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57話 いろいろな神

 シリウスの放つ風の刃を、ラージは走りながらかわしていく。


 またまた立場が逆転して、今度はラージがシリウスの攻撃に、逃げまわらなければならくなった。


 ラージの攻撃はシリウスにはまったく届かず、シリウスのみにダメージを与えるチャンスがあった。


 ラージもシリウスと同じように魔素を体内に取りこもうと試みた。

 しかしそれはできなかった。


 神化をしたとはいえ、神になったわけではない。

 神に近しいものになっただけで、神そのものではないのだ。


 賢神シリウスのできることがすべてできるわけではない。


 ラージの神化ではそこまで魔素は扱えないようだった。


 ラージはシルウスの姿を見る。


 シリウスの体からは白い蒸気が大量に吹きだしている。

 呼吸は荒く、顔は苦痛にゆがんでいる。

 シリウスが無理をしているのは明らかだった。


 ラージはこのまま逃げつづけて、時間を稼ぎ、シリウスの限界が訪れるのを待てないだろうかと考えた。

 だが、それも難しそうだった。


 シリウスの攻撃をかわしきれなくなってきたのだ。


 風の刃に火の鳥の炎が混ざりだし、宙に舞う火の粉まで、気をつけなければならなくなった。

 火の鳥の炎を受けても回復することは可能になったが、ダメージは受ける。

 四方八方を風の嵐に包まれ、ついに回避が難しくなる。


 手にもつ鎌を振りかざし、打ち払おうとするが、それで対処が間に合うはずもなく、風の刃が幾本も直撃する。


 風の嵐がおさまったとき、ラージの右腕は動かなくなっていた。

 腕は肩から力なく垂れさがっている。


 致命傷ではなかったが、腕の回復は見こめず、これからは片腕で戦うことが強いられた。


 続けざまに、シリウスの風の刃が襲ってくる。

 その数は万を超えていた。


 シリウスの肉体にも余裕はない。ここで一気にたたみかける。


 ラージは小さく息を吐きだす。

 何かを諦めたように目をつむる。


 まだ動く左腕を、胸の前でたてる。

 風の刃がすぐそこに迫っているが、その動きは緩やかだった。


 そしてゆっくりと瞼を開ける。

 万の風の刃がラージの目の前には広がっていた。


「守護神 アテナ」


 風の刃がすべてかき消える。


 ラージの背後には、巨大な女性が立っている。

 彼女の身長は30メートルはあった。


 足元はもやがかかったようにかすれている。

 鎧を着て、兜をかぶっている。


 彼女はラージを守るように、両手で囲んでいる。

 青い瞳を細め、口元に笑みを浮かべている。


 シリウスはその人物を知っていた。

 現在も帝都の広場にその石像が立っている。

 それは神の一人だった。


 シリウスは本物の神の前に、動きが止まってしまう。


「海王 ポセイドン」


 女神の姿が消える。

 今度はたくましい肉体を持つ大男が現れる。


 女神よりさらに一回り大きい。

 手に持つ矛を、シリウスに向け振りおろす。


 矛からはどこからともなく水があふれだし、シリウスは頭上から押しこまれる。


 突然、滝に放りこまれたように、その勢いに立っていられずに地面に叩きつけられる。

 巨大な槍が、シリウスの胴に追い打ちをかけるように直撃する。


 胴を貫通こそしなかったが、シリウスは体をくの字に曲げ、多量の血を吐きだす。


 一連の攻撃を終えると、大男は姿を消していく。


 シリウスはすぐには立ち上がれずに、その場で苦しみもだえる。


 ラージはシリウスのように魔素を扱うことはできなかったが、その代わり別のことがおこなえた。


 ラージが神化して得た力は召喚だった。

 神々をこの世界に具現化し、一回だけ行動を起こさせることができる。


 神に直接助けを借りるような行為は、ラージを不快にさせた。

 それでもラージは神の力を借りざるおえない。


 そんなラージの姿を見て、神々があざ笑っているように感じた。

 しかし、さすがは神の力を直接使っただけのことはあり、その効果は絶大だった。


 シリウスの攻撃を完璧に退け、一振りで大ダメージを与えた。


 発動までに時間がかかるのが欠点といえば欠点であったが、発動してしまえば必中であり、無敵の力といえた。


 シリウスは、痛みのつづく体でなんとか立ちあがる。

 次にまた、あの一撃をくらっては、もう再起は不可能だった。


 シリウスに他の選択肢はなかった。

 また新たに魔素をその身体に吸収していく。

 さらに倍の魔素をその身体に取りこむ。

 シリウスの体が、まるで腐っていくかのように黒くくすんでいく。

 脳を直接切り刻まれているかのような激痛が襲う。

 カミキリムシに食いちぎられているような痛み。


 あまりの苦痛にシリウスは一瞬気を失う。

 しかし、痛みで逆に気を取りもどす。


 何度かそれを繰り返す。


 シリウスはなんとか、その波を耐えることができた。

 顔をあげて、ラージをにらむ。


「本当に、しつこい」


 シリウスとラージが同時につぶやく。

明日も16時15分ごろ投稿いたします。

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