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第40話 エンバーライトオーダー、お風呂での戦闘

 ゆうに50畳は有ると思われる広さの部屋の真ん中で、突如繰り広げられる死闘。


「「「「「じゃーんーけーんー、ぽん!」」」」」


 部屋割りは俺の提案でじゃんけん勝負を行う事に。勝負は勝ち抜けたものから好きな部屋を選べる。

 何つーか案の定、言い出しっぺの俺が貧乏くじを引く。

 そうだよ、俺が最負けで出入り口から一番遠い部屋、当然リビングルームからも一番遠い部屋だ。

 まあ、アレだレディファーストだと自分に言い聞かせながら、自分の部屋に数少ない荷物を置きに行く。


「デケェー!」


 ドアを開けた皆も異口同音に感嘆の声を上げている。部屋に入るとまず目に付くのが、キングサイズのW?ベッドだ。このでかさは、ギルマスや鬼灯ですら余裕で収まる巨大サイズだ。

 俺など5-6人は眠れるほどのデカさだ。しかも!天蓋付きと来たもんだ。もう、気分はお貴族様だ。


 更に目を引くのが家具や調度品だ。こっちも触るのが怖くなるほど豪華絢爛で、ビビった俺は荷物をソファに置いて、旅装束からいつものジャージスーツに変身する。



 その頃、ダイヤの部屋、バスルームでは⸻


 荷解きを終え、着替えを済ませた女性メンバー4人は、リビングを挟んで個室とは反対側の奥にあるバスルームの扉を開け、歓喜の声を上げていた。


「うっわ、マジかよ……此処、ホントに部屋の中なのか!?」


 フレアが素っ頓狂な声を上げるのも無理はない。そこは、白を基調とした浴室に、赤い大理石で部屋のモチーフで有るダイヤの意匠を凝らした、とても贅沢で広大な空間だった。


 ちょっとしたプールほどの大きさがある湯船には、薔薇の花びらが無数に浮かべられ、壁一面の巨大な窓ガラスを覗けば、眼下にはカジノシティの宝石のような夜景が広がっている。天井もガラス張りで、満天の星々まで見渡せた。


「なんやこれ……王族のお風呂でも、ここまで豪華やないんちゃう?」


「にゃははー! 最高にゃ! みてみて鬼灯、にゃーのネコかきどうにゃ?」


「うむ、いい湯だ」


 湯船で泳ぐキャトリーヌと、大きな湯船に満足げな鬼灯。瑠奈も呆れつつ、その瞳は好奇心に輝いている。

 フレアと瑠奈もそれぞれ、備え付けの肌触りの良いバスローブを脱ぎ捨て、ザブン、と湯の中に身を沈めた。


「「「「はぁ〜〜〜……っ、いきかえる〜〜」」」」


 日中の緊張と、旅の疲れがじんわりと湯船に溶け出して行く。全員から、思わず幸せなため息が漏れた。


「それにしても、あのディーラー、ムカつくな。あんな見え見えの色仕掛けでヨシダに近づきやがって」


 しばらく夜景を眺めていたフレアが、不意にそう呟いた。


「ほんまや。ヨシダはんも、美人を前にして鼻の下伸ばしよって。脇腹抓ったくらいじゃ足りひんかったわ」


 瑠奈が長い黒髪を指で弄びながら、ぷくりと頬を膨らませる。


「にゃー。でも、あれはヨシダがモテるって証拠にゃ。Sランク冒険者で、スタンピードを止めた英雄だにゃ。おにゃのこが放っておかないのも当然にゃ」


「……ヨシダは、優しい」


 キャトリーヌの冷静な分析に、鬼灯がぽつりと付け加える。その言葉に、フレアと瑠奈はぐっと黙り込んだ。


「……ま、まあ、いざって時に頼りになるのは、認めてやってもいいけどさ」


「……しゃーないなぁ、ウチらがちゃんと見張っといたるから、安心しぃや」


 二人はそっぽを向きながら、そんなことを言い合う。その顔が少し赤いのは、お湯のせいだけではないだろう。


「にゃはは、二人とも素直じゃないにゃー」


 キャトリーヌが楽しそうに笑いながら、フレアにパシャリとお湯をかける。


「なっ、なんだいきなり!」


「にゃーの勝ちにゃ!」


「ふん、そんなちっちゃいメロンでアタシに勝ったと思うなよ!」


 立ち上がり、仁王立ちで胸を張るフレア。


「にゃにゃにゃ、にゃにおー、これから大きくなるにゃ、吠えずらかかしてやるにゃ、覚えとくにゃ!」


 フレアとキャトリーヌが子供のようにお湯をかけ合い戯れ始める。それを見ていた瑠奈も「もう、はしたないわぁ」と言ってたが、流れ弾を受けて本気で参戦している。


「ふむ、私のウォーターメロンが一番だな」


 そんな三人の様子を、穏やかな目で見守っていた鬼灯がボソリ呟いたが、3人の耳には届かなかった様だ……


 ……湯気の中に、乙女たちの明るい笑い声が響き渡る。


 カジノシティの夜景を独占する豪華な湯船で繰り広げられる、ささやかで、かけがえのない時間。




 一方俺はと言うと、女性陣がお風呂でキャッキャッウフフと戯れている、その声を聴きいて血の涙を流しながら、一人自室でステータスウインドウと対峙してたのだった。


 うーん、まさか女神様の言ってた"ご褒美"って……このウインドウの壁紙の事じゃ無いよな? ステータスウインドウを開くと、まず目に飛び込んできたのが、デカデカと『よくできました』と書かれた花丸だ。

 全くご褒美になって無いが、と言うか子供か? と得意のツッコミを炸裂させる。


 それは置いといて、今回のスタンピードでの獲得スコアが凄い! 2万超えてるのだ。


「いや、頑張ったからなー、これくらいは無いとブラック過ぎるからな」


 ニヤけながら一人ゴチる。どうも一人でステータスウインドウ見てると、前世のオタク魂が蘇ってくる。でもしょうがない、新しいスキルを目の前にするとガチシューターの血が騒ぐ。


「それにしても、なんかトーマスさんとこで見た時はアレも欲しい、コレも欲しいと思ったけど、今はそれ程でも無いんだよな」


 スタンピード戦と仮面の紳士との激闘で、今の仮想アケコンの方がやりやすくさえ有るのだ。

 例えばRACS召喚で物理的にアケコンが召喚できるらしいが、いちいち持って歩かなくても、脳内アケコンで充分行けるし、兎に角高いのだ。

RACS召喚を取得するのに、スコア1万、命を削って稼いだ2万の半分が持っていかれる。しかもマニュアルにはコレを持つものは、STGスキルが使える、と有る。


「当たり前じゃー、アホか? STGスキル使えんかったら、ただのアクセサリーか? いるかボケー ハアハア……」

 

 思わず興奮して我を忘れるほどの手抜きマニュアルだが、スコアに対してのリターンが、無い。全く無い。


 という事で、今回はバルムンク仕様から、スペースファンタジーにスキルセットを変えてみようかと思う。


スペースファンタジーとは、アナザーワールドに異世界転生した女子高生が、悪のドラゴンから平和を取り戻すため、超能力を駆使して戦う、擬似3Dシューティングゲームだ。


 俺は2D横スクロールのシューティングも好きだが、擬似3Dのスペースファンタジーも大好物だ。このゲームはパワーアップアイテムなどは無く、女子高生キャラからは想像でき無いほど、純粋に己の連射のみを頼りに戦い抜くストイックで硬派なゲームシステムとなっている。


 そして、一番のメリットは、障害物などに弾が当たると跳ね返り、背景オブジェクトを、破壊し無いところだ。

 バルムンクのスキルセットは破壊力は最高なのだが、使い勝手が悪いので、街中でも使えそうなものを一つ追加しようと思う。


 なんだけど……高い。非常に高い。1000ポイントで買える物が有る中で、18000ポイント、現在2万ポイント程有るので余裕と言えば余裕だが、残りが2000ポイント程か。


 散々悩んだ挙句、結局ポチりました。新しいスキルの魅力には抗えませんでした。はは……


 後は色々隅々まで見た結果、何故かXBOBXのアナログジョイパッドや、モスキートスティックR5と言う、片手操作ジョイパッドが追加されてて、モスキートスティックR5はめっちゃ安くて1000ポイントだったので、RACS召喚のテストケースとして買ってみた。


 うん、片手ジョイパッドでシューティングとか無いわ〜 って言うのは分かってる。でも気になるじゃん? 後はバードビューとかのパッシブスキルを買って、ほぼスコアは使い切ってしまったのだ。


「ふぅ……」


 大きな買い物を終え、俺が一つ息をついた、その時だった。

 ガチャリ、とリビングの奥の扉が開き、湯上りで頬を上気させた女性陣が、それぞれバスローブ姿で現れた。むわっと立ちのぼる石鹸と薔薇の香りが、俺の鼻腔をくすぐる。


(おいおい、湯上がり美人が4人バスローブ姿とか、サービスし過ぎだろ)


「あ、ヨシダ。まだ起きてたのか」


 フレアが少し驚いたように言った。


「お、おう。お前らこそ、随分と長風呂だったじゃないか」


 彼女たちの姿にキョドってしまう俺、伊達にオタクはやって無いぜ!


「当たり前や! あないええお風呂、すぐに出るやなんて勿体無いことできるかいな!」


 瑠奈が胸を張って答える。その瞳は興奮で潤んでいた。巫女服では分かりにくかった瑠奈のメロンがバスローブを押し上げ主張して、目のやり場に困ってしまう。


「ど、どうだった? 例のバスルームは」


 俺は目を逸らしながら尋ねると、四人は顔を見合わせ、満面の笑みで答えた。


「最高にゃ! あそこで暮らしたいにゃ!」


「……そうだな、夜景、星、綺麗だった」


「そいつは良かった」と俺は笑う。


「あの風呂に入るためだけに、このホテルに泊まったと言っても過言では無い! だろ?」


 俺がそう聞くと、皆が深く何度も頷いた。その反応だけで、彼女たちがどれだけ満喫したかが伝わってくる。


「で、アンタはまだ入ってないのか?」


「ああ、ちょっと今後のことについて考え事をしててな。お前たちが上がったなら、俺も一汗流してくるとするか」


「ふーん、考え事ぉ? まさか、あの色仕掛けディーラーのことやないやろな?」


 瑠奈がジト目で探りを入れてくる。


「いやいや、もっとこう、俺たちパーティの戦力強化に関わる、真面目な話だっての」


 俺はそう言って立ち上がる。


 さてさて、それじゃあ俺も、このホテル最高の贅沢を味わいに行きますかね。



 この時の俺達は、この夢の様な時間がほんの束の間だと言う事を、知らなかったのだ……


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