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タイトル未定2026/05/08 19:49
午前一時四十分。
街はまだ死んでいる。
エンジンをかけると、古いバイクが低く唸った。
その音だけが、俺がまだこの世界に存在している証明だった。
新聞販売店の蛍光灯は白く、冷たかった。
誰も未来の話なんかしない。
部数が減ったとか、また誰か辞めたとか、そんな話ばかりだ。
俺は黙って新聞を積む。
指は痛い。肩も痛い。耳鳴りもする。
だが配達だけはできる。
夜の街を走る。
信号は点滅し、コンビニの明かりだけが浮かんでいる。
ある家には新しい命が生まれ、
ある家には離婚届が届き、
ある家には訃報欄が配られる。
新聞配達という仕事は、不思議な仕事だ。
世界の全部を運んでいるのに、自分の人生だけはどこにも届かない。
配達の途中、海の見える坂でバイクを止めた。
東の空が少しだけ青い。
震災のあと、あの日もこんな色だった気がする。
会いたい人がいる。
だが、もう会えないのかもしれない。
それでも人は探してしまう。
失った未来を。
タバコに火をつけた。
春の冷たい風が煙をさらっていく。
遠くでカモメが鳴いていた。
配達に戻る。
夜明け前の街を、バイクが走る。
俺が止まれば、今日という一日が始まらない気がした。




