EP4:西の大洞窟
転生してきてから丁度3週間の時間が経過して、無人島の生活に慣れてきていた。転生してから最初の3日間ぐらいは寂しさや、コミックスの続きを読めなかったことに苦痛を感じていたが、今では無人島でのセカンドライフを謳歌している。元々、一人で何かに熱中することが得意だった俺にとって、自由なこの島の空間は楽しかった。今でも孤独はたまに苦しいが、気に病むほどでは無くなっていた。
「丁度3週間経過したけど、船やヘリが飛んできたことは一度もない。地面に書いた“SOS”の文字も意味は無かった、別に生活出来ているし、まだ慌ててはいないけど。大体この島のことも把握してきた、体感横4km縦2kmの俺にとっては大きい島。様々な野生動物が生息していて、自生している植物も豊富だし、あとは西の方を探索したらこの島も終わりって感じ。」
俺は何でも切れるナイフを持ち、颯爽と走った。転生してから自分でも驚くほどに身体能力が上がったと肌で感じる。自重トレーニングを始めたとは言えど、ここまで早く体に変化が起きるとは思ってもいなかった。大体50mを5秒で走れるようになったし、岩を本気で殴ればひびを入れられるようになった。しかし、引き換えに拳から大量の出血に襲われることにはなる。
「…?崖に穴が空いている?それに、階段がある?驚いたな…!この島には人工物が何も無かったから、完全に人の手が入っていない無人島と思っていたが、まさか、人がいるのか!?」
俺は転生して一番の興奮を覚えた。この世界には人がいるかもしれないという可能性と、未知の世界への冒険へ期待に満ち溢れたからだ。俺は行ける所まで薄暗い洞窟を降りてみることにした、物々しい雰囲気に俺は気圧されて冷や汗が地面に落ちた。不思議なことにどれだけ階段を降りようとも、暗闇が襲ってくることは無かった。だが、無限に続く階段に少しずつ恐怖を覚え始めた、何かがいるわけでもないのに、背後を何度か確認した。その時、階段の終わりと共に広い空間に出てきた。その景色に俺は更に驚きを覚えた、ここが無人島だったことを忘れさせるほどのテクノロジーに満ちた空間だった。見たこともない金属に覆われた部屋、沢山の不思議な機械の数々。そして、大きなモニターのような物の前の豪華な椅子に座る人がいた。俺は誰が座っているのかが気になり、近づいてみると、何かを踏んだようだ。警報が鳴り響き、座っていた者がこちらに気がついた。
『何者だ!』
「俺は怪しい者では…!」
『馬鹿な…あり得ない!私の居場所がバレる訳が無い。どうやってここに辿り着いた!』
「だから!勝手に入ったことなら謝るから!」
『貴様!一人でここに来たのか!?この場所のことは誰も知らないのか!?』
「俺はずっと独りだ!他に誰かいるのか!?」
『この場所を知るのはお前一人ということか、なら!貴様を殺せば、この場所がバレることはないということ!』
「待ってくれ!俺は…!」
『まだ…終わるわけにはいかない!元最高司令の力を思い知るが良い!』
そう言い、問答無用で俺の元へと物凄い気迫で走ってきた。剣を引き抜き、何一つ無駄のない動きをしていた。俺は思わず何でも切れるナイフを投げてしまった。最高司令と名乗る彼は、余裕の笑みを浮かべ、剣で弾こうとしたが、逆に剣が切れてしまって弾くことは出来なかった。絶望した彼を俺のナイフは心臓を貫いて、豪華な椅子の前に落ちた。彼は倒れた。
「大丈夫ですか!?」
俺が急いで近づいてみたが、もう彼は息をしていなかった。