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手作りだけぬい

「ただいまー」


玄関のドアが開く音と共に、らむの声が聞こえた。


買い物袋を持って部屋に入ってきたらむは、いつも通りの笑顔だった。

でも、今日は違う。伝えたいことがある。


「あ、おかえり...って、ん?」


らむが僕を見て、首を傾げた。

いつもと様子が違うのが伝わったらしい。


そうだ、今だ。


必死に手を振って、らむの注意を引く。


「どうしたの?なんか変だよ?」


らむが近づいてくる。

よし、見せるしかない。

集中する。

あの感覚を思い出す。意識が浮くような――


「...!」


視界が切り替わった。


棚の上から、部屋を見下ろしている。

クマの体だ。


らむの目が大きく見開かれた。


「え...?」


さっきまで動いていたらむぬいが、床でぴたりと止まっている。

代わりに、棚の上のクマのぬいぐるみが手を振っている。

もう一度。

集中する。意識を次の体へ――


「...っ!」


今度は机の上。

Vtuberの姿を模したぬいぐるみの体。

らむが僕――いや、このぬいを見ている。

さっきまで動いていたクマが、止まっている。


「順番に...動いてる...?」


らむの声に戸惑いが混じる。

もう一度、元の体に戻る。

視界が床の高さに戻った。

らむぬいの体だ。手足を動かす。


「あ...戻った」


らむがしゃがみ込んで、僕の目線に合わせる。

どうやって説明すればいい?

話せない。声が出ない。


でも、伝えなきゃ。


まず、3体のぬいぐるみを順番に指差す。

クマ、Vtuberぬい、そして自分。


それから、自分の頭を指差して、移動するようなジェスチャー。

クマを指して、頭を指して、Vtuberぬいを指して、頭を指して――


次に、部屋の隅にある市販のウサギのぬいぐるみを指差す。

それから、自分を指して、大きく首を横に振り、腕をクロスさせる。


移れない。


また3体を指差して、頷く。

この3体だけ。


「もしかして...」


らむがじっと3体を見つめる。


「意識が...移動してるの?」


そう!

必死に頷く。

らむが驚いたように目を見開いて、それからゆっくりと3体を見比べた。


クマのぬいぐるみ。

Vtuberの姿を模したぬいぐるみ。

そして、らむぬい。


「この3体...」


らむが何かに気づいたように、それぞれのぬいぐるみを手に取った。


「全部...私が手作りしたぬいだ」


クマを見つめて、少し懐かしそうに微笑む。


「これは、初めて作った練習作。縫い目がガタガタで、綿の詰め方も下手で...でも、初めて完成させたぬいぐるみだった」


次にVtuberぬいを見る。


「これは、自分の姿を再現しようと思って作ったやつ。髪の色とか、服のデザインとか、すごく頑張ったんだよね」


そして最後に、僕――らむぬいを優しく抱き上げた。


「そしてこれは、マスコットとして作った子。一番気に入ってる」


らむの目が少し潤んでいた。


「私が作ったぬいだけ...特別なんだね」


嬉しそうに、そして少し誇らしげに微笑むらむ。

手作りだから。

らむの手で作られたから。

だからこの3体にだけ、意識を移動できる。


「すごいね...不思議だけど、なんだか嬉しいな」


らむが僕の頭を優しく撫でた。

温かい手だ。

この手で、らむぬいたちは作られたんだ。

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ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


もし楽しんでいただけましたら、評価やブックマークをしていただけると大変励みになります。また、感想やコメントもお待ちしています。あなたの推し活の記憶と重なる瞬間があったなら、ぜひ教えてください。


そして、「らむぬいにこんな風に動いてほしい」「こんなシーンが見たい」といったリクエストも大歓迎です。ぬいぐるみができる範囲で、皆さんのアイデアを物語に取り入れていきたいと思っています。気軽にコメント欄でお聞かせください。


それでは、次回もよろしくお願いします。

ほぼ毎日22:10更新中!

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