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17話 竜王の目覚め

 竜王の破壊に目的はない。

 そこに建物があるから破壊し、生物がいるから殺戮した。

 過去には勇者を殺したこともあれば、魔王を滅ぼしたこともあった。


「ひとつ気になることがある」とシリアスが発言した。


 ゴブリンがしゃべったと、何人かが驚く。

 シリアスと初対面のものも、この会議にはいる。

 話には聞いていても、実際に言葉を話すゴブリンを見ると、やはり驚愕を覚えてしまう。


「竜王は4年前に目覚めていたのではないのですか?

 500年に一度の活動サイクルのはずだが」

「確かに、竜王は4年前に目覚めている。

 しかし、一週間もせずに、活動を止めている」

「どうして?」

「前回も、竜王は目覚めてすぐに、このエルフの里を襲ってきた。

 しかし、とある人物が撃退してくれた」

「竜王を撃退。誰が?」

「現魔王だ。

 魔王がなぜエルフの里を助けてくれたのかはわからない。

 おそらく先代魔王軍は、竜王によりかなりの被害を受けていた。

 その借りを返しに来たのだろう」

「現魔王と竜王の戦いを見たのですか?」

「ああ。見た」ルルージュはうなずく。


 他のエルフたちも、その戦いを見ていたらしく、硬い表情で目を伏せる。

 魔王と竜王の戦闘を思い出すエルフたちは、それだけで緊張していた。

 ルルージュは、フラスコの沈殿をなくすかのように、頭を振って、記憶の恐怖を消す。

 口角を上げて、表情を緩める。


「ゴブリン殿、安心なされ。

 我々が恐怖しているのは、魔王の方だ。

 魔王と竜王の戦いは一方的だった。

 最初こそ、攻撃の応酬があったが、魔王が第二十深度の魔法を連発するようになると、竜王はただの巨大なぬいぐるみだった。

 子供に殴る蹴るされるがままという感じだ。

 防戦一方になり、必死に逃げ回っておった。

 勇者と一兵卒のように、実力差がありすぎた」


 現勇者と一兵卒だと意外といい勝負になりそうだ、とシリウスは思ったが、もちろん口は挟まなかった。


「竜王は3分もせずに、尻尾を巻いて逃げていった。

 魔王もそのまま姿を消した。

 竜王はかなりの重傷を負っていたし、そのまま、また眠りについたのだろう。

 しかし、一週間しか動いていなかったので、眠りも浅く、すぐに目覚めてしまったというところだろう」

「また魔王が追い返してくれる可能性はないのでしょうか」とエルダが発言した。


「可能性は低い。前回の戦いで先代魔王の報復はできただろうし、竜王も魔王軍には手を出すことはないだろう。

 現魔王には敗れたが、竜王は噂通り強い。

 現魔王が強すぎるだけで、歴代魔王なら竜王が勝利するだろう。

 なんといってもあの防御力は脅威だ。

 第十深度の魔法では傷ひとつついていなかったし、第十五深度以上の魔法でようやくダメージを与えられる程度だろう」


「第十五深度の魔法なんて誰がうてるっていうんだ」エルフの誰かが叫んだ。


 それと同時に、エルフたちは、ゴブリンに視線が集中した。


「ゴブリン殿、お主は第何深度の魔法まで使うことができるのじゃ?」ルルージュが聞く。


「第十八深度までなら使えます」とシリススは答える。


「おお」という声が部屋に広がる。


 賢者時代のシリウスは、第十深度までの魔法しか使うことができなかった。

 しかし、ゴブリンに転生してから、魔力が増え、エルフの杖を手に入れ、魔術書で学んだ高度に進んだエルフの術式により、シリウスの魔法技術は爆発的に伸びていた。


「うむ。第十八深度の魔法なら、かなりのダメージを与えることができるはずじゃ。

 少しは勝機も見えてきたようじゃ。

 先ほど、ドラゴンの巣を見張っていた者から連絡があった。

 龍たちの動きがせわしなくなってきたそうだ。

 2、3日のうちにまた襲撃があるだろう。

 おそらく今度は、竜王自らも動くだろう。

 お互いに総力戦となる。

 我々のとる戦いかたはシンプルだ。

 わざと竜王のみ結界内に入れる。

 他のドラゴンは結界の外に追い出したままにする。

 竜王がいなければ、結界は破れないはずだ。

 あとは全戦力で、竜王を倒す」


 ルルージュはまた、一同を見渡す。

 集まった者ひとりひとりと目を合わせていく。


「竜王との戦いだ。

 激しいものになる。

 多くの死者が出ることになるだろう。

 各々、今日と明日は親しいものとゆっくりと過ごせ」


 会議はそこで終了となった。

 エルフたちが順次部屋をでていく。

 シリウスだけはその場に残った。

 ルルージュに残るように言われたからだ。


「実はドラゴン以外にもうひとつ問題が、この里には訪れようとしている」


 ルルージュは、少し小声だった。

 周りに人はいないので、聞かれる心配はないが、無意識に声が小さくなっていた。


「お主が来るのと同時期に、別のゴブリンもエルフの森に入ってきた」


 先日のルルージュとの戦闘の際に、自分とは別のゴルリンについて尋ねてきたことを、シリウスは思い出した。


「お主には、心当たりないのだな」


 シリウスはうなずいた。


「そのゴブリンなのだが、強いのじゃ。

 お主と同じように、最弱のモンスターのはずのゴブリンが、強大な力を持っている。

 ステータスだけで言えば、そのゴブリンはお主よりも高い。

 まったく、世の中不思議なことが起こるもんじゃ。

 ただ、そのゴブリンが、強いだけなら問題ではない。

 エルフに被害が出ているわけでもないしな。

 問題なのは、そのゴブリンが強くなりつづけているのじゃ。

 今日もまた、力を増しおった。

 このままいくと、そのゴブリンが竜王よりも脅威になるかもしれん」


 エルフの森に現れてもう一匹のゴブリン。

 それはこの物語のもう一人の主人公。

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