3つの視点ぬい
「じゃあ、今日も配信始めるよー」
らむが配信ソフトを立ち上げた。
いつもの時間、いつもの配信。
らむは椅子に座り、らむぬいを膝の上に乗せた。
いつもの定位置だ。
画面にらむのアバターが映り、マイクテストをしている。
膝の上から、モニターを見上げる。
いつもならこの位置から、ずっと配信を見ている。
らむの声を聞きながら、画面を眺める。
でも――
「そういえば...」
昨日わかったことを思い出す。
3体の間を、意識を移動できる。
ということは。
集中する。
意識を、棚の上のクマへ――
視界が切り替わった。
高い。
棚の上から、部屋全体を見下ろしている。
らむが椅子に座って、配信を始めたところだ。
膝の上には、らむぬいの体が乗っている。
モニターの光がらむの顔を照らしている。
「今日はね、新しいゲームやってみようと思って...」
らむの声が聞こえる。
この角度からだと、らむの全体が見える。
配信画面も、らむの表情も、手元の動きも。
いつもは見上げる角度でしか見られなかったらむを、こんな風に見られるなんて。
しばらく見ていると、らむが笑った。
リスナーのコメントに反応している。
「え、そんなこと言う?ひどいー」
楽しそうだ。
こうして見ると、らむがどれだけ配信を楽しんでいるかがよくわかる。
次は――
意識を、机の上のVtuberぬいへ移す。
今度は、らむのすぐ横だ。
キーボードを叩く音が近い。
マウスをクリックする音も。
横顔が見える。
モニターを見つめる目、少し開いた口、時々笑う表情。
「あ、これ難しい...!」
らむがゲームに集中している。
配信画面も、すぐ近くで見える。
らむと同じ画面を、同じ角度から。
まるで隣で一緒にゲームをしているみたいだ。
手元の動きもよく見える。
マウスを動かす手、キーボードを叩く指。
「やった、クリアー!」
らむがガッツポーズをした。
すぐ目の前で。
僕も嬉しくなる。
そして、最後に――
元の体、らむぬいへ。
視界が戻った。
らむの膝の上。
少し温かい。
見上げる角度のらむ。
モニターに向かっている横顔。
この角度が、一番見慣れた景色だ。
でも、さっき見た他の角度も、全部らむだ。
高い位置から見下ろすらむ。
横で一緒に画面を見るらむ。
そして、見上げる角度のらむ。
同じらむなのに、全部違って見える。
「ふふ、今日も楽しかったー。また明日ね!」
配信が終わった。
らむが椅子から立ち上がって、伸びをする。
「あー、疲れた」
満足そうな顔だ。
3つの視点でらむを見られる。
3つの角度から、配信を楽しめる。
これって、すごく贅沢なことかもしれない。
僕だけの、特別な見方。
らむが部屋の電気を消して、ベッドに向かう。
「おやすみ」
らむぬいの頭を撫でてから、らむは布団に入った。
暗闇の中、らむの寝息が聞こえる。
明日の配信も、また違う視点から見てみよう。
そう思いながら、目を閉じた。
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ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
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それでは、次回もよろしくお願いします。
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