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…こういち。
…こういち…。
……こういち……。
僕はこういちを怒らせてしまった。言ってはいけないことを口にして、嫌われてしまった。あれ以来、話し掛けても適当な返事をされるだけだし、ぼくとの間に壁を張っているように感じる。一緒にいたらとても気まずくて、自然と距離を置くようになった。
違うんだ、こういち…。ぼくはね、もっと対等に見てほしいんだ。時々、不安になるときがある。ぼくは友達にさえ思ってくれないのかなってさ…。
友達って何だろう? これ、と定義付けるのは難しいけれど、ぼくは力の差がないことだと思う。そして何でも言い合える仲だと思う。小学生の頃によくいじめられた経験から、ぼくは自然とそういう考えを持つようになった。力の差があるということは、相手をいじめることができるワケで、実際にぼくはやられたし、それは友達とは言わない。何でも言い合える仲じゃないと、その他の場所で陰口を言ったりしていじめに繋がることもある。どちらにしても、あまり良い仲ではない。
だから、こういちとは対等にいたいんだ。こういちは愛情表現って言ってるけれど、弄られるのはあまり好きではない。もっと、同じ目線で話してみたいんだ。
だからあんなことを言ってしまっけれど……こういちが嫌いになったんじゃない、むしろ好きだから言いたいことを言ったんだ。だけど少し言い過ぎた。世の中には言っちゃいけないことと悪いことがあるものね。
謝りに行こうとしても、今は仲違いしてしまってこういちに近づきづらいので、また後でにしよう。
「……どうしたの、上の空。冬夜君、何か心配事でもあるの?」
学年トップこと、藤村真也君は、図書室の机に参考書を広げ、ぼくを心配そうに覗き込んでいた。
「…あ、ごめんなさい…」
「…大丈夫だけど……何か元気ないね。どうかしたの?」
「ううん…」
ぼくはかぶりを振って目の前の参考書に意識を戻す。何問か解いたけれど、こういちの顔が頭に浮かんで集中できない。
「……そう言えばさ、冬夜君最近あの背の高い人と一緒にいないね。どうしたの?」
「うん……ちょっとね」
「喧嘩でもしたの?」
「…そんなところ」
「ふーん……仲直りしないの? 仲、良かったでしょ?」
「そうなんだけど…」
こういちがつれない態度を取るし、向こうも今はぼくに近づきたくないみたいだから、思うように距離を縮められない。
少なくとも、中間テストが終わるまではダメだろう。
「…それより、勉強しなきゃ。こういちにバカにされないように」
ぼくは勉強に取り掛かる。時々藤村君に教えてもらったりして、少しずつ学力を上げていった。
帰りは藤村君と帰り、もうこういちとはまったくすれ違いになってしまった。その代わりにぼくは藤村君とすごく仲が良くなった。今のままでいくと、こういちと本当に仲が悪くなってしまうかもしれない。テストが終わったら、即謝りにいこう。
今日も藤村君と一緒に学校へ行く。こういちはぼくのことを無視するし、ぼくがもどかしく感じてしまったのはいつものことだが、こういちの様子がいつもより変だった。