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第53話 おっさん、新スキル覚醒?

「たわけ! 何がゆっくり休もうじゃ、とっとと衣装を身につけて馴染ませるんじゃ、着替えたらマナー特訓の最終試験、明日は最終的なブリーフィング、明後日の依頼当日は午後から協力者の貴族のご令嬢との顔合わせと、休んどる暇など無いと思え」


「イエス! マム!」


 やっと一息つけるかと思った束の間、タリシアに一喝されると全員すかさず起立して最敬礼する。


 という訳で女性陣は更衣室へ移動後、出来立てのドレスを纏って戻ってくる。


「おおー、傾国の美女が四人も現れたぜ、いやもう何処ぞのお姫様と言っても通りそうだな」


 眼福、眼福、四人とも素が良かっただけに、ドレスアップでその破壊力はフルパワーアップ状態のSTGスキルさえ凌駕するぜ。


「ヨシダよ、興奮するのは良いが汚すなよ、白衣の貴公子が涎滲みを付けてましたとか、ご令嬢の沽券に関わるからの。素っ首叩き落とされても文句は言えんぞ?」


 うそーん、涎滲みで打首とか死んでも死にきれん、と言うか一回死んでる。


「またヨシダは興奮してるのか? 相変わらずだな」


「そうにゃ、でもヨシダッち結構かっこいいにゃ」


「うむ、まるで白衣に着られた王子様だな」


 おい、それ褒めてないからな。


「せやな、中々カッコええなぁ……って、なんやねん、その腰にぶら下げとるもんは。あれ程TPO弁えて、エマ教官が言うてたやろ」


 瑠奈が目ざとく腰にぶら下げていた、モスキートスティックR5を見つけて指摘する。


「いや〜、丸腰だと落ち着かなくて。アレだよ根付け?的な物だよ」


「へぇー、根付けとかよう知っとるな、ウチの国でもって、そんなデカい根付けがあるかー」


 おお、華麗なノリ突っ込み出た。流石関西人?


「やっぱり駄目?」


「駄目に決まってるだろ、それともエマ教官に聞いてみるか?」


 ……地獄は嫌だ、地獄怖い。


「わ、分かった、でもコレ如何しよう、送喚の仕方がわからん」


 ショップで買って召喚したは良いが、出っ放しで引っ込めることが出来なかったのだ。


「分かったにゃー、にゃーのポーチに入れといてやるにゃ」


 何が分かったか、全然分からんが、にゃーのお言葉に甘えて収納してもらうことにして、モスキートスティックR5を手渡す。


「じゃあ、頼んだぞ」


 そう言いながらキャトリーヌに手渡すが、受け取った後の様子がなんだかおかしい。


「……なんか出てきたにゃ」


「へ? なんかって、なにが何処に出てきたんだ」


 要領を得ないキャトリーヌの言葉に、全員の頭上に?マークが浮かぶ。


「なんか青い板が浮いてるにゃ。そこになんか書いてあるにゃ」


 俺はまさかと、そう思いキャトリーヌの肩口から覗き込む。そこに有ったのは……


「マジかよ、スッテータスぅ! オ〜〜ペェン! されてるじゃんかよ」


 オイオイなんでステータス・ウインドウがキャトリーヌに見えてる? いや、それ以前にステータス・オープンのコールすらして無いのに何故開いてる。


「おい、キャトリーヌ何をした?」


「うん? にゃーは何もして無いのにゃ、ヨシダっちからこれを受け取っただけにゃ」


 PCのトラブルで何もしてないは、何かしてるのフラグだが、これはやはりコイツがトリガーか? (ジョイスティックだけに)


「なあ、何か書いてあると言ってたが、なんて書いて有るんだ」


 シンプルとは言え結構なボリュームのあるドレス姿だ、ましてや汚したら打首獄門の刑に処されるとあっては、気安く近づけない。書いてある内容をキャトリーヌに問うのだが。


「分からんにゃ」


 彼女の名誉のために言っておくが、にゃーも字は読めるし書ける。その彼女に読めないと言うことはまさか……


「ちょっと悪いが、見させてもらうぞ」


 そう言うとキャトリーヌの前に頭を捩じ込む。しかしてそこに書かれていたのは……俺のステータスウインドウと同じく日本語が表示されていた。


「なになに、『リンクデバイスの新しい所有者が、確認されました。スキルリンカーとして登録しますか?』だって」


 キャトリーヌの目の前に浮かぶ青い板は、STGスキルのステータスウインドウと同じ様な物で、スキルリンカーなる機能への登録を促すメッセージと『OK』『Cancel』のボタンが並んでいる。


「リンクデバイス? 待てよ……たしかRACS召喚のヘルプに『コレを持つものは、STGスキルが使える』と有ったが、もしかしてコレを持てば"俺以外の者(・・・・・)でも"STGスキルを使える、だったのかよ……あの説明で解るかボケー、はあはあはあ」


 全くあの女神様の良い所はボイスだけかよ。ステータスウインドウ見たら花丸がご褒美だと思うだろ。

 本当にもう、タキシード着てるのも忘れて全力全開で突っ込んでしまったわ、何処も汚して無いだろな。


「いや、それどころじゃ無いだろ、ちょっとキャトリーヌそれを貸してくれ」


「分かったにゃ、はい」


 キャトリーヌからモスキートスティックR5を受け取ると、彼女に尋ねる。


「青い板は如何なった?」


「うん? 消えたにゃ」


「もう一回持ってみて、はい」


「あ、青いの出たにゃ」


 うん、間違い無いな。コイツがトリガーだった訳か。

 それにしても、マニュアルの不親切さまで昭和レトロだったとは、今時ソシャゲでやってみろ3ヶ月でサ終だぞ。


 散々文句は言ったが、このご褒美が有れば俺のスキルを仲間達にリンク出来る。俺の考えが当たりなら、その事実は計り知れない恩恵が有る。

 そして俺の頭にはもう一つの可能性が浮かんだ。日本語表記ということは……


「瑠奈ちょっとこれ持ってみてくれないか?」


 そう言いながらキャトリーヌから受け取ったモスキートスティックR5を瑠奈に渡す。


「ウチ? ええけどなんでやの?」


「まあまあ、これを持ってキャトリーヌと同じ青い板が出てくれば、俺のスキルを貸すことができるかもしれないんだ」


 そう言うか早いか、俺の手から超音速でひったくり、握りしめる瑠奈。


「お、青いの出たで」


 ここまでは想定内だ、ここからが本番。


「その青い板の文字が読めるか?」


 俺と同じ黒髪黒目の和風美少女、しかも極東の島国出身、偶然か? 設定的には繋がってても不思議はないが……


「せやなぁ、"リンクデバイスの新しい所有者が、確認されました。スキルリンカーとして登録しますか"」


 おお! マジかー?


「て、ヨシダはんが言うてたけど、ウチにはサッパリ読めへんわ」


 上げてから落とすんかーい! やっぱり関西人か?


 結構瑠奈の故郷、八紡ノ国(ヤツムギノクニ)は日本とよく似た国であるが、言語体系などは全く違う、偶然にしては似すぎていたと言う結果に終わり、俺の目論見⸻瑠奈の故郷と日本の間の明確な関係性は分からなかった。


 まあ、異世界と地球の関係性は傍に置いといて、このスキルリンカーは、仲間がSTGスキルを使えるかも知れないと言う、途轍もないサプライズである。


 女神様の言っていたご褒美がこの事ならば、グッジョブ!大賞受賞もあり得る仕事っぷりだ。


「で、おぬしらはさっきから何を騒いでおる、マナー講習の卒業試験はこれからじゃぞ」


 おっと、リンクデバイスの覚醒で発覚したスキルリンカーと言う新スキルにテンション上がってたが、それは無理からぬ事、今発覚した事実をタリシアに話す。


「はあ? 呆れたのう。あれだけの能力を他人に譲渡出来る可能性があるじゃと? インチキでは無いか」


 いや、チートスキルなんだからインチキなんですけど、まあ、普通に呆れるはな。


「で、誰にリンクするのじゃ? なんならワシとリンクするかの、ダーリンよ」


 そう言いながらタリシアはウインクまで飛ばして来る、それを見たパーティメンバー全員からの視線が一斉に突き刺さる。前世で40歳(ゆうしゅうな)童貞(まほうつかい)だった俺にリンクするとかしないとか言われても……した事ねーよ!


 それはさて置き真面目な話、スキルのリンクが幾つできるのか、どのスキルでも可能なのかはまだ未知数だ。

 あのマニュアルの調子だと、リンクデバイスに登録してスキルリンカーにして初めて分かる展開かな? チュートリアル用意しとけ女神様。


「その事なんだが、スキルリンカーの詳細は不明で、やってみないと分からない。アクティブスキルかパッシブスキルか、はたまたその両方か登録してみないと分からない状態だ」


 俺がそう告げると、タリシアは「ふむ」と顎に手を当てて思案顔になる。パーティメンバーからの嫉妬の視線は、タリシアがからかうのをやめたことで、ようやく俺の背中から剥がれていった。


「成程のう、これだけの大事ではしかないかの。おぬしらも試さねば始まらんのも道理。じゃがのう」


 そこで言葉を切ったタリシア⸻彼女は真剣な、指揮官の顔つきに戻り、俺達に言い放つ。


「マナー講習の卒業試験を忘れたとは言わせんぞ。そのような重大な検証は、試験が終わってからじっくりやれい。そもそもエマをこれ以上待たせたら、お主ら全員、明日までみっちりしごかれることになるからの」


 その言葉に、俺たちは「ハッ」と我に返った。そうだ、ドレスに着替えたのも、タキシードを纏ったのも、全てはこの後のマナー講習の最終試験のためだった。スキルリンカーという途轍もない発見に、すっかり頭から抜け落ちていた。


「……地獄は嫌だ、地獄怖い」


「せやな、エマ教官の“お説教”は魂削られるわ」


「うむ……思い出しただけで足が震える」


 俺と瑠奈、そして他のメンバーも青い顔で頷き合う。タリシアの言う通り、エマ教官の機嫌を損ねるのは、魔王に喧嘩を売るより無謀な行為だった。


「分かったか。では、さっさとホールへ移動するぞ! 一分の遅れが命取りと思え!」


 タリシアの号令一下、俺たちはスキルリンカーへの期待と、エマ教官への恐怖を胸に、マナー講習の待つホールへと足を速めるのだった。


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