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31話 灰賀VS神室


 地を這いながら、灰賀に向かって氷結が疾走する。


 あたり一帯はすでに氷漬けとなっており、下水道の面影はすでになくなっていた。


「っ!」

 

「っち!」


 灰賀が回避したところを逃すまいと、神室(かむろ)は彼女の得物である鎖を叩きつける。


 鎖といっても先端に鎌のようなに殺傷性の高いものがついているわけではなかった。だが―


「っな!?」


 灰を密集させてガードを図るも神室の鎖がすぐさま打ち砕く。神室の他を寄せ付けないほど圧倒的な魔力量による身体能力向上(ステータスアップ)によってただの鎖でさえ人のいのちを刈り取る凶器となる。


 三度、灰賀は手のひらから灰の放出による退避により神室の攻撃は空振りに終わる。


(灰の神秘?それを放出すること移動してるのか。そのせいですんでのところで攻撃がかわされる)


 神室は魔力による身体能力向上があるにしても、移動速度はそれほどといったところだった。彼女はあまり動き回るタイプではない。


(けど)

 

 狙い通りとでもいうかのように神室の頬が自然に上がる。灰賀もその笑みを見て、危険を察知したのかすぐさま体制を整える。だが、気づくには少し遅かった。


墓氷(ぼひょう)つらら」


 灰賀が見上げると天井から無数のつららが灰賀に向かって落下していく。先ほどまでの攻撃がすべてこの攻撃位置に誘導されていることに気づくと同時にすぐさま迎撃態勢をとる。


 自身に飛来するつららを神秘で迎撃するも準備の差という点で神室が上手だった。すべてを打ち落とすことはかなわず、灰賀の体にはいくつかのつららが突き刺さる。


 好機と見て追撃にかかる神室に灰の塊を発射し近づけさせない。鎖ではじきはじきはしたが予想外の威力を誇ることに多少驚き、攻撃の威力をうまく生かしながら後ろへと飛び、着地すると同時にスタートを切る。


(神秘が何なのかいまいちわからないけど……このまま押し切る!)


 すぐさま鎖の射程内に入ると、神室は鎖を()ぐ。横からくる攻撃に灰賀は空中へと飛び、回避する。


 神室と灰賀は互いの位置をしきりに入れ替え、そのたびに彼らの神秘で応戦する。


 だが、戦いは神室が優勢と言えていた


 灰賀が中距離からの攻撃を得意とする中、神室は近、中、遠距離すべてに対応していた。近づく者には鎖を、かといって離れれば氷の餌食となる。


 壁を破壊しながら向かってくる鎖に顔をゆがめ、我慢できなくなったか灰賀は怒りをあらわにする。


「……調子に乗るな!」


 瞬間、通路上のすべてが灰で埋め尽くされる。莫大な量の灰が進路を埋め尽くし神室に向かって進行する。


下水道という閉鎖空間では避けようもない、完全な必中攻撃。


(物量で仕留めに来た……なら!)


 差し迫る圧倒的な物量の前で神室はなんと臆することなくその場から動かず、ゆっくりと右のかかとをわずかばかり上げる。


 残り5mといったところで神室はかかとを下ろす。


 こつん


 閉鎖空間に反響する靴の音に作用したかのように突如神室の足元から氷壁が出現する。


 大量の灰は氷壁にすさまじい音を立て激突する。通路を完全にふさぐ氷壁に向かってくる灰は完全に防御シャットアウトされ、氷壁にひびが入ろうともまたすぐに新たな氷が生み出される。


 完全防御。


 神室は汗一つかくことなく質量攻撃を抑え込む。


 攻撃がやむと、神室は防御を解除して驚きを隠せない灰賀を見やる。


 「……そうか、其方(そち)神室冬花(かむろとうか)。セフター(サード)にして氷の過剰適正者か」


 驚く灰賀の言い分を耳に受け入れず、再び得物を構える。


 神室はその優れた容姿のせいもあるが、それに加えて実力が抜きんでているせいもありその名は知れ渡っているので灰賀が自身の名を知っていても神室は特に驚きはしなかった。

 

 もっとも、神室本人はあまり自身が有名になることを好ましくは思っていないが。


 幸い、アステラはここから離れたところに置いているらしく灰賀の両腕は自由になっている。おかげで、神室もアステラを巻き込むという無駄な心配をする必要がなかった。


「どおりでここまで強いわけだ」


「あなたに褒められてもうれしくない。アステラちゃんを返して」


 灰賀の賛美を拒絶し、強い敵意を送る。神室はあまり口が達者じゃないのが自分でもわかっているのであまりしゃべるのが好きではなかった。その相手が敵であればなおさらだ。


「だが、少しばかり注意が足りてなかったな」


 灰賀は頬を醜く吊り上げ、黒く光る眼差しをこちらに送る。神室にはそのまなざしがまるで勝負は決したとでもいうかのように思えた。


「!?」


 瞬間、口元が何かおおわれる。突然のことに神室は状況を理解できず氷をやたらめったら周りに生み出していく。その様子を灰賀は余裕を崩さず、見守りながら氷の射程外へと退避していった。


 苦しみの末、何とか口を覆っていた灰の塊を除去する。


(さっきの攻撃と同時に気づかれないように少量の灰を私の背後に移動させていたのか……)


 状況をなんとか理解するも神室の呼吸はおぼつかなかった。


 それを見逃すはずもなく灰賀は接近する。何とか迎撃しようとも呼吸が整わず、体の自由が利かなかった。


 痛烈な足蹴りが神室の腹部に叩き込まれる。


「っ!」


 鋭い痛みが脳に達するが、何とか追撃に来る灰賀を小粒の氷塊を射出し何とか防ぐ。だが、神室は必死に胸を押さえせき込む。


(体が苦しい……さっき何をされた?)


 思いつくのは先ほど口元を覆った攻撃だろう。そこがこの状況へと導いていた。


 ふと、神室に一つの答えが浮かぶ。これまで灰賀(てき)の神秘は灰の操作か何かだと思っていた。だが、そうではなく…


 顔を上げると灰賀が答えを示す。


 「散り際のさいだ。教えてやる。勘違いしているようだが、久の神秘は『灰』ではない。『()()()』だ。先ほど其方の肺にほこりを入れた。呼吸困難になっているのはそのためだ。」


 灰賀の答えですべてが結びつく。おそらく灰賀はほこりを生み出しているのではなく、操作しているのだろう。ほこりは探さずとも町のいたるところにある。それこそ灰と比べても。


 ほこりを回転させたりすることで、小規模な突風を生み出したりもできるので移動も早いというわけだ。おまけに調達も簡単である。

 

 今更遅い答えに軽く後悔しながらも神室は何とか立ち上がる。だが、それでも呼吸が苦しいことには変わらなかった。


「終わりだ。大人しく死ね」


 崖際に立たされている神室に追い打ちをかけるように灰賀は死刑宣告とともに神室の命を刈り取るべくむかってくる。


 いまだに、神室はまともな呼吸をできておらず冷たい汗が背中に流れる。


 死神の毒から逃れるべく神室は再び鎖を握った。


 


アギト戦もそんなのですが戦闘シーンはまだまだ慣れてないですね。なんでもいいので改善点等を送ってくれると作者のモチベーションも上がるのでとても助かります。よろしければお願いします

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