③ー⑥ 3人の作戦会議①
「なるほど。そんなことがあったんですね。」
『THE・日本』という感じのお店の個室で、正座をしながら、私は先輩達の話を聞いていた。
「そうなの。……もしかしたら、雪城さんが、ひろくんに近づくのを許してくれないかもしれない。」
「でも、私たちはそんなのは嫌だ。」
そんなこと、私も嫌に決まっている。学校で、ひろと話せないのは、私も嫌だ。
「そこでね、私たち、今日作戦会議をすることにしたの。優奈ちゃんを呼んだのは、そのため……だよね?なずなちゃん。」
「うん。その通りだよ‼︎」
ひろから聞いていた話では、日奈先輩は、お淑やかっていう言葉が似合う人らしいのだが、今、その綺麗な目には、熱い炎が宿っている。
そして、なずな先輩。元気で、優しくて、考えるのが苦手。そんな風に、ひろから聞いていたけれど、今は真剣に考えている。
昔、お母さんが言っていた、『好きな男のためならば、女の子は、どこまでも熱くなれるのよ‼』と、『女は恋のためならば、策士にだってなれるのよ‼……ただ、策の良しあしは、人によるけれども。』の意味が分かった気がする。……まあ、いまだに、
これは男の子も同じなのでは?
という疑問は消えないけれど。
「それじゃあ、今回は協力して、3人でこの危機に立ち向かいましょうか。」
普段はクールで、お淑やかで、大和撫子という言葉がとっても似合う私も、自分の恋の危機とあっては、黙って見ていられるはずもなく、熱く語ってしまった。
……え?今言ったことは本当かって?
……いや、本当に決まってんじゃん‼︎だって私、大和撫子系ヒロインだよ⁉︎
「……お話の前に、先輩方に、大事な話があるんですけど。」
大事なことに気づいてしまった私は、2人にそう言った。
私の、大事な話。それは……
「今日、こんなことになると思ってなかったので、私、財布を今持っていなくて。」
そう、財布を持っていないということだ‼︎
……。そもそも、ひろのことを迎えにきただけの私は、財布なんていうものが必要になるとは思わなかったため、家から持ってきていないのだ。
幸い、まだ私達はなにも頼んでいないので、私がこのまま帰るということも可能だ。
そんなことを考えていると、
「あ、そうなんだ。……でも、気にしなくて大丈夫だよ‼︎優奈ちゃんの分は、私が払ってあげるから‼︎」
と、日奈先輩が言ってくれた。
「日奈先輩、ありがとうございます。」
ひろから聞いていた通り、日奈先輩って、すっごく優しいんだな〜。
「ねえ日奈、私の分も払ってくれないかな〜?」
そんなこんなで、女子3人の、作戦会議が始まったのだった。