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第39話 おっさん、豪華スイートルームを堪能する

 知識チートでギャンブル無双と簡単に考えていたが、思わぬ醜態を晒してしまった。それでも皆んなの協力で勝利できた。


 そして、気になる配当だが……なんと金貨170枚分!! あわや全額スッて全員文無しの一大事だったが、結果オーライ、これでカジノの最上階のジャックポットルームに泊まれる。


「ヨシダ、やったな! これで最高級カジノリゾートホテルの、更に最高級スイートルームでお泊まり……ぐふふふー」


「なんや、フレアその下品な笑いは、品性疑うわ」


「なんだよ、じゃー瑠奈はテントで野宿な」


「な、なんや、そないな事、卑怯やで、ウチも嬉しいけどアンタの笑い方が下品や言うてるだけや」


「にゃー、瑠奈は気取ってるにゃ。にゃははー今日は最高の日にゃ、これもにゃーのじょーほーのお陰にゃ、感謝しても良いにゃ」


「うむ、キャトリーヌよくやった、今日は宴だ、最高級の肉で乾杯するぞ」


 四者四様で嬉しさを表現する、俺の仲間たち。まあ、醜態晒したりもしたけれど、皆んなの笑顔が最高の報酬かな。仲間たちの喜ぶ姿を感慨を持って見ていると、ディーラーがこちらに寄ってくる。


「おめでとう御座います、流石はSランク冒険者パーティ、『余燼の光の騎士団エンバーライト・オーダー』のヨシダ様です、感服致しましたわ」


 金髪、長身、グラマーで妖艶な雰囲気を纏い、俺を称賛する美人ディーラー。


「あ、どもども、最後までハラハラしましたが、結果オーライでホッとしてます」


 どうも、美人が近くに来ると緊張してダメだ。フレア達で結構慣れたかと思っていたけど、パーティにはいないタイプで、全く役に立ってない。


「あ、でも、俺たちってそんなに有名ですか? ついこの間Sランクに昇格したばかりなんですけど」


「はい、それはもう私どもの間では、最も注目するべき冒険者パーティと評価も高いのですのよ、ふふふ」


「そ、それは光栄です、ははは」


 なんかこの人、いちいち艶っぽくて緊張するな、あーなんかもう、逃げたい。


「実際、この街ではさまざまな階級の人々が入り乱れ、熾烈な情報戦が水面下で展開されています。ここでは情報を制する者が勝負を制する、とまで言われていますのよ」


「いやー、俺たちみたいな、ぽっとでの冒険者なんか、そんなに注目されないでしょう?」


「そんな事有りませんわ、なんでも『スタンピード』を阻止した英雄だと、お聞きしていますわ」


 おおー、マジか? 俺達注目株の、新進気鋭のSランクパーティって事か? オイオイ照れるな、コンチクショーめ。


「そんな未来の英雄、ヨシダ様に……今夜私と二人きりで、もう一戦如何かと、お誘いしに伺ったのですわ」


「いだだだだ」x2


 得体の知れない妖艶な雰囲気のディーラーに鼻の下を伸ばしていると、いつの間にか俺の両脇に現れたフレアと瑠奈に、同時に脇腹を思いっきり抓られる。


「生憎だが、コイツは今夜アタシ達と先約がある」


「せや、そのお誘いは、丁重にお断りさせてもらいますよって」


 目を三角にしたフレアさんと瑠奈さんが、俺を見ながら誘いを断る。……見る相手間違ってません?


 その後二人に引き摺られて、ディーラーの前から去る俺。超かっこ悪い。


「ふふふ、焦らなくても夜は長いんですもの、お楽しみはこれからですわ」


 引き摺られる俺に、彼女は意味深な言葉を投げた。


 妖艶なディーラーの意味深な言葉もガン無視で、フレアと瑠奈に引き摺られてキャッシャーズ・ゲージまで連行される。

 ここはカジノの現金などを取り扱うため頑丈な柵で囲われ、さらに多重結界が施された厳重な場所だ。


「ようこそ当カジノへ、今日はどう言った御用向きでしょうか」


 キャッシャーズ・ゲージに有る窓口の一つへ行くと、受付嬢がすぐさま対応してくれる。


 先ずはコインを景品であるジャックポットルームと交換だ、受付嬢にその旨を申し出ると、最上階に有る4部屋の内すでにハートとスペードの部屋は塞がっており、残りはクラブとダイヤの部屋が選べるそうだ。


「大変申し訳ございませんが、当ホテルの最上階のご利用時には、ゲスト認証をお願いしております。身分を証明する物をご提示頂けますでしょうか?」


 景品の引き換え前に身分を証明するため、俺達はSランクの冒険者証を受付嬢に提示する。


「……まあ、Sランクの冒険者様でいらっしゃいましたか。当カジノのスイートルームは王族や貴族のご利用も多く、規則とはいえ大変失礼致しました」


 受付嬢が規則と理由を述べた後、丁寧に頭を下げて対応する。


「身分も証明できたし、どっちの部屋にする?」


 仲間にどっちが良いか尋ねると、満場一致でダイヤに決定。ダイヤの部屋と希望を伝えると、受付嬢はチップ100枚と引き換えに、引換券(バウチャー)を発行してくれた。これを持ってホテルのフロントへ行けば宿泊が出来るそうだ。


「いやー、こう言うところはアタシ達も初めてでさ、ヨシダが居てくれて助かったよ」


 前世でも思いっきり庶民の俺も初めてなんですけどね? もっとも、美少女達に頼られるのは悪い気はしないので、出来る男を演出してますけど……出来てるよね?


そして、アッサリとゲスト認証を終えて引換券を手にした後は、残りのチップを、現金に交換してもらう。

 ゴールドのチップは金貨と等価交換で、交換時に10%の手数料が発生する。結局170枚有ったチップは、100枚は宿泊券に、残りの70枚は手数料を引かれて63枚の金貨になった。


 悪銭身につかず、とはよく言った物で、結局ホテル代が掛からなかっただけで、手元の資金は殆ど変わらずだ。まあ、最高級のスイートルームを堪能出来るんだからラッキーぐらいに思えばいいか。


 俺たちは受け取った引換券で、フロントへ向かい、チェックインを済ませると、魔道エレベーターに乗ってホテル最上階のジャックポットルームのダイヤの部屋を目指す。


 魔道エレベーターから降りた一行を待ち受けていたのは、広いエレベーターホールと、建物の端から端までまっすぐ続く赤いカーペットが引かれた広い通路だった。


「「「「「うおおー! スッゲー」」」」」


 田舎者丸出しで歓喜の雄叫びを上げる5人。だがそれもしょうがない。


 広くとられた通路には、上質で毛足の長いカーペットが敷かれ、靴のまま踏んでも良いのかと躊躇するほどだ。壁は上質な雪花石膏(アラバスタ)で作られ、そこには凝った意匠が施されている。そこから視線を上げると、高い天井には魔道具の豪奢なシャンデリアが下げられ煌めいている。


 俺たち5人は目を見開きため息を漏らす。なんて事はない、ただの通路ですらこれだ、部屋の中は一体どうなっているのか期待を通り越して、恐怖すら感じる。


 意を決して豪華な赤いカーペットの上を進むと、部屋の入り口前には、その部屋を表すカードの模様が大きく描かれどの部屋かが一目瞭然で分かる。

 周りの豪華さに落ち着きなく通路を進む俺たちは、足元にダイヤの模様が描かれたドアの前で止まる。白く大きなドアには、部屋を表すダイヤのマークの象嵌がして有りキラリと輝いている。


 魔道具のカードキーを持つフレアがゴクリと喉を鳴らす。歴戦の冒険者をして緊張の極致にさせる、豪華スイートルームとはいかなる物か……カードキーをかざしドアノブをガチャリと捻る。


 中に入った俺達5人は絶句する。


 入り口を開くと、目の前には巨大なリビングルームが広がる。豪華な設えの家具や調度品も凄いが、この広大な部屋はなんだ?

 天井は恐ろしく高く、普通の部屋の2-3倍、多分5-6mは有るのではなかろうか? そして、部屋の広さも10m四方は有りそうな途轍もない空間が出迎える。


「なん……だ、これ。此処でドラゴンでも飼うつもりか? なんだよこの部屋の広さは」


 フレアが混乱して、訳の分からない例えをしている。


「せ、せやな。ただ此処で皆んなで寝泊まりするんはちょっと、アレやな、ベットとか無いんかいな?」


 いや、このクラスのホテルで、大部屋に雑魚寝とか無いですから。


「にゃー、こっちには、部屋がたくさんあるにゃ、中もすんごい広くて、ベッドがちょーデカいにゃ鬼灯でもヨユーにゃ」


 早速部屋のアチコチを見てまわっているキャトリーヌが個室を見つけて、にゃーにゃー言ってるにゃ。


「此処はいい、私でも、頭がつっかえない」


 鬼灯は鬼灯で天井の高さに感動している。普段余程窮屈な思いをしているのだろう。


「もう、なんつーか、ツッコミが追いつかない、なんだ此処は凄すぎだろ?」


 俺もツッコミを放棄して開き直る。だけど、頬は緩み自然とニヤける。


「ぶっちゃけ、最高過ぎだろこの部屋は」


 俺はそう呟き、この豪華絢爛なスイートルームを堪能するべく、部屋に入って行くのであった。

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