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第20話 おっさん、ダンジョンアタックする

 狭い坑道内での俺のポンコツ振りが露呈した訳だが、キャトリーヌのマシンボウを借りて、一応は格好が付き、ダンジョン探索を続ける余燼の光の騎士団エンバーライト・オーダーの面々。


 地下に進行する程に魔素の濃度は上がって行き、遭遇するモンスターも凶悪で凶々しくなって行く。


 先ほどの蜘蛛型モンスターはまだ序の口だった。次に遭遇したのは、ロックイーターと呼ばれる鉱石と融合したようなトカゲ型の魔物で、ミスリルイーターと呼ばれる種類だ。


 その特徴は、食べる鉱石の種類によって体表は様々な硬度を有する。金剛石やオリハルコンなどの鉱山では危険度ランクが跳ね上がり、並の攻撃では傷一つ付かないほどだ。しかも、口からは鉱石混じりのブレスを吐き出し、武器や防具をダメにする。


「ヨシダ、マシンボウの調子はどうだい! あの硬い甲羅、狙えるか!?」


フレアが盾でブレスを受け流しながら叫ぶ。


「やってみる! けど、シングルアクションだから連射は期待するなよ!」


 俺はマシンボウを構え、トカゲ型魔物の比較的装甲が薄そうな関節部分を狙う。STGで鍛えたエイム力は伊達じゃない。狙いを定め、トリガーを引く。ガチャン、という機構音と共に弦が開放され、マウントレールに番た矢が放たれる、金属製の40cm程の矢はほぼ狙い通りの関節部に突き刺さった!


「ギャウッ!」


 ミスリルイーターが苦悶の声を上げる。流石はミスリル鉱石を食べるだけ有る、その硬度はかなりの物で貫通には至らなかったが、それでも動きは確実に鈍った。


「よし、効いてる! 鬼灯、今だ!」


 フレアの指示に、鬼灯が巨大な剣を振りかぶり、鈍った魔物の頭部目掛けて叩きつける。凄まじい破壊音と共に、魔物は沈黙した。


「ふぅ……ヨシダ、なかなかやるじゃないか。そのマシンボウ、使いこなせてるみたいだな」


 フレアが少し感心したように言う。


「まあ、勝手は違うが射撃は得意分野だからな。ただ、一発撃つごとにコッキングが必要なのと、矢の回収が面倒だぜ」


 俺は肩をすくめておどけて見せる。正直、敵が群れで現れたら対処しきれる自信はない。


「ヨシダはん、無理は禁物ですえ。私たちがおるさかい」


 瑠奈が俺の肩を軽く叩き、微笑む。彼女の言葉に少しだけ肩の力が抜ける。


「そうだな、俺は一人で戦っているわけじゃない。今は頼りになる仲間がいるんだ」


 探索はさらに続く。坑道は複雑に入り組み、そこかしこに魔素の影響で変異したらしい、怪しい色で発光する苔が群生している。湿気を含む空気はますます重く、息苦しささえ感じ始めた。


「キャトリーヌ、この先、何か感じるか?」


「……にゃ、すごく強い魔力を感じるにゃ。それに、デッカい扉が合って、何か大きな空間がこの先にあるみたいにゃ……」


 キャトリーヌのいつもの表情は鳴りを潜め、モフモフの猫耳がピコピコと動き、警戒を強めているのが分かった。その理由が彼女が指し示した先、これまでとは明らかに雰囲気の異なる通路だった。


 壁は磨かれたように滑らかで、天井も高く明らかに何者かの手で造られた様子だ。そして、その奥からは、まるで心臓の鼓動のような、不気味な魔力の拍動が感じられる。


「……来たな。ここが、おそらく(コア)のある場所(フロア)だ」


 フレアが剣を握りしめ、静かに呟く。その声には、緊張と覚悟が滲んでいた。


「全員、これより先はさらに危険度が上がる。気を引き締めろ。瑠奈、全員に強化(バフ)を掛け戦闘準備。鬼灯、前線は任せた、落ちるなよ。キャトリーヌ、奇襲に備えろ。ヨシダ、援護は頼んだぞ!」


 フレアの指示に、俺たちは無言で頷く。

 一歩、また一歩と、魔力の源へ近づいていく。通路を抜けた先には、穹窿天井きゅうりゅうてんじょうの巨大な空間が広がっていた。そして、その中央。禍々しい紫黒の光を放つ、巨大な結晶体が浮遊し回転している。それが、この廃坑をダンジョンに変えた元凶、ダンジョン(コア)に違いない。


「あれが……(コア)……!」


俺が息を呑んだ、その瞬間だった。


 ゴゴゴゴゴ……!


 空間全体が揺れ、(コア)を守るように、周囲の岩壁から一体の巨大な影が姿を現した。それは、これまでのモンスターとは比較にならないほどの威圧感を放っていた。


 体長10m体高3mややズングリとしたフォルムに、全身を黒曜石のような硬質の鱗で覆い、鋭い爪と牙を備え、頭には捻れた巨大な角が有り、短く太い四本の足が大地を掴む。まさしく悪夢から抜け出してきたかのような姿の魔獣だった。


「ようこそ、余燼の光の騎士団エンバーライト・オーダーの皆様、私の復讐劇にご参加頂き有難う御座います。貴女方には悲願を叶える為、此処で亜竜の餌になって貰います」


 突然現れた仮面の紳士、その姿は執事(バトラー)を思わせるタキシード姿に金色の仮面、肩口から続く片腕には仮面と同じ金色の爪を奢った籠手を装備し、脳内に直接響くその不気味な声で、俺達に死の宣告を放つ。


「コイツはいきなり御挨拶だね! アタシ達はアンタに逢うのは初めてなんだ、怨みを買う覚えはまるで無いんだがね?」


「いえいえ、貴女方も『鉄塊のハルク』の関係者ですし、その資格は充分に有して御座いますので、安心して…………死ね!」


 ギルマスに因縁有る謎の紳士の声を合図に、後ろに控えた巨大な亜竜が突進してくる。


「……チッ短気なヤツだ、お喋りはお仕舞いってわけか!」


 フレアが不敵な笑みを浮かべる。だが、その額には汗が滲んでいた。


余燼の光の騎士団エンバーライト・オーダー、総力戦だ! 絶対に、亜竜を撃破し(コア)を破壊するよ!」


 亜竜が咆哮し、地響きと共にこちらへ突進を開始する。いよいよ、このダンジョン攻略の最終決戦が始まろうとしていた。


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