近くて遠い
ピンポーン。
「はーい」
らむが玄関に向かう。最近、ウーロン先輩がよく遊びに来るようになった。
「やっほー」
「ウーロン先輩、いらっしゃい」
二人が部屋に入ってきて、いつものようにお茶を飲みながら雑談を始める。
配信の話、最近あった面白いこと、次のコラボの予定。
らむぬいの体で、二人の会話を聞いている。
「そういえばさ」
らむが急に真剣な顔になった。
「実は、相談があって...」
「うん、何?」
ウーロンが真剣な表情で聞く。
「いつも応援してくれてた人が、最近来なくなっちゃって」
らむが寂しそうに言った。
「来なくなった?」
「うん。毎回配信に来てくれて、コメントもたくさんしてくれて。すごく優しい人だったんだけど...」
らむが膝の上のらむぬいを撫でる。
「ここ最近、全然見ないの。心配で...」
ドキッとする。
僕のことだ。
「どんな人だったの?」
ウーロンが優しく聞く。
「えっとね、いつも励ましてくれて。落ち込んでる時も、元気づけてくれて」
らむが目を細める。
「配信の内容も、すごく真剣に見てくれてた。感想とか、すごく丁寧に書いてくれて」
「大切なリスナーさんだったんだね」
「うん...すごく...一番応援してくれてたひとで...」
らむが少し俯く。
「何かあったのかな。体調崩したとか...それとも、私の配信がつまらなくなったとか...」
「そんなことないよ。らむちゃんの配信、いつも面白いじゃん」
「でも...」
らむが不安そうだ。
胸が痛む。
心配させてる。でも、言えない。
「お茶、淹れ直してくるね」
らむが立ち上がって、キッチンに向かった。
部屋にウーロンと僕だけになった。
静寂。
ウーロンが、ゆっくりとこちらを見た。
それから、らむぬいを手に取って、近づけてくる。
小声で――
「今の話...もしかして、君かい?」
固まる。
ウーロンの目が、真剣に僕を見つめている。
どうしよう。
嘘をつく?でも、ウーロン先輩は50音表でのやり取りを覚えている。「元リスナー」「最近から」...繋がってしまう。
ゆっくりと、頷いた。
「...やっぱり」
ウーロンが小さく息を吐いた。
「君が、らむちゃんの一番のリスナーだったんだね」
また頷く。
「憑依してから、来られなくなった」
頷く。
ウーロンが優しい目で微笑んだ。
「辛いね。らむちゃんのそばにいるのに、リスナーとしては会えない」
胸が締め付けられる。
そうだ。辛い。
らむの配信を見てる。でも、コメントできない。応援してるって、伝えられない。
「らむちゃんには言わないよ」
ウーロンが優しく言った。
「君が言いたい時まで、秘密にしておく」
ありがとう、と伝えたい。
でも、声は出ない。
ただ、頷くことしかできない。
「お待たせー」
らむが戻ってきた。新しいお茶を持って。
「ありがとう」
ウーロンがいつもの笑顔に戻る。
「ねえ、らむちゃん」
「うん?」
「その人、きっとまた来るよ。何か事情があるだけだと思う」
「...そうかな」
「うん。だって、らむちゃんの配信、すごくいいもん。絶対また来る。私の勘は当たるからね!」
ウーロンが力強く言った。
「ありがとう、ウーロン先輩」
らむが少し元気になった顔で微笑む。
ウーロンがちらっと、僕の方を見た。
優しい目だった。
君はもう、そばにいるよ、と言っているような。
温かい気持ちと、切ない気持ちが混ざる。
らむのそばにいられる。
でも、リスナーとしては会えない。
いつか、伝えられる日が来るだろうか。
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それでは、次回もよろしくお願いします。
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