表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/37

第16話 おっさん、無双完了

「す〜ご〜い〜にゃ〜、ヨシダっち、ちょ〜すげーにゃ!」


 そう叫びながいきなり背中におぶさって来る、おんぶお化け、じゃ無かったキャトリーヌ。


「うわっとっとっ、キャトリーヌか、どうよ? コレが俺のジョブ、シューティングマスターの力だ!」


「ヨシダッちすごいにゃ、すご過ぎるにゃ、敵さん溢れてたにょに、ぜーんぶ消えちゃったにゃ」


 そう言うキャトリーヌを背負って振り向くと、他のメンバーも此方に駆け寄って来る。


「ヨシダ、アンタ凄いな、いきなり一人で迎え打つとか言い出した時は、コイツ頭おかしくなったのかと思ったもんだが、この結果を見れば、成程一人でやると言い出す訳だ。ハハハッ」


「ほんま凄いで、ヨシダはんは。せやけどこれはどないなっとるんや? 魔法にしては無詠唱やし、しかもあの連射速度……ありえへんわ」


「うむ、流石ヨシダ、良く分からんが良くやった。帰ったら肉食わせてやる」


 余燼の光の騎士団エンバーライト・オーダーのメンバーが口々に称えてくれる。他の冒険者連中は一様に口をあーんぐりと開けて顎が外れそうだ。


「はっ! 見たか、コレがギルマスも認めた俺のスキルだ、伊達にシューティングマスターなんてジョブを名乗っちゃいないぜ!」


 俺はキャトリーヌを背負ったまま、胸を張ってドヤ顔を決める。まあ、実際は女神様の気まぐれで授かったスキルと、若返った肉体のおかげなんだが、ここは威張らせてもらおう。


「しかし、ヨシダ。お前のその『面白い魔法』、一体どういう原理なんだ? 魔力を感じないどころか、まるで別系統の力としか思えんのだが」


 フレアが真剣な眼差しで問いかけてくる。他のメンバーも興味津々といった顔で俺の言葉を待っている。


(うーん、どう説明したものか……まさかシューティングゲームのシステムです、なんて言える訳もないし)


「あーと、それはだな……魔法と言うか、俺のユニークスキルとでも言っておこうか。恐らく魔力とは違うエネルギー体系で……と言うか俺も良く分からん、気付いたら使える様になってた」


 前のめりで聞いていた面々はガクッとズッコケる。そうは言っても、俺も解らん以上どう説明しろと。


「ふむ、ユニークスキルか、ギルマスの金剛身(ダイヤモンドスキン)やフレアの烈火剣(フレイムソード)の様なものか? だが、その威力はヤバイ。まさか、あの数の魔物をたった30秒で削り切るとは……」


 鬼灯が腕を組み、感心したように唸る。その言葉に、他の冒険者たちもざわめき始める。先程まで呆気に取られていた者たちも、徐々に状況を理解し始めたようだ。


「おい、今の見たかよ…」


「ああ、あの新人、マジとんでもねえぞ」


「何なんだよ……あの攻撃力はよ……破壊神の化身か?」


 遠巻きに見ていた他の冒険者たちからも、驚嘆と興奮の入り混じった声が聞こえてくる。特に、先程まで俺を小馬鹿にしていたヴァルムートとかいう貴族のボンボンは、驚きすぎて顔面蒼白でわなわなと震えていると思ったのも束の間、俺の評価が高いと分かると。


「そうであろう、そうであろう、アチキのお陰で貴様の能力も皆に知れ渡ったであろう。ヨシダといったか?貴様が望むなら、栄光の我が冒険者パーティ『ヴァルムート精鋭団』の一員に加えてやらん事も無いであるぞ。」


 先程までの嫌味な態度は一変して、掌クルックルのお貴族様。


(それにしても『ヴァルムート精鋭団』……あれ? 何処かで聞いた……様な……)


「あー、思い出した、『ヴァルムート精鋭団』って、トーマスさんの護衛を失敗したCランク冒険者じゃ無いか!」


「な、なな、しっ、失敬な、失敗などしてはおらんわ、偶々、べっ、別の群れに見つかって追われておった癖に、依頼料を値切るとは、これだから下賤な商人は……ま、まあ、今回は貴様の働きに免じてこれくらいにしてやるである」


 散々引っ掻き回した挙句、ボロが出たら尻尾巻いて何処かに行く『ヴァルムート精鋭団』達。面倒臭い奴らが居なくなりほっと一息。


(もっとも、これで少しは俺の実力を認めさせただろ。これで今後の作戦行動もやりやすくなるはずだ)


「まあ、百聞は一見に如かず、ってことだ。俺の力が必要なら、いつでも声をかけてくれ」


 俺がそう言うと、フレアはニヤリと笑った。


「ああ、もちろん頼りにさせてもらうさ、ヨシダ。……いや、シューティングマスター殿、かな?」


「はは、呼びやすい方でいいぜ、リーダー」


 フレアとの間に、確かな信頼関係が生まれたのを感じる。他のメンバーも、先程までの好奇の目とは違う、尊敬と期待の眼差しを向けてくれている。


「さて、ヨシダのおかげで先鋒はだいぶ片付いたが、これで全てが片付いたわけでは無い。皆んな、気を引き締めていくぞ!」


 フレアが号令をかけると、パーティーメンバーだけでなく、周囲の冒険者たちも「おう!」と力強く応じた。俺の戦いが、彼らの士気も高めたようだ。


「所でキャトリーヌ、可愛い女の子を背負うのは嬉しいのだが、そろそろ降りてくれか?」


「にゃっ!? そんにゃーヨシダっち、にゃーが可愛いにゃんて……そんなホントの事をいうにゃんて〜」


 なんかモジモジしながらクネクネしてたけど、俺の背中からひらりと飛び降りる。その身軽さは猫獣人(ミャリオン)の流石はシーフといったところか。


(よし、これで第1ウェーブはクリアだ)


 俺は気持ちを切り替え、アケコンを握り直すイメージで再び構えを取る。

 狭窄部の向こう、土煙が晴れ始めた先には、新たな魔物の群れが蠢いているのが見えた。先程よりも勢いを増した魔物達の群れが迫り来る。


「第二波、来るぞ! 全員、戦闘準備!」


 フレアの鋭い声が飛ぶ。


 余燼の光の騎士団エンバーライト・オーダーのメンバーはそれぞれの武器を構え、臨戦態勢に入る。


 第二ウェーブからは俺が先行して魔物の数を間引きつつ、進行スピードを遅らせ、後ろに等間隔に並んで詰めている十数組の冒険者パーティが、残りを仕留める形に落ち着いた。


 これは他の冒険者達が活躍出来る、出来ないでは無く、第一波の時に見せた必殺『ラピッドファイヤー・エクストリーム』の惨状を見て、頼むからやめてくれ、渓谷の地形が変わってしまうと、懇願された為だ。



 第二ウェーブが始まり余燼の光の騎士団エンバーライト・オーダーの戦闘を初めてこの目にしたが、獅子奮迅の戦いぶりは流石、ギルド最強パーティだ。


 その戦闘は鬼灯がその体躯と膂力を存分に発揮し、敵を受け止め、巨大な剣で一刀両断にし、前線を支える。


 鬼灯が静なら、動のフレアは鬼灯が一身に集めたヘイトを上手く利用しながら、炎を纏った剣で敵を切り裂き、薙ぎ倒していく。その圧倒的なスピードと手数はこのパーティの攻撃の要だ。


 一方キャトリーヌは種族特性とシーフのスキルを存分に発揮しながら神出鬼没(トリッキー)な不意打ちや騙し討ちで、フレアや鬼灯にヘイトをなすり付けてヘイトコントロールをしつつ自身も確実に敵を倒して行く。


 瑠奈は後衛ラインから、強化と回復を担う祝詞(しゅくし)と、弱体と攻撃を担う禍詞(まがごと)の二系統を巧みに使い分け、強化弱体のフルセットを入れ終えると、戦況を見ながら、適度に攻撃を繰り出している様だ。


 殲滅スピードも去る事ながら、兎に角四人の連携が(うま)い。鬼灯以外は殆ど被弾が無い為、回復役の瑠奈に余裕が産まれその結果、継戦能力がずば抜けて高い。これがAランク冒険者の戦いかと思う反面、その連携に自分の姿が無いのが寂しくも有った。


 そうして俺やフレア達余燼の光の騎士団エンバーライト・オーダーの面々や、その他の冒険者パーティにより安定して戦は継続する。


……


…………


 第三ウェーブ、第四ウェーブと敵を殲滅し続ける……長時間の作戦で回を追うごとに疲労が蓄積し、散発的では有るがミスが出始める。


「やば、撃ち漏らした!」


 だが、そんな物は慣れた物だとカバーに入ってくれる冒険者達、すまんなと片手を上げれば、良いって事よ!と返してくれる。最初は俺の能力に懐疑的で有った者達も、今ではこの作戦を担う仲間だ、戦友だと答えてくれる様になった。


 嬉しかった、俺の存在が皆の役に立ててる事が……皆が俺を認めてくれた事が……


 いつしか辺りが夕日で赤く染まり始める頃、ようやくスタンピードの解除が宣言された。


「ふう、取り敢えずはひと段落か? 皆んなお疲れ!」


 フレアの一言にやっと張り詰めた空気が弛緩し始める…………鬼灯じゃ無いが腹減った、肉食いてえ〜〜


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ