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第23話 おっさん、VS仮面の紳士

 未だ余裕の態度を崩さない仮面の紳士。その表情は仮面に隠されて依然として読めない。


「如何した? 攻めてこないのか?」


 いつの間にか、眼前の紳士が放った漆黒の炎は消え去り、二人の間に奇妙な静寂が訪れる。


「ふむ、彼の方が仰った通りですか……我々の邪魔をする女神の遣いが、確かヨシダだったと。貴方がそうだったとは知りませんでしたが、その力少し厄介ですね……」


「な、なに? 何でそれを……彼の方とは誰だ?」


 目の前の仮面の紳士は、確かに俺の名前を呼んだ、名乗っても居ないのにだ。


(何者だ? コイツ、女神の使命から知っている様な口ぶりだし……まさか女神様の言ってた魔王とやらの関係者か?)


「……その力、少し厄介ですね……」


 仮面の紳士の静かな声が、ドーム内に響く。漆黒の炎は消え去ったものの、彼の全身から放たれるプレッシャーは依然として俺たちを圧迫していた。

 名乗ってもいない俺の名前を知り、さらに女神の遣いであることまで看破している。 コイツ、一体何者なんだ?


(何者だろうが関係ねえ。今はコイツをどうにかするしか道はねえんだ!)


 俺は内心の動揺を押し殺し、アケコンを握る手をイメージして構えを維持する。 防御障壁(フォースフィールド)の青白い光が、俺と仲間たちを包み込んでいる。

 だが、この絶対防御にも限りがある。BIGパイソンが一撃で墜とされるレベルの攻撃を7回耐えるだけだ。 さっきの『ダーク・フレイム・ストーム』が何回分の攻撃に相当したのか……考えるだけで冷や汗が出る。


「厄介……ねえ。それはこっちの台詞なんだがな。アンタこそ、ずいぶんと俺たちのことをご存知のようだ」


 俺は努めて平静を装い、軽口を叩く。

 

「もしかして、俺のファンだったり? 推しに出会えたからと言っても、熱烈過ぎだろ?」


 仮面の紳士は、ふ、と息を漏らした。嘲笑か、あるいは単なる呼吸か。仮面の下の表情は読めない。


「ファン、ですか。面白いことを言いますね、ヨシダ殿。ですが、貴方のその“力”、そして貴方を遣わした“女神”は、我々にとって排除すべき対象でしかありません」


 奴はゆっくりと右手を上げる。その掌に、再び黒い魔力が渦巻き始めた。 ヤバイ、またアレが来るのか!?


防御障壁(フォースフィールド)の残数は……考えたくもねえ。だが、ここで引いたらフレアたちも終わりだ。やるしかねえんだよ!)


「排除、ねえ。そりゃまた物騒な事だ。だが、アンタにそれができるのか? この完璧なバリアを破れるとでも?」


 俺はわざと挑発的に言い放つ。防御障壁(フォースフィールド)の耐久回数などおくびにも出さず、あたかも無敵であるかのように。


 ピクリ、と紳士の動きが一瞬止まったように見えた。気のせいか?


「完璧なバリア、ですか。確かに、先程の炎を防いだその力、見事というほかありません。しかし、どんな力にも限界というものがあるのでは?」


 探りを入れてきやがった。コイツ、見た目通に頭もキレるタイプか。


「限界? ハッ、生憎だが、俺のSTG魂は無限大だ。アンタがどんな攻撃を繰り出そうが、俺の防御障壁(フォースフィールド)は全てを跳ね返す。それこそ、アンタの魔力が尽きるまでな!」


(これはハッタリだ。だが、強気に言い切るしかない)


 俺は内心で冷や汗をかきながらも、不敵な笑みを浮かべてみせる。STGのボス戦だってそうだ。相手の攻撃パターンを見切り、ギリギリのところで回避し、一瞬の隙を突いて撃ち込む。今はまさにそれと同じ。相手の心理を読み、隙を作り出すんだ。


「ほう…魔力が尽きるまで、ですか」


 仮面の紳士の声には、わずかながら思案の色が混じったように感じられた。


「面白い。ならば、試してみるとしましょうか。その“完璧なバリア”とやらが、いつまで持つのかを」


 奴が再び右手をかざそうとする。今度はさっきより小さいが、それでも凝縮された黒い炎だ。


(クソッ、乗ってこねえか! いや、むしろ好都合だ。派手な大技より、単発の強力な攻撃の方が回数を正確に把握しやすい!)


「いいぜ、やってみな。だが、後悔するなよ? 無駄な攻撃で魔力を消費した挙句、俺の反撃で塵になるのはアンタの方だ」


 俺はさらに煽る。


「反撃、ですか。そのバリアを展開しながら、どうやって?」


「言った通りだ、俺は今アンタの目の前にいる。この距離なら、あんたがどんな動きをしようと、百発百中だ!」


 俺はそう叫ぶと、アケコン操作(スタイル)で初っ端から自慢のの16連射をぶちかます。


「こんな風にな、オラオラオラオラオラオラ〜」


「な、まさか、その完全防御の状態から攻撃も可能なのですか?」


 至近距離でレーザービームの如き怒涛の連射を叩き込む。咄嗟に防御姿勢を取る仮面の紳士。


「く、人間風情が……調子に乗るな!」


 そう吐き捨てる仮面の紳士には先程までの余裕は無くなり、明らかに動揺を見せる。


「そらそらそら、如何した、如何した? こっちは攻撃し放題だぞ? 反撃出来ないのか?」


 なかなか乗って来なかった仮面の紳士を、ここぞとばかりに煽りまくる。絶対的な優位に立つ奴の意表を付き、主導権を此方が握る。


「…………くっ!」


 苦し紛れに、起動していた魔法を俺たちの方に放つ仮面の紳士、だが防御障壁(フォースフィールド)に阻まれ雲散霧消する。


「ハハハー、如何した、その黒くてショボイ、ファイヤーボールは、魔法初心者ですか? 攻撃ってのはこうするんだよ!」


 連射の手は緩めず、得意の軽口でも口撃する、二刀流スタイルで攻めまくる。相手はクレバーだ考えさせるな、なんでも良い冷静さを取り戻させてはダメだ。


「成程、ではこう言うのは如何ですか?」


 そう言うと、金色の爪を装備した腕を構えて、武道家の様な型を作る。


「はあっ!」


 気合い一閃、構えから目にも止まらぬ速度で繰り出す一撃。防御障壁(フォースフィールド)にガキーンと阻まれ、此方に届くことは無かったが、防御障壁(フォースフィールド)が無ければ、避けることは愚か、受け止める事さえ困難な速さだ。


 だが、攻撃を防ぐと言う事は、相手も無傷では済まなかった様だ。防御障壁(フォースフィールド)の耐久値と引き換えに、仮面の紳士にも少なくないダメージを負わせる。


 だが此方も無傷では無い、先程の攻撃で、如何やら一段階耐久力が減ったみたいだ、その証拠に青白く明滅する防御障壁(フォースフィールド)が僅かに緑がかる。

 このまま被弾し続ければ防御障壁(フォースフィールド)は黄から赤に色が変化する。奴の事だ変化すれば何かが有ると勘付くだろう。被弾回数と色の変化、この関係を気付かせる訳には行かない。


「……成程、物理攻撃にも耐性有りですか、しかもカウンターダメージも有りと……とても厄介ですね」


 ダメージを受けて尚分析している……やはりコイツは頭が相当切れる。だが考えさせる暇を与えてはダメだ。


「如何した? 八方塞がりか? コッチは攻撃し放題だがな!」


 煽りながら、更にノーマルショットを連射する。防御障壁(フォースフィールド)のほんの些細な変化ですら気付かせない様に、俺は連射で畳み掛ける。


「オラオラオラオラオラオラア〜、考えてても勝てないぜ!」


 俺はノーマルショットの連射の手を緩めない。幸いノーマルショットは弾切れの心配は無い、攻撃を無限に繰り出す事で、俺のスキルはリソース管理が不要と印象付け、防御障壁(フォースフィールド)もまた永遠だと印象付ける。


「くっ、流石は女神の使徒……ですか、その攻撃は厄介ですね、無詠唱で超高速の連射、無限にも思える使用回数…………かなり此方の体力も削られています……少し侮り過ぎましたか?」


 俺の怒涛の連射を前に、仮面の紳士はしばし沈黙した。奴の金色の仮面が、ダンジョンコアの禍々しい光を反射している。


(どう出る? このまま撃ち合いを続ければ、防御障壁(フォースフィールド)の残り耐久回数次第では俺にも勝機がある。だが、奴の攻撃は未知数だ、一気に防御障壁(フォースフィールド)を剥がされたら……)


 時間は俺たちに味方しない。防御障壁(フォースフィールド)の耐久回数もそうだが、瑠奈がフレアと鬼灯を回復する時間も必要だ。


 仮面の紳士が、ふっと右手を下ろした。


「……そうですね、貴方の言う通り、考えていても勝てない……其処は認めましょう。ですが、その前に一つ、興を削がれる邪魔が入ったようですね」


 紳士が視線を俺の後方……いや、ドームの入り口へと向けた。何だ? このタイミングで、一体誰が……


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