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23話 データベース



 学校からのアギトの奇襲などなかなか忙しかった一日の翌日、月曜ということで学校はありはしたものの、アステラを放置するわけにもいかず、ひとまず休むことにした。


 ちなみに琴音は中学三年生ではあるが不登校でもあるので常に家にいる。(とはいっても勉強はできるので見逃している。家事はまったくやらない)なので月曜にも関わらず翔進家には子ども全員そろっており、普通の親からしたらお叱り案件だろう。


 琴音は相変わらず昼夜逆転生活を送っていたが、俺とアステラはそういうわけにはいかない。


「じゃ、さっそくデータベースとやらを調べてみようぜ」


「ふぁぃ」

 

 時刻は午前9時。アステラはまだ眠たいのか眼をごしごしとこすっている。


手にはめている指輪に軽く触れる。すると、指輪から空中に様々な情報が書き記されているデータが浮かび上がっていく。

  

 上から順に能力者の情報が記載されており、神秘はもちろん魔力量や身体能力についてまでこまごまと数値化されている。


「これって俺のやつとかもあるのか?」


「はい、もちろんありますよ」


 アステラは右上辺りにある検索欄のような空欄に『翔進羅黒』と入力すると俺のデータが出現する


 翔進羅黒

 神秘『超耐性』:疲労、毒、傷など人間の弱点に対して極めて高い耐性を持つ


魔力  J:4 

俊敏  C:71 

力   B:81 

器用  C:71

耐久  OV:287





 一通り目を通しはしたがこれが評価としてどうなのかよくわからなかった。とりあえず魔力量だけは少ないことは理解できるが。


 

「他の人のも見てみましょうか」


そういうと天城先輩のモノと神室のモノも同時に宙に浮かんでくる。


 『天城愛』

 神秘『超嗅覚』:嗅覚の強化(犬の過剰適正)


 魔力  H:29

 俊敏性 D:61

 力   D:61

 器用  J:7

 耐久  G:35





 

 『神室冬花』

 神秘『天授操氷(てんじゅそうひょう)』:氷の生成、および操作など(氷の過剰適正および能力の含有)


 魔力  A:97

 俊敏性 E:55

 力   C:70

 器用  D:61

 耐久  E:50




「……あんまよくわかんねえな」


 二人のステータスも確認したはいいが、いまいち感覚がつかめない。平均がどのくらいかがいまいちわからないからだ。


「ステータスは0~100まで10刻みにJ~Aと分けられています。一般的な平均が大体G、つまり31~40ぐらいでしょうか。10以下はかなり低い。50付近は結構すごい。70を超えるとめちゃくちゃすごい。90を超える人はほとんどいないですね」

 

 神室の魔力量に目を向ける。97。俺の魔力量の約24倍である。確かにそう考えるとすさまじいものを感じる。


 そう考えると天城先輩もすごいのかもしれない。あまり戦闘タイプではないにもかかわらず、全体的に数値が高い。


 だが、少しだけ疑問に思うことがあった。


「俺の耐久欄のOVってなんなんだ?」」


 アステラの説明では100以上については触れていない。というか俺の耐久性に関しては100どころか200を超えている。


 アステラは俺の問に顔をしかめ、おずおずと口を開く。

 

「OV、OVER,つまり規格外ってことです。羅黒さんの耐久力は例外です。というかはっきり言って変態です。初めて見たときは本当にひきましたよ。」


「変態ってなんだよ。というかなりたくてこんな偏ったステータスになったわけじゃねえよ」


どうやらやっぱり異常らしい。もっとも持久性という他と比べてあまり花がない部分に特化しているのが俺らしくはあるのだが。力や俊敏の方が優れていた方が派手でいいなあと心の中で思い、本題に入る。


 

「で、キトノグリウスについて調べたいんだけど載ってるのか?」


「昨日少しだけ調べてみたんですがそれらしい情報はなかったですね」

 

 アステラは申し訳なさそうに顔をしかめる。

 

「組織名で調べようとしたんだろ。メンバー個人を調べていけばいいんじゃねえか」


「確かにそれがいいかもしれませんね」


  検索欄に『アギト』と入力する。だが、該当なしの文字が浮かぶだけだった。


「あれ?」


「アギトは本名じゃないってことだろ」


「でしたらどうしましょうか?」


「神秘はわかってるからそこから調べられないのか?」


「確かに調べられはしますけど、同系統に能力者も検索に引っかかってしまいますよ」


「あいつは元医者って言ってた。それも条件に入れればかなり絞り込めるだろ。顔もわかってるからそれでいけるんじゃないのか?」


 昨日の戦闘でアギトが使用した武器はメスや輸血パックなど医療器具が多くあった。医者というのもあながちうそではないかもしれない。


「確かにそれなら行けそうです!」


 勢いよく指を走らせ検索対象を絞っていく。そして条件を絞り込んだ先にはある男の情報が示されていた。


「中島誠也……思ったより普通の名前だな」


「そうですね。アギトという名前は自分でつけたのでしょうか?」


「それはわからんけど、もしそうでとしたらちょっと面白いけどな」

 

 アギトという名前を自分で考え名乗ってるとしたら割と中二病だ。それもいい歳した大人が名乗ってるとしたらなおさらだ。


 中島誠也。某国立大学の医学部に現役入学後、とくになんてこともなく大学病院に赴任。単純に医者としての技術も高く、加えて神秘『転移送操(てんいそうそう)』を用いて従来では届かない部分を取り除くなどの活躍もする。


 だがある時、とある患者に対し医療ミスを起こしてし、患者は死亡。法的には問われることはなかったものの解雇されることになる。


ここまではある程度予想の範疇ではあった。というよりむしろアギトが存外真面目に働いていたことに驚いた。解雇後にキトノグリウスに加入するのだろうと思ったのだが――


「解雇後、1年と絶たず自宅で死亡を確認……」


「……」


「キトノグリウスのキの字も出てこなかったぞ」


「あれ~?」


 アステラは顔を傾け、眼をあちらこちらに泳がせる。予想外の展開にアステラは戸惑っている。


 アギトがキトノグリウスに未来でも入ってるものだと思っていたのだが、キトノグリウスについては一切情報がなかった。


 考えられるとしたら……


「アギトの行動が変化しているのか?」


「……」


 うつむいたまま、アステラは口を開かない。アステラ自身もいまいちわかっていないのだろう。


 アステラがいた世界線とは異なりこの世界のアギトこと中島誠也は自殺することはなく、そのままキトノグリウスに加入したということだろうか。


 どちらにしてもキトノグリウスについての情報は一切得られなかった。


「とりあえず、次に行くか」


「……そうですね」


 二人ともしぶしぶといった様子ではあったが、アギトのことはいったんおいて次に灰賀久について調べることにした。


 だが、こちらは驚くほど情報は得られなかった。


『灰賀久、児童養護施設にて死亡。享年10歳』


 ただ、一文だけ。これ以外の情報は一切なし!


「……」


「……なあ、このデータベースほんとに信じていいのか?なんかめちゃくちゃ地雷臭がするんだが」


「な、なんてことをいうんですか⁉私が命を懸けて持ってきたものを!」


「つってもなあ」


 アギトも灰賀もデータベースによれば死んでいることになっているのだ。しかし実際には二人ともぴんぴんしてあろうことかこちらに襲い掛かってきている。これでデータベースを信用しろと言われても無理がある。


 自身のデータベースに難癖をつけられてむっすりと顔を膨らませていたアステラだが何かを思いでしたかのように急に立ち上がり、こちらに目を向ける。

 

「もしかして歴史が変わったんじゃないですか?私が来たことによって」


「へ?」

 

 予想外の言葉に気の抜けた声が出てしまう。そんなことも気にせずにアステラは続けた。

 

「そのままの意味ですよ。私が過去の世界に来たことにより二人の行動に変化が生じたということです。仮に二人に直接会ってないにしても、何らかの影響があってもおかしくはありません」


「けどそれだと、時系列がおかしいだろ。お前がこの時代に来たのは数日前。アギトと灰賀が死ぬのはデータベースに乗ってる情報じゃ今から数年前。ってことは歴史を変えるには少なくともこいつらが死ぬ前の時間にタイムスリップしないとッてことだろ」


「うぅ」


 完全に論破されてアステラはこちらから顔が見えないように下を向く。あからさまにしょんぼりしており若干泣きそうになってる。こいつ結構泣き虫だな……


 どのみちキトノグリウスについては一切情報を得ることはできなかった。


「……いイ!?」


 だが、目の前でそれ以上にとんでもない事態が起こっていた。


「うぅ、私のせいで……」


 泣いていた、アステラが


 その小さな瞳から小粒の涙がほおを伝って床に落ちていく。俺に背中を向けてごまかしているつもりなのだが、全然隠せてない。


 別に全然アステラのこと責めているわけではなかったのだが、どうやら結構メンタルに来ているようだ。


 アステラもまだ子供。あまり精神的に強くなくて当然だ。


 とにかくまずは慰めなくては。このままほおっておくのは色々まずい


「アステラ、そんなに―――」


 瞬間。


「―--!?」

 

 ぞっ、と体が震える。


 心臓にナイフでも突きつけられているかのような恐怖を覚える。


 何者かに見られてる。そう考えたときにはすぐさま窓の外を力の限りにらむ。


 視界の端から端まで


 だが、それらしき人物は見当たらなかった


 気のせい――――――――などでは片づけられないほどの殺気。


 思い出すのは昨日の病院での出来事。帰り際に感じた強烈な視線。


(同じやつなのか?)


 だが、どちらにしろこのままじゃまずい。少なくとも家の場所がばれているということだ




 後手に回ってはまずい。思考が働くよりすぐに行動に移す。


「アステラ。この後、外で遊びにいかないか?」


「ふぇ?」


「お前、タイムスリップしてからろくに休んでなっただろ。ここいらでいったん休息をはさむのも悪くはねえだろ」


 アステラの顔に少しばかり光も差し込むもすぐさま俺の意見に疑問を持つ。


「けど、今外に出るのはまずいんじゃ……………キトノグリウスに襲われかねません」


「けど、あいつらどうせ家にも襲撃に来るだろ。だったら多少危険でも外にいた方がいいと思うぞ」


 先ほどの強烈な視線が何だったにしろ家にいるのはまずい。何者かは知らんが少なくとも家の場はばれてるということだ。だったら、外で隠れていた方がやりやすい。


 アステラを慰めるという目的もあるが


 アステラはこちらに振り向く。先ほどよりは幾分顔から陰りが引いていた。


「…………ほんとにいいんですか?」


「ああ、もちろんだ」


 すぐに首肯する。そうするとアステラは少し顔を赤らめ、もじもじとしながらつぶやく。


「じゃ、じゃあ行きたいです。羅黒さんと一緒に」


 こうして俺とアステラ、よだれを垂らして寝ていた琴音を叩き起こして外へと出かけていくことになった。


 謎の視線の正体はわからぬまま………


ステータスについての補足なのですが、力と俊敏に関しては魔力のよる身体能力向上も含んだものです。神室を例に挙げると、神室の膂力は97となっていますが、本来はもっと弱いです。(多分27とかそんぐらい)しかし、魔力量がぶっちぎりで優れているため身体能力をカバーできてます。


 逆に羅黒は魔力量は少ないですが身体能力がめちゃくちゃ高いです。彼はほとんど魔力で体を強化はしてないで、素の身体能力で戦っています。耐久が高いのは神秘の影響で疲労とケガに耐性があるからです。ちなみに力と俊敏の欄もそれなりに高いのには理由があるのですがそれは別の機会で話すことにします(あんま大層な理由ではないです)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 危険な香りで締めつつ。時系列に作用する作品は理論付けが難しくて大変です。アステラの影響力がどれほどのものか。こちらも考えさせられ、面白かったです。アギトさんは敵役ですが、真面目は真面目そう…
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