夢の感染
故郷から帰って、
明日から仕事だと
思って歩いた夜。
雪は降りしきり。
悴む爪先が
冬に噛みつかれ、
慣れない極寒に
凍えて震えて。
走り出せない、
この時にしても、
誰のせいでもない
自分で選んだ一日。
ゆっくりでしか
動けないんだから、
ゆっくり気をつけて
歩いてゆこう。
今は、家にゆこう。
ボケットの中の手は
夢の息を掴んでいる。
夢が息をしている。
どうにかこうにか、
指先に残る感覚。
冬に噛みつかれても、
冬に侵されても。
故郷から帰って、
明日から仕事だと
思って歩いた夜。
雪は降り積もり。
たくさんの人々は、
どこへ行ったのか。
通りから消えた
ざわめきと人影。
話し出せない、
この気持ちにしても、
誰の為でもない
自分で抱えた一生。
人は生まれてきて、
健康であれたら、
産声をあげるだろう。
さほど変わらずに。
それから人は、
色々になってゆく。
少しずつ、また突然に。
とにかく家にゆこう。
誰もが同じように泣き、
夢の微熱に包まれる。
夢は感染している。
故郷に帰ったから。