EP6:生死を賭けた大裁判
目を覚ますと、高貴な赤いカーペットが目に入った。辺りを見回すと、沢山の人々に囲まれていた。俺は動こうとすると、体が動かないことに気がついた。拘束されていたのだ。そして、素晴らしい白髭の男が喋りだした。
『これより、帝王暗殺についての裁判を始める』
「帝王…暗殺…?」
『被告人よ、なぜ禍々島にいた、あの島は我が国の領土の上に立ち入り禁止のはずだが』
「俺は転生者だ!あの島が立ち入り禁止だなんて知らない!」
『転生者?また嘘を重ねるつもりか!』
「この状況で嘘をつくか!俺は前の世界でトラックに引かれて死んで、神に転生させられたんだ!」
ザワザワ…
『静粛に!被告人よ、その話は本当であるな?』
「本当だ!この世界で一番安全な場所に転生させるって自称神が言ってたんだよ!」
『…押収したナイフは神器であった事にも納得が行く、ならば被告人。お前は神が遣わした救世主ということになる』
「救世主?」
『神はこの世界を創りし時に、我々人族と魔族にこうおっしゃった。“世界の均衡が乱れる時、調律させる救世主現す”と』
「…」
ここで、自称神が遊び感覚で送り込んだと言えば、何をされるかわからない。話の流れに合わせておこう。
「そうですよ、私はこの世界を救う為に来た救世主です」
ザワザワ…!
『なんということだ、神よ…革命を起こしたカミニウス様の考えは間違っていたというのか…』
「革命?」
『我々の無礼をお許しください、救世主様。』
「変わり身の早い」
その後、俺は解放されて、客室に通されて、高貴な服を着させられた。ついでに押収されていたナイフも返された。
「俺は一体どうなってしまうのだろうか」
『あなたが救世主様ですか?』
「はい救世主です」
『私は救世主様に忠誠を誓う騎士のカリバーです』
『私は救世主様に忠誠を誓う魔士のエクスです』
「頭を下げられても無一文だよ」
『いえ、我々は代々、救世主様に仕えてきた一族。救世主様の命令であれば、例え手駒にでもなります。』
「申し訳ないな、それよりも聞きたいことがある」
『聞きたいことですか?何でも答えましょう』
「この世界のことを沢山、とりあえず禍々島?になぜ帝王がいたのか」
『このことは王族の方しか知らないことですが、帝王様は暗殺を恐れ、分身体を身代わりとしていたのですが、救世主様が禍々島に隠れていた帝王様を暗殺してしまったという流れです』
「なるほど、殺める以外に方法は無かったのか。あと、革命って何?」
『この帝国は少し前まで歴代の帝王が独裁をしていたのですが、現帝王様が革命を起こして前任の帝王様を殺害したのですよ』
「それは暗殺も恐れることだ」
『これからどう致しましょう、救世主様』
「歴代の救世主は何をしたの?」
『そうですね、特に一貫性はないですが。大陸を沈めたり、魔王や帝王に国王を殺害したり、お花に水をやることに生涯をかけた者など様々ですね』
「勇者とは違うのか」
『勇者を殺害した者もいますね』
「頭のネジによる制御が出来ない怪物なんだ」
『我々も救世主様が何をなさるのか期待しているのですよ』
魔士のエクスと名乗る者が目を輝かせて期待の眼差しを浴びせている、遊び感覚で転生させられたから、救世主ではないだろうに。可哀想だと他人事ながらに思った。