表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここは魔法よろず相談所  作者:
第3章 最後の戦い
15/24

挿話 ケインの憂鬱

「まあ、あいつの性格からして、何となく分かるけどな……」


 カイトは、葡萄酒を一口含み苦笑いする。


「お前は所詮他人事だよな。マジできついんだぞ」


 珍しく本気で苦々しい顔をしているのは、幼馴染のケインだ。若くして魔術師学校の主任教官として、その才能をいかんなく発揮している赤毛の若者は、ため息をつく。


「自分にとっての目標の人が、色ボケでバグってる姿とか、受け入れがたいんだよ……」


 現王宮最高位魔術師、ナギのことである。


「まあ別に、仕事に支障を出してるわけじゃない。いやむしろ、彼女が側にいるようになってから、あの人の魔術は質も量も改善してる」


 ケインは苦々しくつぶやく。


「確かに、リアはいい子だし、魔術師としてみても、二人はお似合いだよ。だけどさあ……」


 とにかく、見ててきついんだよ。ケインは赤毛をかきむしる。



 カイトが王宮の公務で見る限り、ナギにケインが言うような緩んだところは見られない。

 ケインが幼いころからナギに憧れて、魔術師として鍛錬してきていたのは知っている。一番弟子の立場を取られて、嫉妬でもしているのだろうか。


「お前もいい加減大人になれよ」


 口をとがらせる幼馴染の額を小突いて、カイトは葡萄酒のはいったグラスをあおる。



(想像以上だった)


 昨日の今日だが、カイトは胸の内でケインに謝っていた。

 今、彼は、かつてナギが営んでいた質屋、今はリアが店主の菓子店のキッチンのテーブルに座っている。

 ナギの体調はだいぶ回復し、短時間であれば自力で不可侵領域外で行動することもできるようになっている。今日はリアの店で昼食を食べるというので、カイトもご相伴にあずかることにしたのだが。


 仕事スイッチオフモードのナギの様子は、目を疑うほどだ。

 目の前にカイトがいることなど頓着せず、甘い瞳でひたすらリアを見つめては、頬をつついたり、髪に口づけたりしている。


(こいつ、本気になると、こんなになっちゃうのか)


 彼が何かに興味を持つと、寝食を忘れるほど夢中になるのは昔からだが、異性関係は淡白だと思っていた。カイトは驚きを隠せない。


(しかし、この精神にくる破壊力すげえな)


 なまじ、顔の造作も良いため、ナギからあふれ出す色気は同性でもぞくっとするほどだ。

 リアが真っ赤になって困ったようにちらちらとこっちを見るのも、何というか、勘弁してほしい。

 まさしく、目の毒である。


(こういうの、ちらちら見せられたら、病むよな)


 カイトは心から、魔術師たちに同情した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ