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第31話 おっさん、犯人は……

…………

 そう言いながら、皆を見回す。全員が真剣な面持ちで俺の方へ視線を集める。


「俺の前世の知識から仮面の紳士の正体を推測すると、二つに絞られる」


 皆一様に緊張して、固唾を飲んで俺の言葉を待っている。


「一つ目は、魔族または悪魔と呼ばれる存在だ。高い知能、高度な魔法の行使、驚異的な身体能力、様々な耐性を持つ、そして人型をしているらしい」


「魔族……悪魔? ヨシダそれはどう言った存在なんだ」


 ギルマスとの模擬戦の時に予め聞いていた通り、この世界に初めて魔王が現れたらしく、フレア達には想像できないみたいだ。


「魔王とは簡単に言えば、邪神がこの世界に混沌をもたらそうと送り込む、その化身と言えるかな? そして魔族や悪魔はその手下で、高位の魔族は人の形をしている者もいるとある」


「ふむ、高い知能を有し、戦闘力はヨシダと互角以上か、厄介だ」


 普段は寡黙な鬼灯が冷静に戦力分析をしている、鬼灯はタンクだから1番接敵の機会が多い、当然と言えば当然か。


「そしてもう一つの可能性だが、こっちは正直、余り自信がない」


 自信が無いと言うよりは、答えに躊躇すると言うのが本音だ。だが、ここ迄話してやっぱりは無いだろうし、情報の共有は大事だ、例え可能性が小さくてもだ。


「それで、その自信のない心当たりとは?」


 よりにもよって、当事者のフレアに答えを促され、俺も言葉に詰まる。恐らくこれを言ってしまえば、フレア達全員を深く傷付けてしまうだろう、いや、ギルマスもか? もしかすると、キレて飛び出していくかも知れない、それでも俺は……


「…………ドラゴンだ、それも長い年月を生きた古代竜(エンシェント)クラスのドラゴンだ」


 一瞬、余燼の光の騎士団エンバーライト・オーダーの全員が凍り付く、出来れば言いたくは無かったが、可能性としては人化の術が使える程のドラゴンなら、全ての条件をクリア出来る。


………………


…………


……



 重い沈黙が続く中、最初に口火を切ったのはギルマスだった。


「ヨシダ、キサマのその書物の知識がこの世界で通用するのか? 冗談でした、では済まされんぞ?」


 俺の話を聞いたギルマスは、顔を真っ赤にして、青筋を立てまくってる、辛うじて平静を保てている様子だ。恐らくフレアの語った"あの夜の"惨状が脳裏に蘇ったのだろう。俺はギルマスの目を正面から見据え応える。


「俺の書物の記憶と、この世界の類似性は確認済みだ。例えば、スライムや、ゴブリン、オークは殆どそのままの姿形を確認している。件のドラゴンも聞いた話だと、ほぼほぼ俺の知識と齟齬がない。完全一致はないかも知れない、だが、十中八九は当たってると踏んでる。これだけの確率なら占いや闇雲に探すよりは、ずっと当てにはならないか?」


「確かに、圧倒的な身体能力、人をも凌駕する知能、魔法も使えて炎への耐性も有る……だがあの身体の大きさは? キサマが遭遇したのは人と変わらぬ姿だったと聞いておるぞ」


「そうだ、アンタが疑問に思うところ、そこが自信が無いと言った部分だ」


「それだとキサマの憶測は一番要の部分が抜けておる事になる。ドラゴンなら他の全ての条件を満たしておるが、人型でないなら全てが無意味では無いか!」


「まあ待ってくれ、自信が無いが可能性は有る」


「どういう事だ、人型で無いならば可能性はゼロでは無いのか?」


「ああ、そうなるな。が、話には続きがある。俺の世界の書物には竜種は人化の魔法が使えると有る。そして女神の話に出て来る邪神の手先であれば、その力という線も考えられないか?」


「う……む、全く根拠の無い話でも無いと言う事か……」


「ああ、悪魔か竜かは正直分からんが、例え小さな可能性でも気にし過ぎは無いと思う」


 バルムンクのレーザーの如き視線に耐え切り、俺の書物の知識がこの世界でも通用する根拠を述べる。


「ふ、分かった、キサマの使命と根性に免じて信じてやろう。で、これからどうするつもりだ?」


 なんで理論的に説得したのに、根性論になってんだ? やっぱこのおっさんは筋肉ゴリラだ。俺の説得意味ないじゃん……まあ、結果オーライにしとこう。


「そうだな、先ず出来るのは……フレア達にはキツイ事だが、"あの夜"の事を詳しく教えて欲しい。それから、仮面の紳士が言っていた殺戮の件だが、ドラゴンに関する討伐依頼とかが有ったかどうか知りたいのと、過去の記録が有ればそれもだな」


 取り敢えず魔族の方は後回しにして、ドラゴンは当事者が目の前にいるので、そこから攻めることにした。ギルマスの過去を振り返ってもらうとしますか。


「ふぅ、余り気は進まんがそうも言っとれんしな。分かった、話してやろう。今でも"あの夜"の事は鮮明に脳裏に焼き付いておるは……」


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