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第58話 おっさん、全員リンクする?


「まるで、どこぞの魔王の様な発言じゃ無いですかタリシア様。俺はこれでも一応、女神の使徒で魔王討伐の命を受けてるんですがね?」


 ワシと一緒になれば王都を掌握できるとか、完全にラスボスの様なセリフを吐くタリシアに冗談でしょと問うてみるのだが……


「ふん、ワシは冗談とハルクの頭はゆった事が無いでの。まあワシがこの国を征服しようなどとは言わんがの、おぬしと組んで王都に巣食う魑魅魍魎共を一掃するのも、一興じゃろうて」


(この人、絶対楽しんでるだろ……)


 悪びれもせず、むしろ楽しそうに目を細めるタリシアに、俺は内心でため息をつく。この人のスケールに付き合っていたら、魔王討伐どころの話ではなくなりそうだ。


「その壮大な計画は、俺たちが今回の任務をやり遂げてから考えても遅くはないでしょう。タリシア様、話を戻しますが、スキルリンクには『譲渡』という制約があることが分かりました。今回の任務に向けて、この力をどう活用すべきでしょうか?」


 リーダーであるフレアが、冷静に話を軌道修正する。そうだ、今は浮かれている場合じゃない。俺たちはまず、目の前のクエストをクリアして、実力を示さなければならないのだ。


「そうじゃの。潜入調査で派手な戦闘はご法度じゃ。じゃが、万が一ということもある。全員がリンクだけは済ませておき、スキルは任務の直前に、状況に応じて譲渡するのが良かろう」


 タリシアは司令官の顔に戻り、的確な指示を出す。彼女の言う通りだ。今はまず、全員をスキルリンカーとして登録することが先決だろう。


「分かりました。では、続けてフレア、瑠奈、鬼灯、頼めるか?」


「ああ、任せろ」


「ウチもお願いするわ」


「うむ」


 俺たちはキャトリーヌの時と同じ手順で、残る3人とも次々にスキルリンクの儀式を執り行おうと、モスキートスティックR5をフレアに手渡すと例の青いウインドウが現れ、エラー音と共にメッセージが表示される。


『このデバイスは個体名『キャトリーヌ』に使用者が固定されています。登録者以外の使用はできません』


 ウインドウを覗き込みメッセージを確認した俺は脱力する。


「なあヨシダ、アタシがこれを持った瞬間に何か音が聞こえて、青いのが出てきたが、今度はなんだ?」


 突然起こったさっきとは違う反応に、体をビクリと震わせたフレアが俺に聞いてくる。


「……如何やらこのアイテムはキャトリーヌ専用になったみたいで、登録者以外は使用出来ないそうだ」


 拍子抜けにも程がある、気合を入れた仲間達も俺の言葉に脱力するしか無かった。そりゃそうだ、早々簡単に強力なスキルがホイホイ譲渡できる訳も無く。


「「「……それは無いんじゃない?」」」


 覚悟を決めて、気合いと共に挑んだ矢先に、やっぱムリ、と言われて出てきた文句も綺麗にハモる。


「いや俺も仕様を分かってなかったが、まさかリンクデバイスが登録者と一対一だとは思わなかったから、ゴメンまたデバイスを入手してからな」


 人生でもそうはない決断と覚悟を、見るも無惨に打ち砕いてオチを付けた一連の出来事に、俺は皆んなに平謝りで謝る。


「ま、ヨシダはんらしいっちゃ、らしいかな」


「だな、なんとも閉まらないと言うか」


「うむ、だが私達の覚悟は変わらない、その時が来るまで待とう」


「ふふん、これでにゃーが一歩リードしたにゃ、にゃーの大活躍を見せつけてやるにゃ」


「「「「「ハハハハ」」」」」

 

 ま、オチもついたと言う事で、早速今回のクエストに向けてキャトリーヌのスキルの選定と練習を、そう思い訓練場に向かおうとする俺達にタリシアが待ったをかける。


「ちょーと待てい、リンク出来んものはしょうがない、じゃがスキルの訓練は後回しじゃ、それより先にクエストの概要を説明する、それから訓練は着替えてからじゃからの」


 タリシアがそう言った後に指を鳴らすと、執務室の扉が開き、あのエマ教官が何枚かの羊皮紙を手に、静かに入室してきた。


「今回の夜会、表向きは新作演劇の披露となっておるが、その裏でご禁制品の商談が行われると言う情報を得ておる、おぬしらはその商談を探り情報の入手が主な役目じゃ」


 先ずは夜会の表と裏の目的から説明から始めるタリシア。そこで一旦言葉を切ると俺たちを見回し、続きを話す。


「おぬしらが今回潜入するに当たって協力を取り付けた人物は『アレスタ伯爵家のお嬢様』じゃ、おぬしらの役目は、ヨシダは彼女のエスコート役、残りの者は二人の護衛と、商談の調査を行ってもらう」


 続けて協力者の紹介と、俺達の役割分担を説明する。


 「概要はこんなもんかの、詳細は……エマ、最後の仕上げを頼む」


「承知いたしました」


 エマ教官は無表情のまま、俺たちに一礼すると、完璧な所作で夜会での最終的な注意事項、男爵邸の見取り図、そして緊急時の脱出経路などを簡潔に、しかし的確に説明していく。その内容は、まるで前世で見たスパイ映画そのものだった。


「説明は以上です。皆様、ご武運を」


 エマ教官はそう言うと、再び深く一礼し、音もなく退室していった。


「さて、任務の説明は以上じゃ。何か質問が有れば受け付けるがの」


 そう言って腕組みをするタリシア、たわわなメロンがムニュリと押し上げられて今にもこぼれ落ちそうだ。


「あの、ご禁制の品とは具体的にどの様なものか聞いても宜しいでしょうか」


 そう、遠慮気味に手を挙げてフレアが質問する。


「おお、そうじゃったな、急遽おぬしらにクエストを振ったもんで、上手く共有されとらなんだか、ご禁制の品とはな……」


「「「「「ご禁制の品とは……ゴクリッ」」」」」


 突然シリアスな表情のタリシアに、皆が生唾を飲み込む。

 なんか聞いちゃいけないものの様な気がするが、それでは任務に支障をきたす。嫌な予感はするが時すでに遅しだ。


「それは……ドラゴンの素材じゃ」


 また……ドラゴンか。だがその素材と有ればそう問題では無いのでは無いか? 何故それらがご禁制の品となるのか……


「あ、あの……ドラゴンの素材がご禁制の品とは、如何言った理由からでありましょか?」


 若干トラウマに顔を引き攣らせつつ、それでもリーダーとしてフレアが質問する。


「それもこれも15年前の竜災の夜のせいじゃよ」


 また、あの夜の出来事と繋がるのか……やはりと言うか、なんと言うか。


「あの夜の出来事で、王命でドラゴンに手を出すことを基本的に禁止し、その素材の取引にも王国のお墨付きが必要となった。触らぬ神に祟りなし、と言うことじゃろ」


 なるほど、馬鹿な冒険者への牽制と、王国が市場を押さえて取引を抑制すると言うことか。そうする事で市場は有って無い様なもの、自由な取引は出来ずその取引さえ管理下に置くと言う事か。


 うん? ちょっと待てよ、じゃあの時の酒は……


「なあ、じゃ俺がフレア達と初めて会った時の、竜ころし、あれも竜の血が入って無かったか? ダメなんじゃ無いのか」


 ふとした疑問が口をついて出たが、こともなげにタリシアが答える。


「じゃから言うておろう、取り引きは禁止(・・・・・・・)じゃと」


 成程、王命以前から所持してる分にはお目溢しが有るが、売買は駄目なのね。まあ、誰が何を持ってるかまでは分からんか。


「それにしても、あの夜の出来事は王が法を定める程の事だったのですか?」


「そうじゃ、ドラゴンの⸻言葉通り逆鱗に触れたのじゃ、しかも王都でも随一の実力派の冒険者パーティ、あの『鉄塊のハルク』が率いる『鉄塊の旅団アイアンマスブリゲイド』が見るも無惨な状態で逃げる様に帰還したのじゃ」


 そこまで言った彼女は伏し目がちに続ける。


「あれは災害じゃ、人の力では如何にもならんよ……」


 今までの彼女からは想像出来ない、弱音とも取れる発言を、俺達は無言で聞くことしか出来なかった……


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