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27話 暗躍

 それから少し時が流れ、話は翔進家の玄関前へと移る。


 キトノグリウスはアステラから奪った神秘が刻まれているという指輪にかかっている安全機構(セイフティーロック)を解くためにキトノグリウス三名が家の前にいた。


 ひとまず遠目から様子を伺おうとした多薔薇(たばら)(みお)であったが、どことなく様子がおかしいので、家の前へときたというわけだ。


 結論からいうと家の中はもぬけの殻、それどころか何者かに荒らされた後だった。扉も開放状態になっており、廊下には監視カメラと思わしきものの残骸が散らばっていた。


「遅かった……ということですかね?」


 多薔薇は独り言のようにつぶやく。というの彼女と一緒に同伴する男性二人にまともな回答など求めていないからだ。


 灰賀久は鈍く舌打ちをするとそのまま押し黙ってしまい、もう一方の荒々しい風貌の男性も頭が回るタイプではなく常に短絡的な思考をする。


 「んだよ。買い物中かよ?悪運が強えこった」

 

 そんなわけないでしょ、と心の内でつぶやくも言葉にすることがすでにめんどくさい。


 黄広(きおう)アスマ


 電撃系の神秘を保持する戦闘系の能力者。キトノグリウスでは灰賀と同様、荒事がメインで強力な能力者なのは間違いないが、いかんせん短気で頭も鈍い。


 そのことに多薔薇は辟易する。


 状況から言ってももうすでにアステラ(ターゲット)は逃げたということだ。だが、不可解なのはなぜ家の中がここまで荒らされているかということだ。逃げるだけならわざわざ手間をかけてまで家を荒らす必要があるのか。そもそも玄関に鍵すらかけてないこともおかしい。


 ふと多薔薇の頭に一つの可能性が浮かぶ。


(別の誰かが侵入した?けど誰が?)


 アステラのことを知っているのは現状ではキトノグリウスのメンバーとアステラを保護する翔進羅黒くらいであろう。独断で襲撃に向かいそうな灰賀も先ほどから多薔薇たちとともにいる。多薔薇たちより先に行動することは不可能だろう。


 よぎったのはアギトからの忠告。最近、キトノグリウスのメンバーが狩られる事件が多いらしい。先日、アステラを強襲した刃上利宗もそのうちの一人だ。


ただでさえ少人数にもかかわらずそこからさらに人数が減れば当然一人当たりの負担も大きくなる。実際多薔薇も最近駆り出されることが増えてうんざりしているのだ。


 キトノグリウスを狩る人物は黒のフードを頭にかぶった人物だという。なぜキトノグリウスを狙うのか、神秘の内容、正体などすべて不明。ひょっとしたらその人物がキトノグリウスの情報を得るために翔進家を荒らしたのではないかと

 

 思考の海に身を沈めていると本題からずれていることに気づく。ここに来たのはあくまでアステラである。


 灰賀、黄広の二人も明らかにターゲットがいないと知ったからか、集中力が切れて心ここにあらずと言ったようだった。


このまま何も収穫がなければろくなことにはならない。それどころか灰賀久が怒りを我慢できず、暴れだしかねない。


 多薔薇は誰にも気づかれないほど小さくため息をつき、魔力を集中させる。


「神秘開放『偽魂幽生』」


 魔力の開放と同時に、目の前に数多の()()が生成される。多薔薇が何かを言わずとも彼、彼女たちはそこかしこに散らばっていく。つまるところ、人海戦術でアステラ(ターゲット)を探し出そうというわけだ。効率が悪いことは認めるが、多薔薇が出せる偽人間には底がない。数で探せばいずれ見つかるであろう。


 多薔薇は目を閉じ、ゆっくりと神秘の操作に集中していった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 多薔薇さんの苦労が垣間見える話でした。灰にせよ黄にせよ。頭が必要になった瞬間、空気になってしまうというね。すでに荒らされた家を前にしての虚しさと侘しさがとてもよく伝わってきました。なんとも…
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