EP3:孤独と夜の時間
先へと進んでいると、俺は変わった音を耳にした。良く耳を研ぎ澄ますと、水の流れる音だと気がついた。俺が音の方向へ歩いて行くと、湧き水が滝のように流れて川を作っていた。
「俺はなんて都合が良いんだ!無知の俺にとって、飲水の確保が出来たのは運が良かった、だが、煮沸とかしないと飲めないんだっけ。」
喉が渇いている俺にとって、そんなことは些細な問題だった。俺はガブガブと川の水を飲んだ、ひんやりと冷たくて気持ち良く美味しい。俺は飲めるだけ飲んで、拠点へ戻ることにした。日も暮れてきていたから、夜になってからヘビに出会ったら、今度こそセカンドライフを終えることとなってしまう。帰り際に黄色い果物を持てるだけ持って帰った。
「なんとかヘビに会うこともなく拠点へ帰ることが出来た。周囲が真っ暗になる前に焚き火を作ろう。適当に木を一本切って、棒と板を作った。あとは棒を高速で回転させて火種を作るだけだ、棒の側面を綺麗に剃ったし、手が擦り切れることはないはずだ。」
俺は力の出せる限り全力で棒を回した、回しに回して煙が出るのを願った。周りの音が耳に入らなくなり、流れる汗が垂れることに気がつかないほどに意識を集中させた。すると、微量の煙が出てきた。俺は急いで火種を集めた落ち葉に落として息を吹きかけた。大切な火の命を絶やさないように、15分くらいの苦労を無駄にしないように丁寧に息を吹きかけた。そして、火種が消えた。
「なんてことだ、火種が消えてしまった。心が折れてしまった。けど、無人島には俺以外にいない、心が折れても孤独で誰も助けてくれないんだ」
なぜだろう、急に涙が出てきた。考えていなかったわけではないが、俺は無人島に転生したのだ。ここは地球ではないから、助けが来るはずもない。そもそもこの世界に人類が存在するのかもわからない、俺はこれから死ぬまで孤独なのかもしれない。俺は涙を拭いながら、また棒を回し始めた。
――日が暮れてきて…
俺はなんとか火を起こしに成功した!ヘビの肉も焼き始めて、焼き目からとても良い匂いが漂い始めた。黄色い果物を頬張りながら、幸せに浸っていた。
「意外と本気を出せば何でも出来るのかもしれない、それにしても、自称神との会話でたまたまナイフを選んでいて良かった。ナイフが無ければヘビに絞め殺されていた、そう…絞め殺されて…。」
俺はヘビの肉に噛み付いた、とても美味だ。肉を全て食した後、俺はご馳走様でしたと言った。そして、俺は自重トレーニングを始めた。趣味というわけではない、孤独なこの世界で俺は娯楽に飢えていた。それに、この過酷な世界で生きて行く上でナイフだけに頼りっきりだと、いつか後悔する気がした。自分の身は自分の力で守れるようにならねばならないと思った。だから、俺は満足するまでひたすらトレーニングをすることにした。