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第41話 おっさん、良い湯だな

「くあ〜〜〜、生き返る〜〜〜〜」


 現在俺はカジノホテルの最上階、超スイートルームの、超豪華で、プールと勘違いする程のデカさの風呂を、ボッチで堪能している。


「ホント、生き返るぜ、だって美少女4人が入った後の残り湯だぜ? 死んでても生き返って寿命まで伸びるわ、いや〜極楽極楽」


 この風呂の残り湯を聖水だ、って言って売ったらトーマスさん超えんじゃね? とかバカなこと考えながら、のんびりとこの世界に来て初めての、まともな風呂を堪能する。


 存分に豪華な風呂を堪能した後は、いつものジャージに着替えて落ち着いた俺は、リビングルームへと戻った。

 

 そこでは、俺以外のメンバーはそれぞれの部屋でバスローブから備え付けのルームウェアに着替えて寛いでいる。

 シルクの様な照りの有る、高級な部屋着を纏う美少女が4人、改めてリビングの豪華なソファの座り心地などを試していた。


「あ、ヨシダ。お前、その格好……ルームウェアが有っただろ?」


 俺の姿を認めたフレアが、呆れたようにジト目を向けてくる。


「なんや、最高のスイートルームに来てまで、その格好かいな。TPOちゅうもんを知らんのか、この朴念仁」


「にゃはは、ヨシダはブレないにゃー。そこが良いところにゃ」


「……落ち着く」


 瑠奈には罵られ、キャトリーヌには面白がられ、鬼灯からは謎の共感を得る。相変わらずの反応だが、このやり取りが心地良い。


「うるせーな、リラックスする時はジャージが一番なんだよ。それはさて置き、お前ら腹減ってないか?約束通り、今日は最高の宴と行こうぜ!」


 俺がそう宣言すると、さっきまで俺の格好を貶していたフレア達4人の目が、肉食獣の如くギラリと輝いた。現金なやつらめ。


 腹ペコの野獣の為に、備え付けの魔導通信機を使い、ルームサービスを頼むことにした。メニュー表を開くと、そこには目を疑うような料理名と値段が並んでいる。


「『ミノタウルスの霜降りサーロインステーキ』金貨5枚……だと?」


「『シーサーペントのカルパッチョ』金貨10枚……」


「『聖樹の若葉サラダ』時価……値段が書いてないにゃ!?」


 全員でメニュー表に釘付けになり、ゴクリと喉を鳴らす。カジノで得た金貨が63枚。数品頼んだだけで一気に吹き飛んでしまう。俺が覚悟を決めて注文しようとした、その時だった。


「ん? なんやこれ……ヨシダ、この隅っこに書いてある文字、見てみぃ」


 瑠奈が指さしたのは、メニュー表のフッター部分に金文字で書かれた一文だった。


「なになに……『ジャックポットルーム・ダイヤのお客様へ。当ホテルからの祝福として、滞在中のルームサービスは全てコンプリメンタリーとさせていただきます』……インクリメント……?」


「うむ、それは『無料』と言う意味だ!」


 意外に博識な鬼灯の言葉に、皆の視線が集中する。そして、その言葉の意味が脳に到達した瞬間。


「「「「ぜ、ぜんぶタダぁぁぁーーーーっ!?」」」」


 リビングに、俺たちの絶叫が響き渡った。マジか!マジでか!これが最高級スイートの力か!


「ヒャッハー! おい店員! いや、スタッフさん! このミノタウルスとシーサーペントと、この値段のないサラダと、なんかすごいオードブル的なのも、全部持ってこい!あと酒も一番高いやつを樽で持ってこーい!」


 俺は魔導通信機に向かって、ヤケクソ気味に叫んでいた。もはや遠慮などしている場合では無い!


 しばらくして、複数のスタッフがワゴンを押してやってきた。テーブルに所狭しと並べられていく料理は、どれも信じられないくらいいい匂いをさせている。分厚いステーキに、新鮮な魚介、見たこともない輝く果実。俺たちはみたび感嘆の声を上げた。


「それじゃあ、俺たちの勝利と、この太っ腹なホテルに! 乾杯!」


「「「「乾杯!」」」」


 ジョッキを派手に打ち鳴らし、大宴会が始まった。

 ミノタウルスの霜降り肉は、噛むほどに旨味の肉汁が溢れ出し、それでいて驚くほど柔らかい。皆、言葉も忘れて料理に夢中になった。


「はー……美味かった。しかし、マジで危なかったよな。あのディーラーは一体何者なんだ?」


 腹も膨れ、少し落ち着いたところで俺が切り出す。さっきまでの陽気な雰囲気が少しだけ引き締まった。


「せやな。ウチらがただの冒険者やないこと、完全に気づいとった。それに、あの誘い方……ただの遊び人やない。裏の顔があるはずや」


「にゃーの調査網にも引っかからないにゃ。あのカジノでも、かなり上の人間じゃないかにゃ?」


 瑠奈とキャトリーヌが真剣な顔で分析する。


「まあ、何にせよ、俺たち『余燼の光の騎士団』もSランクになって、注目度も上がってるってことだ。これからは、もっと慎重に行動しないとな」


「ちぇっ、面倒くせーな。ま、変な虫がヨシダに寄り付くのは、アタシが許さないけどな!」


 フレアがぶっきらぼうに言うが、その言葉が少し嬉しい。

 そんな風に夜が更けていく。情報戦、謎のディーラー、Sランクとしての自覚。考えるべきことは多いが、今はただ、この仲間たちとの勝利の余韻に浸っていたかった。


 宴も終わり、俺達はそれぞれ自室へと戻ると、旅の疲れと極上の寝具のお陰か、すぐに意識を手放し深い眠りへと落ちる……


………………


…………


……




「ドオォォォォォオオン!」



 皆が寝静まった頃、突如としてホテル全体を揺るがす様な炸裂音が轟く。折角の夢見心地を叩き起こされ、辺りを見回す。


「何事だ?」


 俺は自室から飛び出して、音のした方のベランダへと走る。騒ぎで起き出した皆んなと眼下を覗くと、火の手が上がり街壁の一部が破壊され、そこから羽の生えたモンスターの様なものが見える。


「なん……だ、アレ? 見た事も無い奴らだ……」


 歴戦の戦士のフレアをして、知ら無いと言う奇妙な怪物達。ここからでは遠くて良く見え無いが、石の様な質感の生き物が羽を羽ばたかせ、街壁を飛び越えてくる。


「……ガーゴイル」


「なんやの、ヨシダはんはアレを知っとるんかいな?」


 俺の呟きを拾った瑠奈が俺に問いかける。


「あ、ああ、多分前世の書物で見た奴だ、建物などの魔除けの意味がある彫刻で、モンスターを形どったものが多いらしい」


「魔除け、魔物の間違いでは無いのか?」


「そうにゃ、街を攻撃してるにゃ、大変にゃ!」


「ああ、アタシ達余燼の光の騎士団エンバーライト・オーダーのSランク初戦闘だ! 気合い入れて行くよ」


「せや、折角の豪華なスイートルームでの一夜を台無しにしてくれたんや、ただではおかんで」


「にゃーも、やったるにゃ」


「うむ、全力で迎え打つ」


 皆んな、豪華なスイートルームの一夜をぶち壊されて、怒り心頭に発している。俺も気分良く寝てたのを叩き起こされたんだ、この落とし前はつけさせてもらうぜ。


「それじゃあ皆んな、3分で準備して此処に集合だ。集まり次第、あいつらを叩きに行くよ!」


「「「「おおー!」」」」


 フレアの号令に答え、各自自室に戻り準備を済ませ、リビングに集合する。


「皆んな揃ったね?」


 フレアの問いに4人が頷く。


余燼の光の騎士団エンバーライト・オーダー、出撃!」


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