第15話 おっさん、シューティングゲームスキルで無双する
迫り来るゴブリンの編隊、乱杭歯を剥き出し涎を撒き散らしながら此方へ群れとなって襲いくる。その形相を見てもなお湧き上がる高揚感。
殺らなければ、殺られる、その無情な世界を前にスキル取得の順番を考える俺は生粋のSTG馬鹿なんだろうな。
まあ良いさ、そこを買われてこの世界へ転生した様なもんだ、この現実戦闘で俺の力を存分に試してやる。
「……さてと、これで後には引けなくなったわけだが……逆に言えば何も気にせずぶっ放せる訳だ」
襲いくる編隊の一匹が赤く光る。これはパワーアップカプセルを持っている目印となる。先ずは軽くコイツらから片付けていく。
「ノーマルショット発射」
そう念じながらショットトリガーを押し込む動作をする。軽い発射音と共に光弾がゴブリンの編隊へと吸い込まれるように飛んでいき、着弾。
ドギュゥゥン!
一瞬の閃光と、やや遅れて届く爆音。たった一発でゴブリンの編隊は木っ端微塵に吹き飛んだ。赤い光を放っていたゴブリンのいた場所には、赤色のカプセルがキラリと輝いている。
「よし、まずはカプセル回収だ」
念じるだけでカプセルが俺の手元に吸い寄せられ、パワーアップゲージの1段階目がオレンジ色にチャージされる。
「さあ、ここからが本番だ」
脳内で奏でるBGMはより鮮明に鳴り響き、FM音源特有の金属的で煌びやかなサウンドは絶頂に向かって高まっていく。そのリズムに乗って俺はスキルを発動させる。
「スピードアップ!」
スキルゲージの一つを消費すると、俺の身体が青白いオーラに包まれ、思考と反応速度、そして身体能力が一段階上昇するのを感じる。視界がクリアになり、迫り来る魔物の動きが僅かにゆっくりと見える。
更に迫り来る魔物の五個編隊を得意の連射で一掃、3個のパワーアップカプセルが現れる。
手近なカプセル一つを使ってもう一度スピードアップ。更に一段ギアを上げる。女神から貰った新しい体のポテンシャルと二段階目のスキルが相まって、どんな弾幕だって避けられそうだ。
「お次は『ミサイル』だ!」
残り二つのカプセルを消費しスキルを発動。ミサイルトリガーを念じながら押し込むと、足先の地面に生成された小型ミサイルが発射、地面を這う様に進むミサイルは此方に迫るオークの群れに着弾。連続する爆炎が土煙と共にオークの群れを吹き飛ばす。
次々と迫り来る敵編隊をショットとミサイルでことごとく消し飛ばす。
「10秒経過、まだまだ! お次は攻撃力強化の要『オプション』!」
たちまち俺の分身が現れ、動きに追従しながらノーマルショットとミサイルを打ち出す。これで攻撃力は二倍だ、迫り来る二組のゴブリンの編隊に、俺と分身が同時にノーマルショットを叩き込む。
「いいぞ、イケてる! ゲージも溜まってきた!」
赤い敵を優先的に狙い、パワーアップカプセルを確実に回収する。 ゲージが再び満たされていく。
「更に追加で、『オプション』」
更に分身が増え、攻撃力は三倍だ。津波の様に押し寄せる数百規模の敵の波を16連射で迎え撃つ。キレッキレのカッティングでギターサウンドがアドレナリンを絞り出し、ドラムとベースが鼓動をオーバードライブする。唸る旋律、鳴り響くオーケストラヒット、魂を揺さぶるBGMは鮮明さを増し絶頂を奏でる。
「ヒャッハー、コレコレコレ〜、これぞシューティングの醍醐味だ! 迫り来る敵を己の連射で捩じ伏せる快感! エクスタシー!!」
俺はショットトリガーとミサイルトリガーを2本の指で交互に連打する。16連射x2本指で秒間32連射をたたきだす!
これぞ俺がもつSTG奥義の一つ『ラピッドファイヤー・エクストリーム』だっ!!
(20秒経過……まだまだいくぜ!!)
冒険者たちのことなど知った事か! 俺は今、目の前の敵を撃破し、殲滅することだけに集中する。ここは俺のステージ、俺の独壇場だ。
「更に駄目押しの『オプション』だ! 」
三個目の分身が現れ、俺の動きに追従する。その火力は四倍に達し雪崩のように押し寄せていた魔物の群れの先頭が、面白いように削られていく。
「見たか! これがシューティングマスターの戦い方だ!」
無数の光弾とミサイルが乱れ飛ぶ様は、まさに弾幕。だがそれは敵から放たれる絶望の弾幕ではなく、俺から放たれる希望の弾幕だ。
(残り5秒……仕上げだ!)
ゲージを消費し、俺は最終兵器を起動する。
「いくぜ、『レーザー』!!」
オプション共々、ノーマルショットが何処までも伸びる青白いレーザービームへと変化する。4条の光の筋は全ての敵を貫通し薙ぎ払う、その様は魔を払う聖剣の如し!
俺が腕を動かすと、その聖光は、狭窄部に殺到していた魔物の群れを、一思いに消し去った。
ゴオオオオオオオオッ!!
耳をつんざくような轟音と共に、レーザーが通過した跡には、黒く焼け焦げた地面と、蒸発した魔物の残滓だけが残っていた。
「……ふぅ。30秒、こんなもんか」
脳内ではステージクリアを祝福する様にファンファーレが鳴り響く。俺はゆっくりと腕を下ろし、目の前に広がる静寂と、もうもうと立ち込める土煙を見つめた……




