9話 事情徴収
刃上利宗の死亡を知らされた後、俺は事情聴取をされることになった。
俺が刃上利宗に襲われたが、撃退したということ。ただし、アステラの件について触れずにだが。
幸い俺が疑われることはなかった。というのも刃上利宗は犯罪グループに所属しており、ブラックリストに載るほどの悪行を繰り返していたらしい。ガーディアン側も手をこまねいていたのは事実だったので俺が問題を起こしたとは思わなかったらしい。
しかし、このまま御役目御免というわけにもいかなかった。というのも、なぜ俺が狙われたのかということだった。
刃上利宗のこれまでの犯罪行為として金銭狙いが主だった。戦闘狂でもあるようだが、戦うのはあくまで殺した能力者の死体を裏で売買するという副次的報酬があってこそだが、高値で買い取られるのは高ランク帯の能力者で俺はこれには該当しない。
ガーディアンはこのことに疑問を抱いているようだった。おそらくアステラを殺せば金になると見込んだから、襲ってきたのだろうが、アステラのことをあまり公にはしないほうがいいだろう。(言っても信じられないだろうが。)
ガーディアン達には申し訳なかったが俺もよくわからないと嘘をついた。ガーディアン達も「犯罪者の考えなんかわかんないよねー」といってあまり深くは言及されなかった。
結局そのまま俺は解放されることになったが、ガーディアンハウスから出てみると既に太陽は登り始めていた。
結局、家についたのは朝の5時半過ぎであった。
「ということがあったんだが家の方は特に問題はなかったか?」
帰宅後、すでに起きていたアステラと遭遇したので安否を確認した。特段変わったところはなさそうだが、朝早くということもあり、あまり眼は冷めていないようだった。腰まであろう金髪も寝ぐせでぼさぼさであった。
「ふぁい、とくになにもおこりましぇんでしたよ」
「マジで眠そうだな。今日は休んでおけよ。疲れてるだろうし」
「そうさせていたたぎます」
アステラは再びソファーへとダイブし眼を閉じようとした。が、子供が玩具を母にねだるかのような目でこちらを見てくる。
「?なんか言いたいことがあんなら言えよ。一応、客人ってことになるんだろうし、できる限りのことはするぞ」
「そ、その、羅黒さんも一緒に寝てくれませんか?私と。未来ではよく一緒に眠っていたので……」
「……お子様め」
「誰がお子様ですか!」
小声でつぶやいたつもりだったがしっかりと聞こえていたらしい。
一通り怒ると再び照れくさそうにアステラはこちらの様子をうかがっていた。
神秘の影響で睡眠は1月やそこらは取らなくても大丈夫ではあるが、取るに越したことはない。アステラも今まで一人だったので寂しかったのだろう。俺もよく琴音と寝ている(俺のベットに琴音が無理やり入ってくると言った方が正しい)ので俺が変な気を起こすこともないだろう。
ただ一つ気になる点があった。
「なあ、一緒に寝てたって同じ場所で睡眠を取ってただけだよな?」
「?それ以外になにかありますか?」
「いや、大丈夫だ。今のは忘れてくれ」
未来の自分が性犯罪者でないことに一安心する。
アステラの見た目はあまり日本的、いわゆる大和撫子といった感じではないが、顔も整っており腰までかかるほどの綺麗な金の髪が伸びている。ただし、まだまだ幼さは残っている。
もしも未来の自分がこの年の少女に手を出していたらと思うといろいろな意味でぞっとする。
くだらない考えは頭の隅におき、今後のことについて考える。
「とりあえず、これからの方針を立てるためにもまずは情報収集だな。そのためにも明日あたりに学校に行きたいんだけど行けそうか?」
「私は大丈夫ですけど何のためですか?『創星』はこの時点ではあまり何かをした記録もないですし、そう簡単に尻尾を出すとも思えません」
「そうだな、『創星』について調べられたらベストだがどちらかというとメインはそれ以外だな。お前がタイムスリップしてきたのをどうやって知ったのかとか、いろいろだな。情報網が広い人が学校にいるんだよ、そのために明日学校に行く」
「わかりました」
アステラはやはり疲れていたのかそのまま眠ってしまった。俺もアステラのそばに横になり少しばかりの睡眠を取った。
その後、目を覚ました琴音もなぜか俺とアステラの間に入り込む形でソファーに寝ころび、結果的に俺が床に落とされることとなった。