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④ー④ 優奈の思い出

「それでは、私からお話させていただきます。」


______________________________________

【優奈の話】


『ひろ~見てみて~‼この雪だるま、私が作ったの。……すっごくかわいくない‼』


「あれは私がまだ、子供の頃でした。」


……今、『優奈は今も子供だろ‼』とか思った人もいるんじゃないんですか?……特にひろとか。

……ひろ、私は恋の駆け引きができるほど、大人になったんだよ?


「あの日、私は、ひろに笑顔になってもらうために、ひろに褒めてもらうために、一生懸命、雪だるまを作りました。」


確かあの日、初めて私たちの町に雪が降ったあの日、今日みたいに、朝4時とかに起きて、一生懸命雪だるま、作ってたんだよね。


「お気に入りのビー玉とか、ビーズを使って作った口とか。自分の大切なものを使って、一生懸命雪だるまを作ったんです。」


「もしかして、優奈ちゃんって、そのころから……⁉」


私が話していると、日奈先輩がそう言ってきた。


「何のことを言っているのか、わかりませんが、多分そうなんじゃないんですか?」


ひろに悟られたくなかった私は、日奈先輩にそう言った。


「へ~、やっぱりそうだったんだ~。」


しかし、ひろのお母さんは、私たち二人が何を話しているのかわかったようだ。


「……。ん?」


ふぅ。よかった~。ひろには気づかれてないみたいだ。

……なずな先輩も、『?』って、顔をしているし。


「は、話を戻しますね。」


なずな先輩から、このことについて質問されることを避けるため、私はそう言って話を元に戻した。


「そして、雪だるまが完成して、ひろを呼びに行きました。ひろに早く見てもらいたい。ひろに褒めてもらいたい。そんなことを考えながら。」


『ひろ~雪だるま作ったから見に来てよ~‼』


『……ゆ~な、一人で作ったの?』


『うん‼私、頑張ったの‼お母さんに手伝ってもらうことなく、一人で作れたの‼……だから、わたしの最高傑作、見てくれない?』


『うん、もちろん‼』


「ひろは、私が呼びに行くと、喜んで、私の雪だるまを見に来てくれました。」


『ひろ~見てみて~‼この雪だるま、私が作ったの。……すっごくかわいくない‼』



『お~‼すごい‼すっごかわいいね‼』


「そう言って、私の雪だるまを、ひろは褒めてくれました。……そして、」


『ゆ~なはすごいな~。こんなにかわいい雪だるまを作れるなんて。』


「ひろはそう言ってくれました。でも、その時……」


『なんだ、この変な雪だるま。』


『きもちわる~い。』


「その時、そんなことを言いながら、高校生くらいの男子が通り過ぎていきました。自分より大きな相手だったので、私は何も、言い返すことができず、ただ、泣くことしかできませんでした。……でも、でもひろが、」


『何言ってんだよ‼この雪だるま、すっごくかわいいじゃないか‼』


「自分より、何倍も体が大きい相手に向かって、ひろはそう言ってくれたんです。」


『おまえら、ゆ~なに謝れよ‼』


「そう言って、くれたんです。」


『……ちっちゃい子供が、高校生に向かって文句を言うな‼』


「もちろん、相手は黙っていてはくれません。こぶしを振り上げて、わたしたちの方に向かってきたんです。」


『子供だろうが、高校生だろうが、関係ないだろ‼間違っているものは間違っている‼それに、年齢なんか、関係ないんだよ‼』


「それでもひろは引きません。」


『ゆ~なが一生懸命作った雪だるまを、ゆ~なを傷つけるために、お前らは否定した。面白がって、ゆ~なの努力を否定した。愛のある批判とか、その人のためを思った批判なら別に文句は言わない。でも、おまえらが優奈に対して浴びせた言葉は、相手を傷つけるために言った言葉は、批判じゃない‼︎否定なんだよ‼︎誰かのことを批判するならいい。でも、否定はしちゃいけないんだよ‼︎たとえどんなものでも、どんな人でも。その人に、心がある以上、否定はしちゃいけないの‼︎』


「ひろはそう、その高校生たちに向かって言ってくれました。」


『す、すみませんでした‼』


「ひろのおかげで、私は救われました。この出来事で二度、ひろに救われました。一つ目は、雪だるまを守れたことで、そして、二つ目は、ひろの温かい言葉に。……ひろ、本当にありがとね。」


そう言って、私はひろとの思い出話を語るのを終えた。

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