コバエの新人研修
今日もキッチンの片隅で、ちまちまと動くコバエたち。
おや? 新しく羽化した新人隊員へ、隊長が指導をしているようだ……。
「良いか、みんな。人間にそもそも近づくと、叩き潰されるから、絶対に近づくなよ!」
「イエッサー!!!」
気合の入った返事をする新人と、そんな新人たちへ熱血指導しているコバエ隊長。
「先日は、私を指導してくださった偉大なる先輩が、人間の飲み物の中に誤って飛び込んだ結果、戦死なさった!」
「アイ・サー!!」
いや。誤って飛び込んで戦死って……。
「だから、人間に近づくなよ!!」
「アイ・サー!!!」
──その五秒後。
「隊長ォォォ!! 新人一号が人間が用意していた麦茶にダイブしましたァァァ!!」
「何だとォ!? おのれ! 人間めぇ!!」
いや。人間めって……。近づくなって言われたところに近づいたのは、新人一号でしょうよ……。
「隊長! 新人二号、緑茶に着水したようです!!」
「何!? 無事に着水出来たのか!?」
え? 緑茶?
季節的には水出しもしてるだろうけど……冷房が効いてるなら、多分普通にホットでは?
「ダメです、隊長ォ! 急須だったので、熱湯に着水して二号戦死しましたァァ!!」
「何だとォォォ!!」
……だと思った。
人間側は淡々としたもので、コバエを確認した途端、コップの麦茶を廃棄。そして急須の中にコバエが飛び込んだのを確認して、さらに緑茶も廃棄。
「あ!! 隊長! 人間が何か、スプレーのようなものを取り出しました!!」
「何だと!? 何が書いてあるか分かるか!?」
「いえ……小型のスプレーで、人間の手に完全に収まっていて、こちらからは確認できません!!」
いや、どう考えても殺虫剤だと思うんだけど……。
「隊長ォ!!! 部下たちが一斉に飛び込んでいきます!!」
「何処にだ!!」
「緑色の容器の中にですゥ!! ああ……なんだか、あそこから芳しい、いい匂いが……」
「危険だ! 行くなぁ!!!」
あらまぁ。
まずはコバエ取りの罠に、何匹か飛び込んで行っているみたいね……。
で、人間側は……?
──プシュッ。
「ああ! しまった……ぐぅ……い、息が……」
「くッ……仕方ない!! 生き残ったものだけでも、退避~!!」
「小隊長! もうすでに部隊の半数が戦死しています!!」
「撤退だ!!」
コバエ達、一斉に排水口に飛び込んでいっちゃった……。
あ、人間側にまた動きが?
「ぐッ……な、なんだ、この液体は……!! これは……」
ああ、漂白剤の原液をそのまま排水口へ。
……生き残った部隊も、ここまでみたい。
***
「もう! せっかく淹れたてのお茶だったのに、コバエのせいで捨てなきゃならんくなったじゃん。マジで夏って、どっかから湧いて出てくるの、やめて欲しいわ~」
合掌。
夜中のテンションで書き上げたギャグ。




