双子の愛し方
双子の大陽と月は仲のいい兄弟。
二人は本当にそっくりで両親さえも彼らを間違えた。
「「僕、今日の夕飯はハンバーグがいいな」」
二人は好きな食べ物、好きな玩具、好きな洋服までもみんな同じ。
だから食べ物は二人分頼み、玩具は二つ買って、洋服は二着揃えた。
そんな二人には仲のいい幼馴染みがいる、蒼という男の子。
二人は彼のことも同じように好きになった、だけど彼は二人用意出来ない。
二人は悩み、考え、同時に思いつきました。
そうだ彼を半分こにしてしまおう、二人で変わりばんこに彼をシェアしよう。
「僕は大陽が好きなんだよ、そんなこと出来ない」
「僕と同じように月を好きになってくれないなら、もう蒼とは終わりだね」
「待って!……わかった、言う通りにするから」
大陽に嫌われるのを恐れた蒼はそれを受け入れた。
二人は何もかも同じだったけれど好きなものの愛し方だけは正反対だった。
大陽は好きなものは最後までとっておき、じっくりと味わって食べる。物ならば使わずに飾って眺める。
月は好きなものは真っ先に口に入れ、噛み砕き咀嚼せずに飲み込む。物ならば叩きつけ汚して楽しむ。
蒼は大陽には指一本触れてもらえないのに、月には乱暴に犯された。
そんなことがしばらく続いた、ある月が綺麗な夜。
情事の終わったベットで気怠げにしていた蒼が月に話しかけた。
「月は本当は僕のこと嫌いだよね?そして大陽が好きなものはみんな嫌いなんだ……」
蒼は俯いていた顔を上げて月を見つめた。
「だって月は大陽が好きだから」
「…………」
「大陽が好きなものを壊して汚してボロボロにして、お前が大切にしてるものに価値はないんだと嘲笑う。大陽もそれを見て熱が冷めていく」
「…………」
「大陽に汚いって言われた、君のつけた跡だらけで、もういいやって……捨てられた。月は満足?」
「あいつに体を見せたんだ……」
月は蒼の唇を塞ぎ、深く舌を潜らせ彼の中を味わった。
「全然違う、僕は本当に蒼が好きだよ。だけど蒼は本当に大陽が好きなの?」
「好きに決まってる」
「でも蒼は僕と大陽の見分けついてないでしょ?」
二人分の食べ物、二つの玩具、二着の洋服、二人の双子。
名前というタグが付いていなければ月と大陽を見分けられる人はいない。
蒼が大陽が好きだとしてもいや本当に大陽が好きならばこんな提案は断っているはずだ。
意識下で大陽と月は同じだからとシェアを許した。
だけど月は蒼を大陽とシェアなんてしたくない、好きなものは独り占めしたい。
ならば大陽が好きなものを嫌いになればいい。
「ねぇ蒼、僕らが一年毎に入れ替わっているの気づいてた?」