はじめてのおでかけぬい
「じゃあ、行こうか」
らむが鞄を持って、玄関のドアを開けた。
てのりらむぬいの体で、鞄の中にいる。少し開いた隙間から、外が見える。
ドアの向こうは、廊下。そして階段。
らむが歩き出すと、鞄が揺れる。ゆらゆらと、リズミカルに。
階段を降りて、外に出た瞬間――
空気が変わった。
外の空気だ。
風が吹いている。車の音が聞こえる。人の話し声も。
「今日はいい天気だね」
らむが空を見上げる。鞄の隙間から、青い空が見えた。
らむが歩き出す。てのりらむぬいの体で、鞄の中から外を覗く。少しずつ、頭を出してみる。
街が見えた。
ビルが、たくさん並んでいる。高い建物ばかりだ。人も、すごくたくさん歩いている。すれ違う人、追い越していく人。みんな忙しそうだ。
こんなに人がいるんだ...
僕が元いた場所は、もっと静かだった。都会から外れた、のどかな場所。人も少なくて、車もそんなに走ってなくて。
でも、ここは違う。らむが住んでいるのは、都会なんだ。
「大丈夫?」
らむが鞄を覗き込んできた。優しい目だ。
頷く。大丈夫。びっくりしたけど、大丈夫。
むしろ、すごくワクワクしている。
「もうすぐ着くよ」
らむが歩き続ける。信号を渡って、角を曲がって。
鞄の隙間から、色んなものが見える。お店の看板、ショーウィンドウ、街路樹。全部が新鮮だ。
そして――
「着いた」
らむが立ち止まった。
目の前に、小さなカフェがある。ガラス張りの、おしゃれな雰囲気。中には木のテーブルと椅子が並んでいる。
らむがドアを開けて、中に入った。
コーヒーのいい匂いがする。音楽が静かに流れている。
「いらっしゃいませ」
店員さんの声。
らむが窓際の席に座って、メニューを見る。
「カフェラテください」
注文を済ませて、らむが鞄を開けた。
そっと、てのりらむぬいを取り出す。
「さて...」
らむがスマホを取り出して、てのりらむぬいをテーブルに置いた。
それから、カメラを向ける。
「はい、チーズ」
パシャリ。
写真を撮られた。てのりらむぬいと、窓の外の景色が写っているんだろう。
らむがスマホを操作し始める。文字を打っている。
「てのりらむぬい作った!今日は一緒にカフェなう♪」
らむがつぶやきながら、投稿ボタンを押した。
それから、スマホを置いて、運ばれてきたカフェラテを一口飲む。
「ふー、美味しい」
満足そうな顔だ。
らむがまたスマホを見る。
「あ、もうコメント来てる」
らむの目が輝いた。
「可愛い!」
「てのりサイズいいね!」
「欲しい!」
「カフェどこ?」
次々とコメントが流れてくる。らむが嬉しそうに、一つ一つ読んでいる。
「みんな喜んでくれてる...」
らむが笑顔になる。
それから、てのりらむぬいを手に取って、優しく撫でた。
「一緒に来てよかったね」
うん。本当に。
外の世界を見られた。らむと一緒に、カフェに来られた。
人がたくさんいて、びっくりしたけど。ビルが高くて、車が多くて。でも、全部が新しくて、楽しかった。
らむがカフェラテを飲みながら、窓の外を眺めている。
僕も、同じ景色を見ている。てのりらむぬいの目から。
街を歩く人たち。
走る車。
青い空。
全部が、キラキラして見える。
「また来ようね」
らむが優しく言った。
うん。また来たい。
次はどこに行こうか。楽しみだ。
満足感で、胸がいっぱいになる。
初めてのお出かけ。成功だ。
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ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
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そして、「らむぬいにこんな風に動いてほしい」「こんなシーンが見たい」といったリクエストも大歓迎です。ぬいぐるみができる範囲で、皆さんのアイデアを物語に取り入れていきたいと思っています。気軽にコメント欄でお聞かせください。
それでは、次回もよろしくお願いします。
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