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Reveal the World  作者: 色即是空
第二章
4/6

懐かしい人の体温と足音

 チャイムが何度も押されて、心拍数があがる。居留守もいつまで使えるのかわからないくらい緊迫した空気。

 比呂さんは少し考えたあとに窓を開け、そこから飛び降りた。慣れているのか着地の音は小さく、玄関にいる警察には聞こえないであろう音だった。そしてそれに続き武蔵が飛び降りる。軽く飛び降りた武蔵に続き飛び降りようとするが、二階から飛び降りるのはやはり怖い。



 躊躇っていると下から比呂さんと武蔵が手を差し出してくれた。目を瞑り、それに飛び込む。二人の腕に抱えられ、なんとか降りることができた。比呂さんは怪我をしている脇腹を少し摩ると、狭いその道を走り出した。私と武蔵も続く。


 比呂さんは走っている途中、やはり脇腹が痛いのか手で押さえるようにしていた。先ほど私が降りたときに、負担になったのかもしれない。罪悪感が募る。けれど謝れる暇もない。今は走らなければならないのだ。



 いつの間にか武蔵の後ろから違う足音が聞こえて、追われていることに気づく。これで私も武蔵も共犯になるのか。なんとなくそれでもいいと思えた。



 窓を飛び降りたあの瞬間、私は覚悟したのだから。

きっと大丈夫、だって武蔵がいる。



 この先どうなるのだろうか、と考える。考える余裕があるということはまだまだ走れるということだ。よかった。

 けれどやはり疲れというものはくるもので、私は少しずつ比呂さんに追いつけなくなってしまった。武蔵に後ろから声をかけられた気がしたけれど、なんて言っているのかわからない。思考回路がぐちゃぐちゃになって、口の中に血の味が広がる。あぁ、どうしよう。



 なにかを乞うようにのばした手。意味は無い。けれどそれを握られた。比呂さんは私の手を強く握り、そして優しく引っ張ってくれた。暖かく大きな手に引っ張られ、私はまた走り始めた。比呂さんは前にいて見えないのに、どうして私が手を伸ばしているとわかったのだろうか。背中に目でもついているのだろうか。



不思議な人だな、と思った。




「あともう少しだから」




比呂さんのはっきりとした声が耳に届く。あと少し、あとすこし。


 曲がり角を何度も曲がって、武蔵の後ろから足音が聞こえなくなってから走る速度を落とし、そして見たこともない廃工場のような場所についた。



 そこはとてもほこりっぽくて、けれど月明かりが隙間から照らしていてキラキラとほこりが輝き、神秘的だった。武蔵は壁に背中を任せ座り込み、私も膝に手をついた。比呂さんだけケロリとしている。


まだ握られている手を離す気になれなくて、気づいてない振りをする。



武蔵以外の人に触れたのは、いつ振りだろうか。




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