてくるということになる。あの秘密の花園を見る機会は何度でもあるのだ!


「すまないな、じゃあ私は任務に戻るから。ティタニアのことをよろしくお願いする」


 そう、お姉さんが言った。え、どういうこと?


「ティタニア、無駄な気もするんだが、私のことは君の父親にはだまっていてくれよ。あの人は親ばかという何というか。面倒なんだから……」

「大丈夫よ! 私は、私一人の力でここに来て、遺跡も手に入れたの! そのほうがパパも私の力を認めやすいしね!」


 あの、お姉さんとこの子が一緒にあの船でついてくるんですよね……?


「じゃあ、これがティタニアの荷物だ。替えの宇宙服も入れておいた。依頼料も入っているからなくさないようにして、あんまり迷惑かけないようにするんだぞ」

「大丈夫よ! 私は子供じゃないわ!」


 お姉さんはそう言って、こっちに微笑んだ。いい笑顔です。


「では私はこれで……」


 そういってお姉さんが後ろを向き、去ろうという動きを見せる。

 えっ、ちょっと待ってー!

 そのオレの思いが通じたのか、彼女はピタリと止まり、こちらを向いた。


「あー、そうだ。ここへの入港記録を見たんだが、君たちと一緒に私の知り合いがいたようなんだが、彼は?」


 知り合い? カナデではないだろうし。だとするとおっちゃんのことか?


「ヴィクターさんのことですか?」


 ちなみにおっちゃんは今、自分の船の修理素材を購入しに行っている。ある程度はカナデがどうにかできるが、今回は失った部分が多すぎるらしい。ここは亜空間力場の近くにある宇宙港、高速で言うサービスエリアみたいなもんだから、安くはないが、そういう素材も売っている。

 こういうことや、マッドリーパーの調査の報酬なんかも、細かいことはみんなカナデやおっちゃんがやってくれている。ありがたいことだ。


「ああ、ヴィクターのことだ」


 お姉さんがうなずきながら答えた。

 ふーむ、おっちゃんはヴィオナムル・シップは見たことないといっていたはずだな。彼女たちの乗っていたあの船は、ティタニアという子のものなのだろうか? よくわからない。


「ヴィクターさんなら、船に必要な物資の買い付けや、その他の手続きをしてもらっていて……」


「そうか……。あー。君は彼と仕事をしていて、大丈夫なのか? その、事故とか……」


 事故? 思い当たる節がなく、よくわからない。


「特に問題ないと思いますけど」


 とりあえずオレは、そう答えた。


「そうか、よかった。もしかしたら、君には、そういう力があるのかもな……」


 彼女は安堵したような声でそう言いながら、何度かうなずいていた。

 そして、お姉さんは最後にこんなことを言ってから、本当に去っていったのだ。


「じゃあ、私はもう行くから。ヴィクターは、元気ならそれでいいんだが、もし落ち込んでいるようなら、励ましてやってくれ」


 残念ながら、あの前面がえっちなファッショナブル宇宙服も、うしろすがたは普通だった。

 そして前面に穴が開いた、出来損ないの宇宙服を着た幼女が言う。


「さあ、あんたのヴィオナムル・シップに案内しなさい!」


 これがお姉さんだったらよかったのに。




 左手に引っ張られる重みを感じながら宇宙港のロビーを歩いていく。


 耳がとがった人間や、爬虫類のような姿をした人間がいる。彼らはミュータントと呼ばれる人間たちだ。科学力で自ら遺伝子を変異させ、さまざまな環境に適応できるようになった、ご先祖が人間だった方々になる。

 この世界では、異星の知的生命体とのファーストコンタクトは、されていないとなっている。


 おっちゃんによると、ちょっと前、新しい太陽系に探査船を飛ばしたとき、ヴィオナムルの遺跡とは違う形の、人間には使いずらそうな道具ばかりがそろった、最近まで使われていたようなあとすらある人工建造物が見つかったとニュースがあったということなので、実はもう見つかっているのかもしれないが。


 さてさて。たしか、ここら辺でおっちゃんと待ち合わせをしていて、一緒に帰るはずだったんだけれど……。

 おっ、いたいた。すぐ近くのすみのベンチで小さくなってたよ。


「ヴィクターさーん!」


 オレはティタニアとつないでないほうの右手をあげ、おっちゃんに声をかけた。


 おっちゃんが、ゆらあっとした動きで、こっちを見た。

 みょうにゆったりとした動き、目が落ちくぼんでいて、いつもまっすぐだった背中も猫背になっている。

 右手を中途半端にあげたおっちゃんが、にへらあっと笑いながら、オレの呼びかけにこたえた。


「おーう……」


 しわがれた、元気のない声で。


 えっと、ちょっと前に通信したときはいつものおっちゃんだった気がしたんだけど。

 何があったの?


次回は翌日19時での投稿です。

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