10話 春の春花祭 準備
翌日、日曜日ではあったがアステラとともに栄凛高等学校に向かっていた。
栄凛高等学校は能力者が生まれてから創立された高校であり、国から支援されている。国内にも指の数ほどしかない神秘の研究、および発展を目指す高校の中でも栄凛は規模の最も大きい学校ともいえる。生徒の数は1000を超える。
日曜日であったが、学校はかなり人だかりができていた。
アステラから「日曜日なのにこんなに人がいるんですね」という当然の質問が出る。
さすがにいつもこれだけの人込みができるわけではなくこの時期特有の理由がある。
現在は四月の後半に差し掛かろうという時期だが新入生が部活の体験入部等で忙しいというのも一つの理由である。しかし、どちらかというともう一つの理由の方が大きい。
というのも五月の後半には他校との春花祭なるモノが開催されるため準備があるためだ。羅黒が所属する生徒会も当然大忙しである。
「春花祭?」
「春花祭っていうのは簡単にいうと学校間での対決みたいなものだな。普通の運動会みたいにいくつか競技があってそれぞれの競技に順位に応じてポイントが与えられて、最終的に総合得点が高い学校が優勝ってやつだよ。ただし、すべての競技で能力の使用が許可されている」
「本当に運動会みたいですね。とても楽しそうです!」
学校内の熱気に影響されてかアステラもウキウキして周りの様子を熱心に見ている。
「楽しみにしているのはいいけど、今は目の前のことに取り組まなきゃだろ」
「うぅー、確かにその通りですけど」
よほどうらやましいのかアステラは、頬を膨らませていた。
「そこまでへそを曲げんなよ。心配しなくとも春花祭は逃げねえよ。事が済んだら一緒に屋台巡りでもしてやるよ。」
「ほんとですか!絶対ですよ!」
途端にアステラの顔が明るくなった。本当にわかりやすい奴だなと思いつつ、少しほほえましくもあった。『琴音も観戦ぐらいは来ないかさそってみようか』などと考えてるうちに羅黒は目的地である生徒会室の前に着いたことに気づいた。




