第33話 おっさん、Sランクパーティになる (第1章 完)
ギルマスが悔恨と贖罪の念を吐露した後、思い沈黙が執務室を支配している。
「すまなかったな、おっさん、それにフレアも。嫌な事思い出させて……だが、今の話でギルマスの疑惑は解消された。フレアもその時に居合わせたんだ疑いようも無い」
「じゃあ、なんで仮面の紳士は、ハルクのおっさんにあれだけの復讐心を抱いてたんだ?」
俯き加減のままのフレアが疑問を投げかける。
「そうだな、仮面の紳士が竜で有ると仮定しての話だが、馬鹿な冒険者が竜の巣にちょっかいを掛けた時に丁度居合わせたギルマスが、そいつらに命令したと勘違いしたんじゃ無いかと俺は思う」
「勘違い?……じゃあその勘違いで、アタシの両親は殺され、街は灰に消え、沢山の犠牲者が出たと言うのか?」
フレアが叫ぶ様に詰問し、俺の胸ぐらにつかみかかる。憎しみ、悲しみ、やり場のない怒り……復讐の炎、その瞳には様々な感情が渦巻き、俺を責め立てる。
「まってやフレア、ヨシダはんはギルマスの疑惑を晴らそうとしてんのやで? 確かにアンタにとっては辛い過去や、せやけどヨシダはんに当たるんは違うやろ?」
「そ、そーにゃ、ヨシダっちの話はフレアの探している竜の事にゃ、八つ当たりは良くないにゃ」
瑠奈とキャトリーヌに諌められても、尚、感情が昂ぶり叫ぶフレア。
「分かってる、頭では分かってるんだ! だけど、だけど……」
「フレア……少し落ち着け」
戦場では気丈に振る舞う戦乙女が、嗚咽を漏らし涙する……その背中をそっと優しく摩る鬼灯。
「あの時の竜は、正に今のフレアと同じ心境だったのだろう」
「ヨシダはん、それ以上フレアを煽るんは……」
「いや、別に煽ってる訳じゃ無くて、あの時の竜は馬鹿な冒険者に住処を荒らされ、番を殺され、未来まで奪われた……その怒り狂う竜に冒険者の所属など見分けられ無いだろう。あの夜の竜には全ての人間が敵に見えたんじゃないのか?」
俺の感じたあの夜の竜の心境を、そう瑠奈に話す。だから許せと言う訳に行かないのは百も承知だ。
「そう言うことか……あの時街を守る為に奴に対峙したワシらは、馬鹿な冒険者を守る仲間じゃと思われておったと、そう言うことか? 皮肉なもんじゃの、お互いが憎しみ合っていたのが実はただの勘違いじゃったとはな。じゃが『それじゃあ手打ちで』とはならんのじゃ! この落とし前はキッチリ付けてやるわっ!」
俺達のやり取りを静かに見ていたギルマスが、思い沈黙から一変、いつもの調子で吠える。
「とは言え、ワシはもう引退した身じゃ、しかもギルマスと言う立場も有る。正直、ワシのこの手で引導を渡してやりたいが、それはもう叶わん……」
一旦言葉を切り、俺たち全員を見回した後、言葉を続ける。
「そこでキサマら『余燼の光の騎士団』に、ワシからの依頼じゃ、まずは王都にある冒険者ギルド本部に向かい、今回の事件の顛末を報告をしてもらう。当事者で有るキサマらが直接出向くのが良かろう」
全く、泣いたゴリラがもう笑ったとか。もうちょっと大人しくしてろよと、思わんでも無いが。
まあ、仮説の段階だが仮面の紳士が宿怨の相手かも知れないと、目をギラつかせ興奮してる方が、らしいっちゃ、らしいか?
「その後、キサマらは今回の事件の黒幕を探し出し、あの『竜災の夜』の竜に関係するか如何かも含め、調査を依頼する。依頼票は後日正式に発行するが、これがワシからの依頼内容じゃ、準備が出来次第出発せよ」
ん? ちょっと待てよ、なんか勝手に依頼が発行されてるけど、確か俺は今回の作戦に限り、暫定的にアサインされてんだったよな?
「なあ、おっさん、その依頼は俺も含まれてるのか?」
ふとした疑問を口にしただけなのだが、何故かパーティメンバー全員から何言ってんだコイツ的な目で見られる。
「はあ? 何を言っとるか、一番の当事者のキサマが行かんで如何する。ヨシダ、キサマも『余燼の光の騎士団』の一員として今回の件は最後まで付き合ってもらうからな、覚悟しとけ」
「お、おう、了解だ」
(実際に、何言ってんだって言われたよ、ははっ)
「それから、これも後日正式に辞令を発行するが、『余燼の光の騎士団』をSランクパーティに認定する」
「「「「「おおー! マジか?」」」」」
ギルマスの言葉に、喜びの声を上げる『余燼の光の騎士団』の面々。Sランクと言えばこのゴリマスとも並ぶ最強の証だからな、そりゃ喜ぶのも無理はない。
「だだし!」
パーティメンバーが口々に喜びの声を上げる中、ギルマスが鋭い声で釘を刺す。
「だだし、ヨシダを含めて5人でSランクの条件付きだ。言い換えればキサマら5人の総合ランクがSと言うことだ。当然一人でも欠ればその認定は効力を発揮しない。また、個人ランクはそのままだ。そしてヨシダ、キサマはCランクに認定する。いかに言うても、SランクパーティにFランク冒険者が混ざっていては、格好が付かん。まあ、なんだ……その『面白い魔法』と、知性は買ってると言う事だ」
「やったな、ヨシダ! これでアンタも一人前認定だ」
「ヨシダはん、おめでとう」
「やったにゃ、ヨシダっち」
「うむ、めでたい。めでたい時は肉だ、ヨシダ」
口々に祝福の言葉を投げかけて来る余燼の光の騎士団の面々、これで俺もやっとパーティの一員に認められた気がして、少し涙が溢れた。
(第1章 完)




