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フェアルの開拓日記

ユナイトストーリー本編では冒険の描写を中心にしているため、どうしても描ききれなかった部分がたくさんあります。基本的にサブキャラクターに設定された過去の掘り下げをしていくのですが、本編では未登場キャラも出てきます。

この物語はユナイトストーリーと言う作品の外伝もとい、別視点で何が行われていたのかを淡々と書いていく短編集である。一応登場キャラクターの過去回想が中心ではあるが、最後は本編に繋がるようなお話になっている。

まず、舞台となるヒエノ島について。東大陸の西に位置する孤島である。一応、モデルは地球の南アメリカ大陸の東にある島なのだが、位置的には逆になっている。ただ、リチ町、チリに海底洞窟で隣接しているという初期設定があるので今回はこちらでいく。お話の内容的にそう進めたら普通に東大陸に接続するだけだろ、となりかねないためでもある。

そして、なぜこの島が舞台なのかであるが、この島は本編に登場する勇者マタカが産まれてくる子供達が特別な存在であり、勇者の子供達と言うことも併せて人々の好奇の目に触れて何が起きるか分からないので何かあっても守りやすい島を魔王討伐の報酬として選択してもらったためだ。そしてヒエノ島と名付けた。このヒエノとはマタカの家の家名であり、家族が特別な能力を持って産まれてくることが多いことからそう名付けられている。クダイが大工のスキルを持っているのもそのせいだし、このあと登場する工務店のほとんどの人がヒエノ姓の生まれなのだ。

そしてそんな島をマタカは守りとして結界で覆うことにしたわけだ。特定の人間以外の転移魔法を遮断する結界。本編で急病人を運べないので島の人間との認証式で転移できるようにしたのだが。本編で双子は冒険に出るまでは祖父が師範代の道場と家のある島の転移しかしていない。隣町さえ彼らは行ったことがなかったのである。もちろん理由としては彼らが冒険に出るまでは秘密にするためであり、勇者の子供がいることさえ世間には勇者発表まで秘匿されていたのだ。そんな孤島で生まれ育った二人だが、道場で訓練を朝から晩まで必死にやって帰ってくるので狭さや窮屈さを感じたことはあまりなかったらしい。ちなみに道場との距離が遠いため転移装置ワープストーンを使って母フェアルが送り迎えをしている。道場以外の日は学校の勉強をしていた。存在が秘匿されているためフェアルが一人で地球の知識などを少しずつ教えていく。双子が記憶を失った直後は幼児に教えるような基本的な常識も教えていた。もちろん彼らには距離制限の特有のルールがあるため、それを踏まえて教えてもいる。具体的には無断で走ろうとしないなどだ。一応教科書があるため自習もしたりできるので冒険に出る頃にはすでに中学校卒業レベルの学力はあった。ちなみにシエムはフマが何とか学校に通わせていた。フィールドを魔物避け効果のあるバスで素通りしてルブラ王国の学校に通っていた。フィールドは砂漠ではあるが一部の道は冒険者ギルドによって整備されて送迎用バスが出せるようになっているのだ。コンクリートも普通にある世界なので魔法と組み合わせてしまえば砂漠を整備すること自体は難しくない。冒険に出ているので休学扱いになっているが、彼女の活躍はノレドの冤罪を晴らした後辺りから学校の生徒にも知られるようになっていた。

そんな島ではこの物語の主人公とも呼べるフェアルが土地を改良して畑や薬草畑を作っていた。転移でお買い物はできるし、勇者パーティーに所属していた二人なのでお金には全く困っていない。夫のマタカが冒険者ギルドと商業ギルドのギルドマスターなのでフェアルが何もしなくてもさらにお金は入ってくるのだ。

そんな夫婦には子供がもう一人いた。ポールくんだ。双子が記憶を失うきっかけになった暴走事件でマタカは暴走した化け猫を止めるために全身を負傷した。フェアルの優れた回復魔法でなんとか命を取り留めた。全身にケガをした結果、性欲が出てしまい二人が交わった結果産まれた子供がポールである。性欲とは生きるための力でもあり、生命がピンチに陥ればその生存本能は大きく増すため、仕事でご無沙汰気味であった彼女がそれを受け入れたというわけだ。そんな彼女は無職というわけではない。ハーフフェアリーという回復が非常に強くなる特徴と、復活魔法のこの世界でほぼ唯一といっていい使い手なので医者をしている。薬草や畑も基本的に買ったりするのが面倒な時にグロウアップの魔法でさっさと収穫して作ることができるから育てている。ただ、子供がいるのに依頼が来ると島に一人ぼっちにさせてしまうため、基本的に緊急以外はお薬を提供したりするのにとどめている。

ちなみに育てていない薬草由来の薬だったり、ポーションなんかは、、「いつもすみませんね、こんな島に来ていただいて。」「いえいえ、師匠の奥さんのご依頼は断りませんよ。」彼の名前はクウジ。冒険者としてもかなりの腕前で、商人の勉強もしている。そんな彼が忙しい彼女のために買い物に町に出掛けて色々買う手間を省くためにわざわざ島を訪れているのだ。今彼が言った通り彼の師匠は勇者でありフェアルの夫のマタカである。彼の才能を見込んで冒険の途中で直々に育て上げた弟子なのだ。道場で特訓して、魔物図鑑の旅にも途中で合流して旅の最後まで付き従っていた。そんな彼は勇者候補のうちの一人だったのだが、敵の思惑もあり双子が幼くして勇者に選ばれた。そのため結界のせいもあり簡単には彼女は外に出られなくなってしまったため、今はその対策として来てもらっているのだ。

そんな島であまりにも忙しい夫のためほぼワンオペで頑張っているフェアルのもとに転機が訪れたのは夫がフマさんを運んできたときだ。敵組織のメンバーにお腹を刺されて重傷、夫の簡易版の回復魔法では追い付かないので洞窟を通って運んできたのだ。

このときに認証性に結界が変更された。このあとの出来事も考えると正解だったわけだが。で、フマさんはフェアルのおかげで無事回復したものの、事件のあった喫茶店勤務だったため仕事がなくなってしまった。そこで住み込みで働いてもらうことにした。ポールの世話を常にしてくれる人がいるだけでかなり助かるし、長期の不在も可能になったのだ。これが後々色々な事件が起きる彼女にとっては最大の救いだったと言える。こうして島に新しい住民が増えたのだが、、「僕もここに住みたいです」と話す男が現れた。大工でマタカの弟でもあるクダイである。重力魔法で家をほぼ一人で組み立てることができる力を持つ。この男、資材をアイテムボックスに入れて持ち運べてマタカからワープストーンをもらっていてどこにでも行けるので大工としてはかなりのチート能力持ちである。もっとも、彼が所属する大工、いや工務店は親方を始めとしてこの2つの魔法は当然持っているので凄さを理解できていなかったのだが。この世界ではほぼこの工務店が増築、建て替え、新築などを一手に担っており、すごい各地をワープストーンで飛び回っていたらしい。しかし。「あまりにもこなしすぎて僕に依頼がほとんど回ってこなくなったんですよ。」

「で、兄さんからフマさんの家の建築依頼を請け負ったんですけど、ここ狭いけど色々発展させることが可能だろうし、住めるのであればここに住みたいです。」ということで彼もまたここに住むことになった。ワープストーンでいつでも仕事に合流できるので仕事すること自体になんの支障もない。フマさんの家はたった5日で完成することになる。ちなみに彼の家自体はもともと勇者の交遊をふまえたゲストハウス用に用意していたものをそのまま使っている。重力魔法を使えば本来重機や足場が必要な作業でさえ一人でできてしまうのだ。ちなみに彼の母親である武器屋のキブが大工の家系であり、この2つの魔法を代々継承してきたのだ。「作るの早すぎませんか?普通もっと時間がかかるような、、」「うちの親方ならあと1日は短縮してきますよ。」「早すぎて強度とかが不安なんだけど、、」「ご心配には及びません。魔法的にはそこそこですが、物理的には地震などに対してかなり強いですし、火事は火耐性増加持ちの木材を使っているので、、」「凄すぎて脳が話を理解するのを拒否しているわ、、」

というわけでフマさんの家ができた。ちゃんとした作りで一人住まいなのに二階建てだ。キッチン、風呂、リビングなど基本的なものもきっちりある。「本当にありがとうございます。私なんかがこんな住まいに住んでいいんでしょうか?」「いいんですよ。何があるかわかりませんしね。旦那様も帰ってくるかもしれないのでしょう?兄さんから聞きましたよ。」そう言われて彼女は夫との出会いを思い出す。フマは絆の一族の生まれではあるのだが、一族が暮らしている集落出身ではない。一族から離れた女性が産んだ子供だった。で、母親から記憶の一部と魔力を幼少期に封印される。封印を解除するのはその母親の役目で、子供を妊娠したときに母親から封印を解除してもらうのだ。その幼いときに一族の歴史、一族の使命を伝えておくことで解除をしたときに新鮮な記憶として蘇り、確実に一族としての子孫を残せるからだ。

ただ、彼女の場合は特殊だった。母親が流行り病で亡くなってしまったから、記憶を取り戻すことができなくなってしまったのだ。それに紐付けされている魔力の封印もまた解除できなくなった。魔力を封印するのは一族の者が迫害されていたからであり、普通の人として暮らしに溶け込んだほうが楽だから一族の大きな特徴である魔力の大きさを封印するのだ。一族以外の町では魔道具を使って鑑定して判別しては殺すなんて時代もあったらしいので、こうなるのは必然だ。さて話が脱線したので戻すが、そのためにほぼ何も個性のない普通の女性として生きてきた彼女だが、転機が訪れる。リンキとの出会いだ。彼自身も絆の一族の子供であったため、記憶が封印されている女性だと魔力の量と質が一致しないことからすぐに見抜いた。絆の一族は魔力の質、量ともに非常に優れていて、逆にミガク王国民をはじめとした魔法人は質、量ともに中程度しかない。だから一致しないのは記憶を封印していると見抜けるのだ。彼女の身の上を聞いた彼は何とかして記憶を取り戻そうと努力した。そんな彼のひたむきさに惚れ込んで付き合うことになった。絆の一族に会いにいけば解決するのだが、彼はミガクの第2王子で迫害している立場故にできなかった。そんな中、勇者パーティーに入らないか?と誘われたのだ。

彼女に相談して君がいるからできないと言おうとしたとき、彼女はこう言った。「世界を救うための仕事を私を言い訳にしてやらないのはやめてください、魔王を討伐することは多くの命を救います。私だけの問題ではありません」と。そう言われてしまっては彼は断るわけには行かず、パーティーに参加した。ただそのときにいいムードになったので彼らはやることはやっている。それで産まれたのが仲間になるシエムである。これが最初で最後になる、とはこの時二人は思ってもいなかった。彼女は魔王を討伐したあとの仕事も妊娠した身重な身体にもかかわらず送り出した。

それだけ愛情が深かったのだ。しかし、何年経っても戻ってくる気配はない。何をしているのか、と思いながらも我が子と生きるために懸命に働いた。一応、彼が王族であって勇者パーティーのメンバーなので本当は働く必要がない位家にはお金があるのだが、夫に無断で勝手に使うわけにもいかない。心のどこかでもう死んでしまっているんじゃないか?と思ったり忘れられていると思ったりなどネガティブな想像をしながらも帰還を信じているのだ。そして、大切な我が子も勇者パーティーの一員として旅立った。だから、妻や母親としてではなく、一人の女としての想いが募っていく。今は帰還すると思っているが、もし違うのなら、、フマはここで暮らすことになったクダイのことを気にしていた。

でも、ここにいないし、行方不明とは言えすでに夫がいる身分。勝手に浮気をするわけにはいかない。でも、性欲は募り彼への想いも日に日に重なっていく。クダイもまた、似たような想いを抱いていた。既婚とは言え、大人の色香溢れる女盛りの30歳。10歳の娘がいても十分に魅力的に見える4つ上の女性だった。もちろん彼が移住を決めたのは彼女がいたから住もう、などの不純な理由ではない。仕事をしながら開拓できる島というのが彼にとって魅力的だったからだ。本当に家と畑しかこの島にはない。だから自分のある程度好きなようにできることが兄夫婦から許されていたのだ。で、少し逸れたが、彼女に対して既婚者だから手を出すのはまずい、、でも彼女のことを気になっていき、好きになっていく矛盾に悩まされていた。そんな二人を変える出来事が起こる。そう、フーダス帝国、現在は市国でリンキが命と引き換えにシャドーコープスを元に戻す薬を作ったことである。増殖の魔法で増やしていたが、フェアルは原本というか材料の原液は持っていた。これを二人に持ち帰ることにしたのである。というか彼女から見たらお互いが好き同士なのは一目瞭然だった。もう、仕草とかがお互いが好きなのをバレたくない感情がにじみ出ているのだ。こんなもどかしい関係はさっさと終わらせて、くっつかせてあげようとした。原液を人間に変換はもちろんできないけど、メッセージを聞かせる状態ぐらいには変えることができる。彼の肉体と魂が原料だからだ。「あなた達二人に見せたいものがあるの。」「なんですか?」フェアルはアイテムボックスから水瓶を取り出して「物質魔力変換」と唱える。これは魔物が自らの肉体を煙にする魔法だ。すると、中の水瓶から煙が上がって、リンキに似た顔を持った煙になった。「あなたなのですか?」「そうだよ、本当にごめんね。こんな形での再会になってしまって、、」「あなたはもう死んだのですか?」「ああ、もう助からない致命傷を受けたから自分の肉体と魂を使って魔法の材料にしたんだ。」「そうですか、、」「はじめまして、リンキさん。私マタカの弟でクダイと言います。」「クダイさんか、いい人そうだな。妻をよろしくお願いします。」「なぜそんなことを言うのですか?」「さっきも言っただろう?もう僕は死んでしまっているんだ。これだってもう数分もしないうちに消えてしまう。だから君達のためにフェアルが持ってきてくれたんだ。娘と妻を置いて勝手に死んだ奴なんて忘れてきちんと君には幸せになって欲しいんだ。僕はもう向こうでシエムとも会えたから心残りはない。あるとすれば、いつまでも君が僕のことを引きずっていることだけだ。ちゃんと幸せにしてくれる男性が近くにいるんだから、君の気持ちに素直になって欲しい。それだけなんだ。」それだけ言うと煙は消えて元の水に戻った。フマはリンキが話している間涙が止まらなくなり、最後には号泣していた。そんなフマをクダイがしっかりそばにいて抱き締めていた。「だからね、ちゃんと二人には結婚して欲しいの。確かに島に来たときはただの同居人だっただろうけど、今はもうお互いをしっかり想い合っているじゃない。リンキの言う通り素直な気持ちで接するべきよ。」「はい、わかりました。」「必ず彼女を幸せにします。」「その意気はいいね。結婚式は別でやるとして、付き合い始める儀式をして。」

その言葉を受けて頷いた二人はキスをしていた。「さて、お邪魔虫は消えるとしますか。ポールも連れて道場に泊まりかな。」

やはり予想通りの展開が起きたので彼女の判断は正解だったが、それ以前の問題が起きたため道場に寝泊まりすることになる。そう、双子がダンジョンで凍傷を負って重傷になったからだ。ポールはさすがにカップルがいる隣の家に放置するわけには行かないので連れてきた。門下生の女性にポールの世話を頼んで、付きっきりで看病をする。実はフェアルは3日前にミガク王国の官僚のできる限りの復活をするようにお願いされていて、かなり魔力を使っていて疲れていた。あまり遺体の状態が良くないのと復活がしにくくなる影魔法が使われていたので復活できたのは本当にごく僅か。国王夫妻はバラバラだったので不可能だった。一応、シーム王子が島に運ばれているのだが、それはこの後出てくる。

だからだろうか、双子の治療はなかなか進まなかった。寝ていれば魔力全回復、というのはゲームでは当たり前の設定だが彼女はハーフフェアリーでゲームでいうレベルも非常に高いのだ。そんな彼女が寝ただけで全回復できるほど甘くはない。寝ている間周囲の魔力を少しずつ取り入れながら回復していくため一時間の回復量は数値で言うと10あればいいほう。つまり8時間寝ても80しか回復しない。彼女のMPは2000以上もあるため、雀の涙しか回復しない。マナポーションは携帯しているがそんなめったに使える代物ではないほど高い。普通のポーションの数倍はする。

もちろんアイテムボックスに山ほどストックしてあるが、MPが空にでもならない限りもったいないのは十分承知しているためMPが少なくて疲れているのだ。なんとか半日で凍傷を治すことに成功して疲れて眠ってしまうフェアル。その間に起きていた誘拐事件は無事に解決し、リファ王女がフェアルの許可なく住むことが決定していた。さらにシーム王子とリファ王女がその日に会っただけで即婚約を決めてしまうあまりのスピードの速さに夫から色々聞いたフェアルは仰天した。しかし、ここからが彼女にとって地獄の始まりだった。なんとマタカやピレンクから「シルヴァとドラゴが誘拐事件の犯人全員殺しちゃったから復活させてくれ」「アジトでユニコーンが殺した犯人(ry」「ポイズンミストでほぼ皆殺しにした(ry」と復活案件が3件も立て続けにしたのだ。三番目にもなると「ふざけてるの?私の身体は一つしかないのよ!」「本当にごめん、お願いするよ。」「しょうがないわね、、」とマナポーションをがぶ飲みしながらなんとか依頼をこなした。当然組織の組員を毒でほぼ皆殺しにしたマキにはきつい言葉で叱ることになったのだった。本編の発言の責任をとってもらう発言が出て、その日の夜。「さすがに疲れたんだから妻としてやることをやって欲しいですよ。」「そうだな、本当にすまなかったな。だいぶ尻拭いをしてもらったし、今日は激しく行こう。」ホテルで思う存分愛し合うことになった。本編でもさらっと最後に出てきたが、ほぼ現代人が文明を再構築したため、現代のものはほとんどこの異世界に存在するのだ。ない技術と言えば携帯電話とかぐらいだがこの魔法世界で代わりになる技術があるので問題がないからである。魔法世界なのに魔法が使えない人がほとんどのため、代わりに産業革命やら技術革新やらが一気に転移してきた軍人によって起こったのだ。軍人は最先端技術を研究したり兵器転用を研究する部門もあるため、技術に関してはかなり詳しいからだ。もちろん、人並み以上の体力もある。異世界人が知らなかったものを作ることはできたのだが、彼らが対抗できなかったのが魔物である。武器が転移についてきたわけではなかったため、ほぼ一から銃やクロスボウなどを作る必要があった。魔物が蔓延るダンジョンからは素材集めができないため、魔物を倒せる冒険者に素材を取ってきてもらうことで始めの材料を作れてそこからは色々とできるようになった。武器で反撃ができるからだ。現実世界の軍人で剣術を習っている人間はほとんどいない。もちろん剣道ならあるかもしれないが、武器として使うには時代遅れな兵器である剣をわざわざ使わない。本編では剣はドラゴンや硬い敵を倒すために使って、銃は雑魚殲滅と役割が別れているが、彼らは専ら銃で倒すことが基本なのだ。クロスボウは軍人達が使うのではなく、銃の扱いに慣れていない異世界人用に作った。じゃあ、なぜ道場では剣術メインで銃の使い方を教えないのか。異世界ものでもチート兵器として登場するのにもかかわらず、教えないのにはちゃんと理由がある。それはかなり高価な代物だから。金属の銃本体と銃弾を買って常に弾切れしないようにする必要がある。でも金属の取れる鉱山はだいたいがダンジョンで冒険者などの助けが必要。剣も消耗品ではあるが銃と違って単独で攻撃できるし、修理する店もある。一方、銃は一度壊れたらほぼ直せないのだ。オリジナルの軍人が亡くなっているため、作る技術は継承しているのだが、直すくらいなら新しいのを作ったほうが早いとろくに教えなかったことが仇となった。そのため作るのも高価、直すこともできないとなると使う人が極端に限られてしまうのだ。そんな武器をメインで教えるよりも人口の多い剣術を教えたほうが早いのだ。その点、ほぼ直す必要のないモンスター武器の銃は性能が非常に良く、弾だけ買えばいいから安上がりで済む。一応、本編でも銃は出てきたが必要な弾を除いて全部軍隊に渡している。話がかなり逸れてしまったが戻すと現代技術が色々入っている世界であると言う説明をホテルがある、という世界観を説明するために行った。ヒエノ島に話は戻る。


シーム王子がヒエノ島に運ばれたとき、彼は過去の悪夢を見続けていた。「あいつより魔法が使えるように必ずなるんだぞ!あいつに負け続けるなんて王家の恥だからな!」それは父親であり、王様だったジーマの夢だった。本編でも出てきたが、王は弟であり絆の一族の血を引き継ぐリンキのことが大嫌いだった。絆の一族を迫害し、フーダス帝国を亡きものにしたジーマはただ一人の息子であるシームにさえ当たりがきつかった。その妻である王妃も同調して息子のシームに厳しく教育をしていた。そのおかげで後年官僚として色々活躍していく下地になるのだが、どんなに学校で優れた成績を出してもリンキと言うあまりにも優秀な比較対象がいたために誉められることはなかった。ゆえに両親からの愛をほぼ受けずに育ってきたのだ。一応王妃はまだ愛情をもって接していたとも捉えることができるのだが、王様からは一切の愛情を受けずに育ったことは間違いない。ジーマは誰一人として信用していなかった。父親が勝手に女性を作って王妃をないがしろにしたことはジーマにとって屈辱だった。リンキしか公式には王との間の子供はいない、とされているがそんなことはなく王妃をほったらかしにして別に3人もその女性に産ませていたのである。

これが絆の一族大嫌い、絆の一族の血を引き継ぐリンキ大嫌いになった背景であり、父王へのコンプレックスが息子の子育てに大きく影を落としていた。そんな日々受けてきた叱責が彼を悪夢という形で苦しめていた。しかも、父と母が目の前で惨殺される光景もセットである。逃げ延びたがそのときに影の魔物に追い付かれてシームは左腕、左足を失った。命を奪われると思ったときに駆けつけたのが主人公達であり、避難させるためにフェアルの住むこの島に転移させられた。そして悪夢を三日間も見続けたのだ。フェアルの魔法で少しずつ回復していき、目覚めたときに状況の説明を受けた。シエムという女の子が女王になること、しばらくの間自分が生存していたことを隠蔽すると言うことを。そしてちゃんと自分のために生きることをシームが決断する、というのが本編の流れである。そして、目覚めて数時間でリファ王女がこの島にやってきたのだ。彼女は義足、義手を着けたシームが婚約者候補でもおかしくないのに死亡扱いを受けてこんな辺鄙な島で生活していることに興味を持ったので、即婚約を決めたのだ。

そして、本編ではカットされた深夜。本番は止められているため当然起きない。「本当に婚約したんだよな!?展開早すぎるけど。」「そうですよ、あなた。せっかく夫婦になるんですから、過去のあなたが知りたいですわ。」で、シームは上記のお話をする。「ちゃんとご両親からの愛情を受けてこなかったんですね。私の両親はその辺はちゃんとしていましたね。」リファ王女の両親、ラフス国王夫妻は非常に仲睦まじい夫妻として有名だった。4人の子供達がいてリファ王女はその末っ子。両親からの愛情をしっかり受けた彼女はまっすぐ人を見て、判断することができる素質を持っていた。その直感でシームと婚約したのだ。この話とは関係ないが、ピレンクの両親は評判になるほどではないが普通に仲の良い夫妻であり、未来の影使いであるピレンクとメリスに王族としての教育と影使いとしての教育両方を受けさせていた。

話を戻して、二人の会話は続く。「ところでリファの国のラフス王国って何があるんだ?」「そうですね、牧場なんかが有名でしょうか。普通の牛や羊、山羊だけでなく、魔物である各種シープ、ホース、ゴート、モウをテイムしていて色々なお肉や乳製品を味わうことができます。」「へぇ、婿入りするから聞いてみたけど面白そうだな。一度視察に行ってみたいな。」「私もそういうところは実は口だけで実際行ったわけではないので、色々な味を堪能したいですね。」「あとは何がある?」「そうですね、あ、ワインの有名な名産地ですね。ぶどう畑が広がる光景は一度あなたに見せたいですね。」「そうだな、行ってみたい。」「あと、実は上にあるヒューテック島は我が国の領土なので海の化け物を倒したら海上を行き来できるようにしたいんですよね。あそこはダンジョンこそあるけどおそらく無人島なので。」実際にはファイアードラゴン達が暮らしていて無人島ではないが火山の奥地に住んでいる彼らはドラゴン故にいないと考えられてきているのだから当然だ。「じゃあ、冒険者に頼んでみるか?」「そうですね。冒険者かあるいは私を助けてくれた勇者様に頼みたいと思います。」「ああ、彼らには俺も助けられたな。いいと思うぞ。」実際クラーケンは6人に二回倒されたことで撤退して場所を変えたので、彼らの言うことはいつの間にか達成されていたのだが。「なぁ、俺達話していて思うけどいいカップルになれると思わないか?」「私は最初からそう思ってましたよ、直感で。本当に良かったですよ、生殖機能が失われてなくて」「まさか」「あなたとの子供、沢山欲しいですから。今はしませんが、正式に結婚したら覚悟してくださいね!?」「お、おう、、」後年、兄が国王になった彼女は恃中になった。リファの夫婦の間には沢山の子供がいたこともあり、豊富な経験から女性に対してのアプローチをアドバイスすることになる。「妹からこんなの受けるなんて恥ずかしすぎる、、」と王様になった兄は困惑しっぱなしだった。話を戻して、二人は話が切れて眠くなったのでようやく寝たのであった。そんな二人は今はゲストハウスで寝泊まりしている。フマとクダイが結婚するので当初のフマの家は二人の家になったからだ。シームが運ばれた時点から作り出しているが、二人になったことで計画を変更せざるを得なくなった。王族が快適に暮らすにはもう少し広いほうが良い、と考えたからだ。

さて、それには敷地がもう少し必要なんだがとクダイが悩んでいると双子が転移で帰ってきた。使わないエレメントとして土、木、水のエレメントを置いていった。冒険にもう必要ないからという理由で。そこでシームが放った魔法で東に土地が大きく広がったのである。ここから土地の拡大、作物生産、水の確保だったりと3つのエレメントが大活躍することになる。そもそもエレメントは何か、というと試練のダンジョンボスが確定でドロップするアイテムであり、その属性魔法の適正がなくても魔法が使えるようになるアイテムだ。威力も通常魔法とは桁違いであり、だからこそ6人が集めているのだ。魔法だけではない特別な効果もあるのだが、それはここでは関係ないため後程本編で解説する。

コンクリートを用意して、ただ土魔法を撃っただけのところを固めていく。砂が堆積しただけの土地に家を建てたりはできない。

結界を張れば塩害も防げるので、家に塩害予防を新たに施す必要はない。水のエレメントを使って堆積した土に水を浸透させていく。海水では先ほど話した塩害が問題になるからだ。地下の水脈を作ることが目的であり、ただ水を通しただけではもちろん水脈はできないので、少しずつ浸透させていく。かん養と言うのだが

異世界においても水循環が行われているのは同じだ。それを水魔法を使って繋げるのだ。これによって拡張した領域で井戸、もとい水道を作ることができた。さらに木属性魔法を使って植物を作ることで養分を作り出すことに成功した。普通に堆積しただけの大地では木の種は育つ代わりに畑などは当然作ることができない。それをグロウアップで一気に成長させて枯らすことで落ち葉と腐葉土を作る。これは何も畑作りの話だけではない。これをすることによって保水性がアップするので先ほどの水脈云々の話にもつながることなのだ。

で、フェアルはなぜこの計画を進めたと言うと、「地球の知識によるとこの先にニュージーランドがあるはず。」という理由からのようだ。冒頭の島を東に反転させてまっすぐ進めば緯度や経度は若干ずれていてもたどり着くと睨んだのだ。飛べばいいだろとか船で行けばいいだろとか真っ先に反論が出るだろう。そう簡単には行かないのが周りの海の環境だ。この島の周りの海は魔境の海と畏れられている。結界で覆われた島が海のあちこちにあるとされ、ほぼ未開拓な部分が多い。それだけではなく島が見えるくらいの低空飛行したり、船が通りかかれば巨大な海の魔物に飲み込まれてしまうと専らの噂だ。それだけではなく実際に大きさこそ小さいものの普通の海にいない狂暴な魔物が普通にいる。実際にこの海を通って行方不明になった人は後をたたない。実際にクラーケンレベル、いやそれ以上の大きさの化け物を見たという人もいて、機嫌を損ねたら即食べられてしまうのだという。そんな海域にある島で何も考えなしに飛んだり船を出すことは無謀なのだ。結界の島で領域を拡大すると自動的に結界も伸びる仕組みになっている。これは陸地の部分に対して結界が適応されるためだ。ヒエノ島はもともと本編に出てきた魔族を封印するような魔力が使えない島だったのをマタカとフェアルの二人が魔法は普通に使える結界に改良したのだ。重力魔法や土魔法などが普通に使えるのもそのためだ。結界には魔族とかの侵入者はもちろん、魔物なども入ってこれないので陸路で行くほうが危険が少ないので安全なのだ。「未開拓の土地を調べたいのはパーティーにいたときからなの。いつかやりたいとは思っていたけど、そういう適正がなかったのと時間がなくてあきらめていたのよね。でもあの子達はいいものを持ってきてくれた。発見すればいずれ子供達も行くでしょうし、先にたどり着いておきたいのよね。」と強気だ。

そもそも大陸を冒険していたはずのフェアルがなぜこれらのエレメントを持っていないのかは本編で分かることになる。

道を作りつつ、居住用に横にも土地を拡大して、その道や拡大した土地をコンクリートや水魔法、木魔法で整える。そんな調子で5日間ほど道を作る作業をクダイとシーム王子と協力して行う。

ちなみに開拓に関しては森での出来事が終わった後に行っている。土地を作る作業はシームだけでできるけど、方角やどう土地を拡張して島を大きくするかは島の持ち主の彼女の判断が必要だからである。そして、その5日後に彼女達はとんでもない発見をしてしまうのだ。「この先にダンジョン特有の魔力反応を感じるわ。海底ダンジョンがあるようね。」なんと道を作っていった先でダンジョンを発見したのである。道は彼女の要望に東に進んでいるのだが、発見したのはその南にあるダンジョンだった。急いで冒険者ギルドマスターである夫に報告する。「大発見じゃないか!そこまで案内をお願いできるか?」「もちろんよ。」こうして彼女は夫をまずダンジョンの入り口のある近辺まで道を伸ばしてここにダンジョンがあるということを確認させた。「確かにダンジョン特有の魔力反応がある。一番強くなっているここの底にダンジョンはある。」「どうするの?」「俺達には過去にポセイドンの神殿に行くときに仲間にしたあいつがいるだろ?そいつは確か人魚、いやセイレーンだったな。」セイレーンは人魚と同一視されることがあるが、半人半鳥も存在する。その仲間は海と陸両方で生きるため、人魚と鳥人を使い分けることをしていたのだ。今は旅を終えてテイムは確かにしていないが、かつての仲間であれば召喚等に応じる場合がある。「とりあえず、何事もやってみることから始めよう。」とマタカが召喚魔法を使う。スチームボックスから逃がすときに絆として魔力の一部を貰っていたため応じれば呼び出すことができる。「ん?何か用かな!?」と呼び出されたセイレーン。名前をマードと言う。「海底ダンジョンが発見されたから、お前の力を借りたい。」「いいね、ここ最近退屈続きで身体が鈍って来ててね。とりあえずこのままだと潜れないからこの先だけ結界解除してくれないか?」「もちろんだ。」マタカが結界を解除してマードは潜る。沢山の魔物が一気に彼女に向かって押し寄せる。肉が肉食の魔物達に飛び込んできたらそりゃこうなる。魔物同士で食べるよりも肉、つまり自分達よりも魔力が少ない個体から優先的に狙うのだ。同士だと食べられるリスクが跳ね上がるためあまりやらない。しかし、取り囲んでいたとしても冷静に全てかわす。そもそも魔物は数がいようが一体ずつであり、連携などまるで考えていないのだ。彼女のスピードが速すぎるため、敵の塊の空白になる部分を正確についてダンジョンに到着した。彼女は託されたワープストーンの石碑を巨大化してダンジョン入り口に設置する。ミニガーディアンのテイムは便利なことをマタカも双子から知ることになったからである。「置いてきたよ。ダンジョンにヤバい奴がいた。爆弾ウニだ。」爆弾ウニは爆弾岩の完全上位互換の魔物だ。遠距離で仕留めればOKという爆発岩討伐のセオリーがほぼ通用しない。魔法がほとんど効かないのだ。後述する爆発エネルギーを蓄えているから、という説が濃厚だ。銃で倒すのが基本になる相手だ。剣などの近接系で倒そうものなら大爆発を起こす。

「それはヤバいな。うちの子供達ならなんとかなる、かもしれないが他の冒険者は絶対入れちゃダメなダンジョンだな。」「ああ、そうだね。さすがは魔境の海と畏れられる海域のダンジョンだよ、魔物の強さが今まで入ってきたどのダンジョンよりも高いんだよ。放たれる魔力が他とは比べ物にならないレベルで強いんだ。」というわけで発見こそされたものの、上級冒険者以外の立ち入りが禁止された上級ダンジョンにその場で認定された。「ご苦労様。もう帰っていいぞ。ちゃんと今回の報酬は弾んでおくよ。危険手当てとしてな。」「ええ、本当に危険だったんだからそれぐらいして貰わないと困るよ。」「まぁな。子供達は元気か?」「ええ、わんぱくなのもいるから大変よ。」マードは結婚していて人魚の集落で家族とともに暮らしている。マタカが言っているのは2人だが、現在の彼女には6人も子供がいる。そのうちの一人、長女が6人と関わることになるメイリである。メイリはマードからポセイドンの神殿に勇者と共に討伐に協力したこと、ネプチューンの神殿にも冒険に行ったことを聞かされており、いつか自分も勇者の力になりたい、と考えていたのだ。それが本編での行動につながってくるのだ。ちなみにネプチューンの神殿は天使の試練の内の一つで本編ではこのあと登場する。


さて、ここからは勇者達が魔王の息子を討伐した時間まで話は一気に進む。ゴタゴタでフェアルはそれどころではなかったからだ。まぁ島にいた2組のカップルは相も変わらずイチャイチャしていたのだが。そのカップルの一つであるリファとシームが帰国することになった。王子と王女なのでこんなところにいるほうが本来はおかしいのだ。だが。「その家は引き続き私達が使います。」とリファが発言する。「なぜです!?」「ここは出会いの場所です。それに、より発展したここを定期的に見に来たいのです。ここは私達夫婦の別荘にします。」というわけで別荘として残すことに。そんな中、一組の夫婦と子供達がこの島にやってきた。「ロキです。皆さん家族共々よろしくお願いいたします。」

そう、マタカとユナイトをし、双子のもう一人の父親とも呼べる存在、ロードキャットのロキである。森での出来事の後、ロキが実はマタカに相談していたのだ。「家が子供達で狭いのですけれど、どこかいい場所を知らないでしょうか?」と。マーリセ国はどんな種族でも受け入れる、という国是はあるけれど彼らが子供を連れて行くには遠すぎる。転移がポンポン使えるわけではないし、森での出来事もロキが召喚されただけでそんなすぐに移動できる距離ではない。マーリセ国内であればバスや電車も通っているが、ルーペ山脈のせいもあって開拓が進んでおらずルブラ王国との間に便利な公共交通機関はない。マタカの姉セトロムも住んでいるマーリセ国から歩いて母であるキブにスチームボックスを売りに行くぐらいなのだから。ただし、フィールドにいる間は彼女はテイムしているグレイウルフに乗って進んでいるのでそこまで時間をかけているわけではない。フィールドがあってワープストーンもそこまでないとなると、マーリセ国は遠い。そのため彼らが選択したのは絶賛開拓中のこの島。結界の主であるマタカが了承したことで結界にフリーパスで入れるようになった。いくら力が弱い、と言ってもロキだって魔物のはしくれではある。バットごときに遅れをとるほど弱くない。なんなら子供達も相手して猫パンチで倒している。ユナイト状態で産まれたユナとトーイは猫耳としっぽくらいしか獣人族の特徴はないが、彼らの子供4人は違う。ロキは擬人化したところでバリバリの猫の魔物だ。それが人間の女性と関係を持って子供を作ったとしてもマタカとは違う。双子の化け猫モードのときとほぼ変わらない姿になる。

つまり、体毛もバッチリ生えて、手足に肉球もあり、爪も鋭い。猫のひげも生えている。顔や体格は人間のものだが、それ以外はほぼ猫だ。双子は転生特典として力が強かったが、この4人は魔物の血が濃いため普通に強い。「本当にあなたの子供達なのよね!?非力なあなたの子供なのよね?」と妻のネントが聞いてくる。「ああ、間違いなく僕達の子供達だよ。僕は確かに普段は非力だけど本来はこの姿だからね。」と変身を解きながら話す。その姿は普通に猫の化け物である。別にネントは正体を知らないわけではないし、この姿を見たことは何回もある。でも、今の変身を解いた瞬間を見たとき少し怖くなった。私は本当に化け物の子供を産んだのだと。彼女が言うように擬人化した彼は本当に非力な状態だ。重い荷物をろくに持てないし、力仕事もほとんどできない。魔力を変身にかなり持っていかれているせいもあるが、人間の女性を妻にしている以上人間として生活しなければいけないので、商人をして生計を立てている。ただ先ほども言った通りの状態なので重い荷物はすべてネントが運んだりしている。

彼女がロキと結婚したのは本編で少しだけ触れられているが、マタカの強烈な追っかけだったからである。一度事件が起きて彼女は絶体絶命に追い込まれたところをマタカに救われた。命を救われて惚れる、というのはベタ過ぎる恋愛感情ではあるが、そのとき本来のパートナーであるフェアルは事件の収束のために回復魔法とかを使って人々を治療していたのである。それで独身だと思い込んだ彼女は彼に対しての猛アプローチをしていくのだ。当然彼は断る。いくら異世界に転生しようとマタカにはフェアルという前世からの縁のある女性しか愛していないのだ。ハーレムを築こうなんていう意志は微塵もない。ハーレム自体はこの異世界でも一般人であっても普通に認められている。現に魔王にはマキのお母さんを含む3人の妻がいる。ただ妻を平等に愛することと、きちんと妻とその子供達を養う義務がある。マタカにはそんな気ははじめからないのだ。で、断られ続けようがいつか報われると信じて旅に勝手についていくネント。時には危険な目にあってまたマタカ達に助けられて、もうついてこないでと言われるもそんなのは逆効果であり、さらに恋は燃え上がっていきついていったのだった。魔王国にはさすがに国境で止められたものの、帰ってくることを信じて隣のラフス王国で待っていた。そんな折、ラフス王国にマタカは戻ってきた。迎えに行くとなぜかこう言われた。「パートナーと別れて君と付き合うことにするよ」と。当然喜びの感情が爆発するが、今まで断固として断ってきた彼がどうして突然こんなことを言ったのかということを心の奥底では感じていた。でこの正体こそが擬人化したロキである。ロキはスチームボックスにいた間に二人のやり取りを聞いていたのである。本来はそんな芸当はできないのだが、耳のいいロードキャットならではだった。ただ、この時点では言葉はしゃべれない。しかし、奴を倒すための対策としてロキがユナイト役として選ばれて見事奴を倒すことができた。で、夜もユナイトしたままフェアルと交わったことで一定時間以上ユナイトし続けたことによりお互いに遺伝子が入り込んだのだ。本来は勝手に解けるはずなのにマタカが戦闘によって半ば溢れでる性欲によって暴走状態で夜に突入したことで条件を満たした。ただこのままだとマタカに飲み込まれてしまうので二人の様子を見て頃合いを図って身体から抜け出した。そのことが彼を、擬人化しかもマタカそっくり、に変身させネントをこれ以上ストーカーさせない、という強い思いになったからこその行動だった。ユナイト中は意志や考えなども読み取ることができるからである。だから、マタカの行動や思考を真似て接することもできるのだ。そんなことを知るよしもないネントはロキを連れて色々と観光しながら東大陸に戻った。その道中のホテルで彼女としてしまいロキは徐々に罪悪感に苛まれていく。彼女の故郷リチ町まで戻ったときには出発から2か月以上も経ち、すでに彼女は妊娠していた。もう黙っていてもバレるだろうと思っていた。なぜなら魔物の自分が交わった子供である以上、人間の姿にはならないと踏んでいたからである。家に戻った彼は変身を解いて彼女に本来の姿を見せる。「これが本来の僕だ。騙していてすまなかった。そのお腹の子供もおそらく化け猫の子になるだろう。」「偽物だとバレていないと思ったら大間違いですよ。マタカ様があんな非力なわけないじゃないですか。ただ猫の魔物が化けているとは思いませんでしたが。」彼女にはすでに別人だとバレていたようだ。ただ、化け猫だとは知らなかったようだ。一応マタカっぽく見せるために装備とかは一緒にしていたのだが、魔物を倒すのに時間がかかったりして怪しいと思っているような表情は向けていた。「でも、変身までして私の望みを叶えてくれて、なおかつ必死に私を守ろうとする姿を見ていたらもうあなたが偽物とか関係なく好きになっていたんです。心のどこかで偽物、別人と確信しながらも旅を続けたのはそのためです。そもそもあの方に惚れた動機が助けられたことなら、何度も守ってくれたあなたに上書きされても不思議ではありません。」「そうか、でも僕は君のもとをさ、、」「なんで。お腹にあなたの子供がいるんだからちゃんと責任取って幸せにしてよ!たとえあなたが魔物だろうと好きになったから一緒に寝たの。だから責任きちんと取ってね。」「わ、分かった。」こうして二人は結婚して4人の女の子が産まれた。子供達はネロ、コロ、キサ、テトと名付けられた。ただ、化け猫なのがわかっていたので二人だけで出産した。赤ん坊時代からすでに毛むくじゃらで猫にしか見えず、人間の赤ちゃんのオギャアではなくニャアニャアとしか泣かないため周囲の人達は子猫を飼っているのかと思っていた。しかし赤ちゃん時代を越えるとさすがに人間らしくなり人前に出すのが難しくなる。子猫で騙すのも限界がある。元気な娘達ゆえに狭い家が破壊されまくって修繕するということを何回か繰り返した。さすがに近所の人には建て替えるときに娘の正体は知られてしまったが、彼らは何も言わなかった。なんとなくではあるが子猫ではないとすでに気付いていたからである。だからと言って危害を加えるというわけではない、というのが理由だった。家は破壊しているから危害を加えてもおかしくなさそうではあるが。そんなことを繰り返していてさすがに引っ越したい、となったわけだ。ちなみにマタカは勝手に抜け出してそんな行為をしていたロキに「俺のことを想ってくれたはいいが手を出して妊娠させるのはやりすぎだ。魔物だろうとちゃんと責任を取るのは当然だろ」と注意していた。ネントが自分に粘着しなくなったことだけは評価しているようだが。で、話は洞窟の彼女の話にまで戻る。人間離れした力を娘達が持っていたのと普段は非力過ぎる彼がやっと頼もしく見えたことで、本当に化け猫を出産したと痛感したのだった。旅の間人間形態でずっと守ってきてもらっていたのに都合が良すぎではあるのだが。バットは親子5人で協力して倒した。そして、ヒエノ島に到着した場面にまで戻るのである。すでにクダイが移住の話を聞いていたので家は準備済みだ。ある程度移住しても大丈夫なように拡張した領域にすでに何軒か家を建設中であるが、マタカの知り合いは数多くいるが移住まで考える知り合いはそこまで多くないだろう。ロキの希望を聞いていたからかクダイが作ったのは豪邸とも思える広さの家だった。ちなみに商人の仕事はマタカからワープストーンをもらって夫婦二人でこれからも継続して行うようだ。そもそも辺境の地でどうやって仕入れとかを行っていたかと言うと商人にはワープボックスというアイテムが使用できるので、生産地から商品を送ってもらい購入、からの販売が可能になるのだ。ワープボックスがあるなら転移使えるだろ、となるがこのワープボックスは魔力のある物体は運べない仕様なので魔物の素材とか、生き物は運べない仕様なのだ。用途を絞ることで輸送を簡単にしているためである。あとワープボックスがあるなら消費者はそっちで(ryと言うツッコミも想定されるが、このアイテムは昔のミガク王国で限定で作られた物で今ではほぼ作ることができない技術を使っている。昔魔力量が沢山ありユナイトできた時代にワープアイテム系は沢山作られたのだ。もちろん戦争で失われたりしたり、一国だけでしか作っていなかったこともあり用途限定で配っているため消費者が簡単に手に入れられるアイテムではないのだ。ということで話がだいぶ逸れたが商人の仕事を継続するということだ。ただ問題はこの夫婦の娘達に教える場所がないこと。マーリセ国には様々な種族がいるためそちらに住めば学校に通えるかもしれないが、移住しなければならない。転移問題を解決すれば良かったのでは?と思いたいかもしれないが、それは違う。人とは違う種族はいるが獣人族は本当にわずかしか存在しないので、竜人や魔族とはレベルが違う扱いを受ける。学校はもちろん、そんな化け物の親ということであれば扱いは平等にすべきの国是であってもどうなるか想像がつかない。

だからこそ姿で偏見をしないこの島の人達を頼ってここまで来たのだ。一旦この島を離れた二人もこの夫婦のいきさつはきちんと理解している。勇者達も魔物を倒すのは襲ってくる個体だけにすると決めている。魔物にも生活があるわけで、それをいたずらに殺すのはやめている。ダンジョンの敵魔物は容赦なく襲ってくるし殺す気しかないので倒さざるを得ないが、[魔力に変わって逃げて魔物は何度も復活するのもある]、フィールドの魔物は普通に生活しているし復活もしないので生き物と基本的には同じだ。フィールドでも煙に変わる魔物は復活するが、そうでない魔物は生き物と同じ。ちなみにこちらの強さが一定以上になると襲わなくなる。溢れる魔力量、オーラが強者のそれになるためだ。なぜこの一見関係ない話をしたかと言うとロキが魔物だけど友好的だから殺したりとか傷付けようなんて話をすると話せる魔物だからだろ、という議論になりかねないからである。実際ポーサやミニ、捕まえた魔物に対してはちゃんとお世話をしている。ポーサとラミア以外は人語は話せないがマキだけは魔物の意志を話すことができるのでこれで連携を取ったりしている。だからこそ攻撃しないで、殺さないで、の意志も読み取れるのでなるべく放置している。もちろん殺そうと嘘をついている場合もあるが言葉ではなく意志なので嘘はほぼない。さて、またもや話が脱線したがロキの子供達の教育についてだ。フェアルが経験もあるため合間を縫って当面は教えていくことが決まった。しかし、学校に通う年齢でかつ冒険もしていないのでどうするのか。冒険者になるのであればいいのかもしれないが、それ以外にも沢山仕事はあるので彼女達の意志を聞いてみると、全員が「冒険者になりたい!」との話だった。やっぱり父親の存在が娘達の目標になっているようだ。マタカを呼んで協議する。「どうする!?」「なりたいのであればある程度のステータスを持っていないとこの年齢だと登録できないんだが、、」マタカが鑑定を使う。「ロキの娘達ってだけはあるな。父親と違ってちゃんと力も強いし」「僕そんなに非力ですか?」「魔物でも力は最弱の部類だしなぁ、、」ステータス的には父親同様、圧倒的に敏捷性を示す数値が高い。それでいてバットを猫パンチで倒せるくらいの力は全員持っている。ちなみに人間の拳ではバットすら倒せないので基本的には武器がないと戦えない。「とりあえず、父さんの道場に入れてみるか。それで素質を計ってみよう。ステータス的にはなっても問題なさそうだから武器の訓練をしたら化けるかもしれない。」というわけで「あの双子のもう一人の父親、その子供達か。面白いじゃないか。やってみるだけただだし教育問題もこっちにいる間に教えられることはやっておくから、連れてきてくれ。」というわけで、ネロ、コロ、キサ、テトの4人はワープストーンで連れてこられた。「すごいね、こんなところで勇者の人達って修行してたんだ!」と感動している。実際に勇者が修行していた道場というだけでテンションが上がるのはおかしくないだろう。「お前達がその子供達かな?はじめまして、わしはジョウド。この道場の師範代じゃ。お前達の言う通り、ここはあの双子勇者やうちの息子も使ってきた道場じゃ。とりあえず剣術から訓練しようかの。」というわけで始める。数日前に入ったメイリもまた剣術の特訓をしていた。「新入りさんですか?でもあの双子勇者さんと姿が似ているような、、」「ああ、こいつらはちょっと事情こそ違うがあいつらのいとこ達だ。そりぁ似てくるだろ?」「そうですね。メイリです。よろしくお願いします。」「「よろしくお願いします。」」と元気に挨拶した。人魚のメイリも剣術をやっている理由は、魔法が効かない敵に対しての対応策だ。前も述べた通り銃はこの世界でも最強兵器ではあるがお金がかかる。主人公達と素材を交換したときに一番高いのが銃で、他の物を全部足してようやく銃と同レベルなぐらい高い。だからこそキブが大量に交換してお金の代わりにしたのだが。一応マタカ達はお金が山ほどあるために銃は持っているのだが、、「戦う相手が強くて軒並み銃弾が通らない相手が多い」こともありあまり使わない。ただ、組織の誘拐編ではドラゴが銃を使って敵を倒している。ネイルソードのように遠距離攻撃できる剣もあるし、シルヴァの場合間合いに入らせずに剣でも倒せるので特に問題ない。ネイルソードでもある通りドラゴの場合は変身すれば魔力で爪を飛ばして攻撃できるのだが、普段は使用しない。またかなり話がずれてしまったが、魔法以外の対策なら弓矢や槍もある。のだが、、「とりあえず槍を使えるようにするためにも剣を使え」というジョウドの教えなのだ。冒頭のピレンクのやり取りでもあったようにジョウドは槍や弓矢は「接近されたら厳しい」と思っている節がある。もちろん、道場では弓矢の撃ち方や槍術も習得できる。ただ道場が剣術重視なのは彼の考え方も大きく影響しているのだ。「私、ポセイドン様みたいに槍が使いたいです」と言うようになったのは当然なのだった。ポセイドンは敵として現れていたりするが人魚達にとっては分身ではなく神そのものであり、その神殿を護ったり試練の案内をすることは誇りだと思っている。ちなみに4人も剣術の訓練をしてみたが、「素手のほうが強い」と完全に武器を否定。弓矢、槍も彼女達には合わなかったので、これを聞いた妻のキブは彼女達に特製の籠手を作ってあげることにした。爪が出せる特別仕様で衝撃に強い。きちんと手を保護し、敵にダメージを与えることができる仕様になっている。メイリも「やっぱり槍のほうが使いやすい、でも確かに剣術の技術の訓練自体は無駄じゃない。」と槍メインに変更した。そんな5人が人魚の鱗をつけて海底ダンジョンに挑むことになるのだが、これは後程本編で。


海底ダンジョンに挑む二人の冒険者がいた。シルヴァ夫婦である。あの魔境の海のダンジョンが発見されたと聞いて、早速潜りに来たのだ。ちなみに娘二人は限界突破の試練で何も起こらなかったマキとノレドに世話を任せている。当然残りの4人に何が起きたんだとなるだろうが、気絶するほどのことが起きた、とだけ書いておく。さて一階層から警戒していた爆弾ウニだが。「こうすればいいんだよね」とシルヴァはネイルソードで攻撃して爆発させていく。ちなみにマードの鱗を借りて二人は挑戦中だ。イビルシャーク、ビッグアンコウ、デスピラニアと狂暴化したような魔物が次々と襲いかかる。二人は誘爆を利用したり、遠距離攻撃や逆鱗の大剣の反撃効果、ドラゴンシールドの反撃などで攻撃を一切与えずに倒していく。10階層でボスを倒したとき、宝箱からのアイテムに驚く。「これは一体なんだろうねぇ、、」「わからないな。」そこにあったのは欠片のような物。とてもお宝とは呼べる代物ではない。20階層までサクサクと進み、またボスを倒して出てきたアイテムも「またかい、、」「よくわからん。」欠片だった。ただ「これ組み合わせられそうだな」と欠片が魔力でくっついた。ダンジョンの謎アイテムあるあるの自動でくっつく理論はバラバラにしたときに魔力でくっつくようにしている説が濃厚だと思っている。「とりあえず、マタカに報告しよう。このダンジョンは何か秘密があるんだ。おそらくとあるアイテムを欠片にしてバラバラにしたんだ。そしてこのダンジョンを踏破しきった者に凄い何かを与える、という物なんだと思う。」とドラゴが考察している。「そうみたいだね、でも子育てもあるしあたしらにはきつそうだよ。お店もほったらかしはまずいし。」「そうだな。あとは子供達に託すことにしよう。」後にこの欠片を二人から託されてトーイ達はこのダンジョンを踏破することになる。


さて、色々あったのだがいよいよこの短編集もラスト。ダンジョンを発見したところで中断していた道を作る作業をフェアルが再開していた。杖は持っているのでどんどん魔法で道を作っていき、「ついに陸地が見えた!」となったのであった。しかし、そんなに簡単に上陸できるわけではない。結界のある島がたくさんある海域が魔境の海なのだ。とりあえず島付近までは陸地が作れたのだが、「やっぱりこれ以上は結界の効果で厳しそうね」そう、魔法が封印されてしまう結界だったのだ。陸地が目前に迫っているのに上陸できないもどかしさ。しかし、クダイはこう提案した。「直接魔法が使えないなら、あらかじめ大量の砂を作って運んで沈めてしまいましょう。そうすれば結界までは接近できるようになります。」「確かにそうね。やってみましょう。」アイテムボックスを使って土魔法で生成しておいた砂を運び、魔法が使えないギリギリまで運んで大量の砂を人力で落とす。島の住民全員で協力して手作業でこの作業をすることになり、数日かけて数メートルの道を魔法なしで埋めた。「魔法使えないの大変過ぎね。あとはこの結界だけど、、」「困っていると聞いて飛んできたよ。」「僕達がやってきたからにはやってみるさ。」とマタカ達3人がやってきた。結界を物理的に壊すためだ。「なにしろこの世界の住民にとっては大発見なんだ。もし住民がいたら侵略者でしかないだろうけどな。」「まぁアメリカ大陸を支配したスペイン人やポルトガル人は無理やり奪っては虐殺なんてしてたからねぇ、、」「確かにそうだったね。」「知ってるの?」「そりゃ、自分が転生してなくてもある程度地球の知識は100年前に大量に来た軍人が入れてきたんだろ?だから書物に残っているのさ。子供達用の図書館とか建てるの手伝ってる私だから知ってて当然なのさ。」軍人達は自分達が生きた証として現地人の女性と交わり、その過程で現地の言葉を学び、覚えた言葉で書物をたくさん残した。もちろんある程度の世界史は軍人故に覚えているのだ。魔王が発表したことで公にはなったのだが、もともと色々と残しているために歴史書を見た人からすればようやく腑に落ちる説明が出てきたと言う感じなのだ。この世界ではないどこかで起きた歴史が淡々と綴られている歴史書。この世界ではない魔法ではない知識である科学書。100年後の今からすれば子供達にも浸透して常識になっているものも多いが、歴史書だけは突然出てきた謎のアイテムなのだ。スキルをシルヴァも持っているので転生者なのだが、マタカ達とは時代が違う、とだけ言っておこう。

「まぁ、現地人の利益を確保しつつ、私達も発見して何かないか探させてもらうんだ。そうすればこっちだけ利益独占にはならないだろ?」「そうだな、まずは結界を破壊しよう。」マタカは勇者の聖剣を構え、シルヴァは大剣、ドラゴは槍を構えている。ドラゴン状態で。「狭いよ。あんた。」「しょうがないだろ、このほうが力が出るんだ。」ドラゴン状態だと通路ギリギリだ。そして一斉に攻撃して結界を破壊した。すると、、「!」「!」結界を破壊されたことに反応して現地人が集まってくる。「待ってくれ!私達は敵じゃない。話がしたい。」「?????」「言葉がわからないぞ!」「いや、分かる。俺達なら。すまない、武器をおろしてくれないか?」「?????」「とりあえずドラゴンから元に戻ってくれ。向こうによるとドラゴンは敵なんだ。だから結界を壊されたことに最大級の警戒をしているんだよ。」「結界を壊してごめんなさい。でも、あなた達に会いたかった、いや少し違いますね、私達はあなた達の世界の外から来たんです。どういう生活をしているのか、聞かせてもらえませんか。私達に敵意はありません。」シルヴァやマタカは武器を戻し、ドラゴは変身を解いた。「わかりました。どうやらあなた方に敵意はなく、そのドラゴンも手なずけられているようですね。話をしましょう。どうぞ私達の集落にご案内致します。」と分かる言葉で話をしてきた。連れてこられたのはジャングルの中のツリーハウス。現実のニュージーランドにあたるこの島は名前がまだないが、現地人からはアイマリドと呼ばれていたのでそのまま採用された。マオリ族にあたる部族はマリド族といい、魔物との戦いを毎日繰り広げる部族であり、族長には何人も妻がいる超がつくハーレム状態。それほど戦える男は大切なのだ。明らかに大陸とはレベルが違い高すぎる魔物相手に勇猛果敢に戦って時折命を落としていく。子供もたくさんいてなんとか結界を貼る技術で外部からの敵を防いできた。魔力量がこの部族は戦闘民族である故に非常に高い。「それでお話とはなんでしょうか?」「ここの魔物は非常に強くて強力な魔物が多いようですね。」「ええ、近海含めて非常に強力で、戦士となりえる強い男が徐々に死んでいき減っているのです。」「冒険者ギルドをここに設置しましょう。実は私はこういうものでして」マタカは名刺を取り出す。一応前世で社会人だったため身分を説明するのに便利な名刺はたくさん持っている。「なるほど、ギルドマスターで元勇者様達一行でしたか。これならば我々が求めるものも手に入りそうですな。」「それはまさか、男」「その通りです!冒険者様には男が多いのでしょう?」「あ、はい。」冒険者は全体で言えば1000人前後くらいしかいない。人口がわかっている領域内でだいたい500万越えるかどうかの世界だからかなり少ないほうだ。魔法が使えず、力も落ちているのが原因だと思われるが、それ以外に軍人が持ち込んだ仕事の概念が多くて不安定なこの仕事を嫌う人が多いのが現状だ。その内の8割以上は男だ。「まぁ、道場の門下生はモテたがっていたって話は聞いたし、ここに来たらモテモテになるだろうな。」「その道場って何ですか?」説明すると、「是非連れて来てください!」と言われて、ジョウドに連絡を取る。「いいだろう。モテたがっている男どもに命の危険をかけて戦ってもらおう。」「ただ、その話を聞く限りあまり門下生にだけ任せるのは無謀です。私も行きます。」「シハーデ、いいのか?」「強き場所で揉まれるのは望むところ。」こうして、門下生の中で希望する10名の男性達とシハーデが集落にマタカに転移させられてきた。「いやー、いい筋肉をしています。うちの衆がしごけばすぐに戦えるようになるでしょう。」と言われてさすがに門下生達は戦慄していた。「そこのお方にはそのようなものは必要なさそうですね。我々のために戦ってくれると?」「もちろん。戦いがあるのなら、喜んで。」「そう言ってくれると非常に嬉しいです。早速ですが、、」こうしてこのマリド族で修行することになった11人。冒険者の希望者達もここに加わり、魔物達との生活圏をかけたサバイバル生活が今ここで始まっていく。もちろん、子種のためのハーレム展開も彼らはほぼ強制的に受け入れていくことになる。そんな島の発見がトーイ達にどう影響するのか、今後にご期待ください。外伝1は終了しました。次回の外伝はピレンクの冒険と影の人々の歴史を振り返っていく作品になります。

短編集と言いましたが2万文字を越えました。本来は一万で収める予定でしたが書いていて本編にわりと穴があったりしたりしていたのでその補完をするために説明多めで読みにくくなったことは否めません。とりあえず、展開としては新たな島、新たなダンジョンの発見がメインです。次回は転移のせいであっさり過ぎたあの国とあの国に関しての補足と掘り下げをします。さすがに世界観、広さ的にあんな展開で終わるとまずいためです。

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