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7話 帰宅後

「あにーじゃ、何その子!?」

 

あの後、ひとまず家に帰宅した際、琴音から当然の疑問が出てきた。兄がいきなり子供、それも女の子を連れてきたら驚くだろう。


「こいつはまーなんて言うか訳ありなんだよ、あまり詮索しないでくれ」


「……あにーじゃ、もしかしてロリコン?」


「誰がロリコンだアホ。琴音、応急処置したいから救急ポット持ってきてくれないか?」


「はーい」


 とてとてと音を立てて琴音は応急ポットのある棚に向かっていった。


 応急ポットなど必要最低限のものを用意し、アステラの傷の手当てを行った。見た目からはあまり深い外傷はなさそうだったので、簡単に終わるかと思っていたが思いのほか苦戦した。


 というのも、アステラという少女の肉体が普通の人間のそれとは大きく異なり、体のいたるところに機械が組み込まれているからだ。それも俺とは異なり部分的ではなく、体全体だったので下手に治療すると機械部分に不調が生じかねなかったのでその部分を避けながらの治療であった。

 

 それなりに治療に難航したが同時にわかったこともある。右耳には小型のイヤホンらしきものがあり、おそらく補聴器のような役割を果たしているのだろう。同じように表面上は見えないが目のどこかにも視覚を補助する機器があり、俺がアステラを壁に叩きつけた際に不調になって目が見えなかったのだろう。


 機械(アンドロイド)ではないが、完全に人間というわけでもないのだろう。いったいどういう存在なのだろうかこいつは

 

 その後もできる限りの対処は尽くしたが、アステラが無事かどうかの確証はなかった。かなりの疲労具合だったので目が覚めるのはずいぶん後のことになると思っていたが、意外にもアステラはすぐに意識を回復した。


「…………ここは?」


 お約束の展開のように、ソファーから上体を起こし辺りをきょろきょろ見渡す。


「俺の家だよ。気分はどうだ?」


「ずいぶんとよくなりました……羅黒さん、お久しぶりです」


「お前にとってはそうでも俺にとってははじめましてだけどな」


「はっ、そうでした。」


 どうやらまだあまり頭が働いてないらしい。まあ、もしかしたらもともとそこまで働かない頭なのかもしれないが


「今失礼なこと考えませんでした?」


「正直考えた」


「ちょっとは悪びれてください!もぉ、相変わらずデリカシーがないですね!」


「へいへい」


「へいへいじゃないです!あれ、そういえば琴音さんは?家にいないんですか?」


 なんで琴音のことを知っているかと一瞬疑問に思ったが、考えてみれば俺を知ってるのだから琴音を知っていても全く不思議ではない。


 あたりを見回し、琴音がおかしな位置にいることに気づいた。なぜか段ボール箱の中にいて、穴からこちらをうかがっている。人見知りもここまで行けば重症だ。


「いやお前何やってんだよ。」


「敵情視察、こいつもしかしたら日本人を全員角刈りパーマにするために送り込まれたスパイかもしれない」


「どんなスパイだよ」


 などとくだらないことを言っているすきにアステラが琴音の背後に回っていた。そして、段ボール箱を掴み、一気に持ち上げた。


「ぐわー!やめろー!光が!溶ける!」


「お前は吸血鬼か」


 そして中からスポーンと琴音がほおり出された。ゴロンと転がると、アステラと琴音の目が合う。なぜだがアステラは呆けてる。が、とつぜん


「琴音さん子供だー!!」


 いきなりアステラのテンションが上がったので俺と琴音は困惑していたが


「お、お前の方がこどもだー!」


「そういうこと言う方が子供なんですー!」


 などと気づけばお互い罵り合っていた。身長、顔、性格などひたすら互いを罵倒していたが話が進まないので俺が打ち切らせた。琴音は「うぅー」とうなっていた。


「未来の琴音ってそんな今と違うのか?」


「全然違いますよ!これ見てください」


 アステラは腰につけているポーチらしきものから一枚の写真を撮り出す。そこには一人の女性が映っていた。腰まであるほどのストレートヘア、その身には白衣をまとっており、眼元はとても凛々しく感じる。かなり大人びた印象は受けるが、どこか面影はある…


「これまさか」


「はい、これ琴音さんです」


「嘘だろ!?」


 かなりの衝撃を受けてしまい深夜にも関わらず叫んでしまう。今の琴音の見た目は髪型こそ似通っているものの、俺よりも10㎝ほど身長も低く、ぼさぼさの髪に加えて全身ジャージ姿である。これがああなるんだから驚きも隠せない。


「ちなみに羅黒さんよりも若干琴音さんの方が大きかったですよ」


「やーい、あにーじゃのおちび」


「うるせー!!」


 その後、隣の家から苦情が来るまで騒ぎ続けていたのだった。


 ひと悶着の後、三人で居間に移動しいろいろと事情を聴くことになった。


 すでに深夜の二時を回っているが琴音は普段から昼夜逆転生活を送っているし、俺も神秘のおかげで疲労にはめっぽう強いので問題なく、アステラもしばらく休んでいたので元気そうではあった。


 琴音から「結局その子なんなのー?」と当然の疑問が出たので先ほどの公園での会話と同じ内容を琴音に伝えた。


「ほんとに未来から来たの?あにーじゃ騙されてない?」


「いや、さっきの写真があるだろ、お前の未来のやつ」


「けど画像生成だったり、もしかしたら他人の空似かも」


「まあ、確かに……アステラなんか証拠ないのか?例えば今にはない未来兵器とか」


「ふふん、そう言うと思いましたよ」


 アステラは意気揚々としながら腰に掛けているポーチらしきものからいろいろと出していく。その多くは機械類だがあまり見たことはない。機械にめっぽう詳しい琴音でさえもきょとんとしていた。

 

 その中から指輪のようなものを掴み指にはめる。すると、アステラの体が宙に浮き始めた。


「ふふ、驚きましたか?これは私が未来から持ってきたアイテムのうちの一つです。指輪の内部に疑似神秘が秘められており装着することで指輪ごとの機能が発動するのです」


 アステラは勝ち誇った顔をし、その後もベクトルの軌道を一度だけ変更する能力、特定の人間にのみ聞こえる超音波を発する能力などをこれでもかと見せつけてきた。


 まあ、正直驚きはした。というのも神秘は一人一つ。例外っぽい事例も存在するがこれは絶対だ。


 それにも関わらず目の前のアステラは明らかに複数の神秘を用いている。正確にはアステラではなくアステラがはめている指輪であるが。神秘の所持は一人一つというルールを完全に無視している。

 

 こんなものが世に知れたら皆こぞってほしがるだろう。


「ふふ、これで私が未来から来たことがわかりましたか?」


これ以上はないぐらいのどや顔を見せつけてくる。が、琴音の「そんなの他の能力者もできるじゃん」の一言でその自信は地の底へと崩れ落ちた。


「まあ、確かに割とそこら辺にありがちな神秘ではあるんだよな。なんかねぇの、未来っぽい奴?例えばドアに入るだけで瞬間移動できたりするやつとか」


「そんなのありませんよ、たかだが七年やそこらでそんなのできるんだったら誰も苦労しませんよ」


「七年?ってことはお前は七年後からきたってことか?」


「そういうことです、琴音さんには信じてもらえてないようですが」


「だったら七年後の私がどうなっているのか教えてよ」


 琴音からの要望にアステラは再び琴音の写真を出し、懐かしむように語っていった。

 

「10年後の世界では琴音さんは科学者だったんです。「創生」によって町は壊滅状態で、研究施設もろくに残っておりませんでした。そんな中でも琴音さんは限られた資源で様々な道具を作り出していきました。先ほどの指輪もそうです。「創生」の野望を止められたのも琴音さんの力が大きかったんですよ。」


 思いのほか褒められたのがうれしかったのか琴音は頬を赤らめていた。俺としても琴音がしっかりした人間に成長したのはなんだか感慨深かった。


 が、琴音の口から予想外のことを発せられる。


「私、ひもじゃないの?」


「は?」


「だって、私働きたくないもん、そんなに真面目に働くぐらいならあにーじゃのひもになる」


「なるな」


 本当になりそうだから怖い話だ。


 というより琴音の場合、ひたすら家に引きこもっても金に関しては何とかなりそうで怖い。アステラの世界の琴音のようにしっかりした大人にしてやらないとな...と心の中で決意し、脱線した話を戻す。


「本題に戻るけどアステラが過去に来た理由は「創生」ってやつの野望を止めるためってことでいいんだな?」


言ってたかどうか忘れてましたが羅黒の身長は160cmと高校二年にしては小柄です。ちなみに髪色は白で目つきが鋭い

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― 新着の感想 ―
[良い点] 妹ちゃんのキャラが立っていて、どこか幼いやり取りが面白かったです。アステラも指輪の力をそうホイホイ使って言いのでしょうか。使い捨てっぽい話ですが(笑)そのあたりもお茶目で良かったかと思いま…
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