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長文タイトルは、もう遅い? ~軽くデータ分析したところ、「小説家になろう」で長文タイトルの流行が終わりつつある……かもしれない件【2021年4月時点の仮説につき取扱注意】~

作者: 関宮亜門

※追記: 2024年の規約変更により、「小説家になろう」サイトのスクレイピングは全面的に禁止されました。これからはAPIを利用しましょう。ChatGPTに聞けば詳しく教えてくれます!


※以下、あらすじの内容を繰り返しますので、既にお読みの方は読み飛ばしください


 2021年4月。


 小説家になろうのランキングに、異変が起きています。


 長らくハイファンタジーに次ぐ2番手の位置に甘んじていた異世界恋愛ジャンルが、総合ランキング(特に日間ランキング)でかなりの強さを見せ始めたのです。


 総合日間300のうち、過半数を異世界恋愛が占める日もあるという、少し前までなら考えられないようなこの状況。


 一部ではこれを受けて「流行のジャンルが、ファンタジーから恋愛に移り変わったのか?」と考える向きもあるようです。


 確かに、それも有力な仮説の一つだとは思います。


 しかし、ここで私はもう一つの仮説「長文タイトルの流行が終わりつつあるかもしれない」をぶち上げたいと思います。



※以上で、あらすじとの重複は終わりです




 なぜ私が「長文タイトルの流行が終わりつつあるかもしれない」と思ったのか。

 それは、データが示唆しているからです。


 論より証拠。


 まずはドカーンと、ヒストグラムというグラフをお見せしましょう。


 なお、ヒストグラムとは「度数分布図」ともいい、統計学の世界などでよく用いられるグラフです(筆者は大学の「統計学入門」的な授業で勉強しました。統計学はいいぞ、みんな!)。


 今回のヒストグラムでは、横軸に「1文字~10文字」から「91文字~100文字」という具合にタイトルの文字数の区分を取り、縦軸に「日間ランキングに載った作品数」を取っています。


 たとえば「51文字~60文字」のところで「ニョキッ」と突き出たグラフになっていれば「ああ、ランキングに載る作品の中で、タイトルの文字数が51~60文字の作品が、これだけたくさんあるんだな」と読み取れます。


 で、こちらが「総合日間ランキング300位のうち上位100作品」のタイトル文字数をヒストグラム化したもの。


挿絵(By みてみん)


続いて、こちらが同様に「ハイファン日間ランキング100位」のタイトル文字数をヒストグラム化したもの。


挿絵(By みてみん)


最後に、両者を並べたものも一応置いておきます。


挿絵(By みてみん)


 うーん!


 もうぶっちゃけこのグラフだけでこのエッセイ終わらせていいんじゃないかってぐらいなんですが、一応解説しますね。


 2つのグラフを比較すると、どちらも「31字~40字」の区分に山があり、その後でガクッと下がっていることがわかります。


 一方、総合ランキングのグラフは40字以下のタイトルが多い一方で、ハイファンのグラフは長文タイトルの割合がかなり多く「91字~100文字」が「31字~40字」と同じぐらい突出しています。


 まあ、ハイファンで100文字のところに山があるのは、わかりますね。


「なろうでは、長文タイトルが受ける」


 これが定説になっていますので。

 その理由としては、


「書籍と違ってWeb小説には表紙がないので、タイトルが表紙の役割を果たしている」

「そのため、タイトルの情報量は、多ければ多いほど良い」


 みたいな感じで説明されることが多いです。


 しかし、現在の総合日間ランキングを見ると、強いのはむしろ40字以下のタイトルの方です(40字以下で、日間総合上位100全体の約6割を占めます。ハイファンは約3割です)。


 で、当然、こう思いますよね。


「40字ってなんだ?」


 と。


「30字でも50字でもなく、なんで40字が、別れ目になってるの?」


 と。


 というのは、調べれば調べるほど、40字って特別なんですよ。


 週間や月間などのランキングを同様に分析しても、40字のところに山だったり崖だったりができるんです。


 ほんと私も、なんで40字が特別なの、って思いました。


 これはですね。

 有力な仮説を、見つけました。


 スマホなんです。


 スマホの画面で、検索やランキングの画面を見た時。


 タイトルの文字数が、

 スッキリ2行・・・・・・に収まる文字数。


 それが、40字なんです。


 作者さんはほぼみんなPC使いだと思うので、なかなか気づかないと思います。

 なので、ちょっとお手持ちのスマホの画面で、確認してみてください。


 スマホの画面で、3行以上の文字数のタイトル。


 メッチャ読みにくいです。

 読む気が失せます。


 はい。

 これで、有力な仮説が出来上がりました。


「スマホユーザーには、40字以下のタイトルが歓迎されている」


 というものです。


 50字では3行になってしまうし、

 30字では情報量が少なすぎる。

 だから、40字がちょうどいい。


 ということです。


 ……にしても、この結果を見ると、前々からあった


「長文タイトルは読む気が失せる」

「いや、情報量が多くて良い」


 っていう論争って、実は前者の論者がスマホ派で、後者がPC派だったから起きていた論争だったんじゃないか、って気がしてきますね。


 同じ物を違う目で見ていて、互いにそのことに気づかないせいで、争いが起きてしまう。


 うーん。

 SF的ですねー。


 ……すいません、脱線しました。本筋に戻ります。



※以下、「40字タイトルも長文でしょ?」というツッコミもあるかと思いますが、話の流れ上「40字超」のみを「長文タイトル」とします



 つまり、現在のランキングの状況を見て、


「ハイファンから恋愛に流行が変わった」


 という仮説を立てるのが、確かに自然ではあるのですが。

 ただ、一方で、


「ハイファンが凋落してるのは、長文タイトルにこだわっているからでは?」


 という仮説も、いちおー有力なんじゃないかなーと、筆者としては思っているわけです。


 もちろん、この仮説には、一つの有力な反論があり得ます。


「いや、それは『ジャンルによってウケるタイトル字数が違う』ってだけのことじゃないの?」

 恋愛では短文タイトルが、ハイファンでは長文タイトルがウケる。

 それだけのことじゃないの?」


 と。


 実際、ハイファンでも恋愛でもないマイナージャンルには短文タイトルがたくさんありますが、そっちがハイファンより人気、ってわけでもないよね、と。


 うーん。

 確かにこれは、なかなか鋭いツッコミです。


 ただ、筆者としてちょっと食い下がらせてもらうと。


 まず、ハイファンのグラフを見ても「40字のところで小さな山 (と崖)がある」事実が観察できます。

 ハイファンでも一定程度「40字が強い」傾向は観察できるのですね。


 ただ、これにはさらに、こんな再反論が想定できます。


「40字以下のタイトルには下位が多く、表紙 (5位)以内のタイトルは40字超ばかりだ」


 というものです。


 うーん。

 これはね。

 これを言われると、正直、筆者も苦しいです。


 一応の反論としては、これは「作者の実力」によるものなんじゃないかなあ、というのを、やや弱めの仮説として、挙げさせてもらいたいと思います。


 実力のある作者ほど「どうすれば小説が人気になるか」について、よく勉強しています。


 つまり、実力のある作者ほど「なろうでは長文タイトルがウケる」という定説を知っており、それを実行している、と考えられるわけです。


 しかし、それはこれまでの定説・・・・・・・であって、現在は、段々と当てはまらなくなって来ているのではないか……?


 というのが、私の主張、というわけです。



 あと、もう一つ有力な反論として考えられるのは


「スマホの普及は、別に最近始まったことじゃないでしょ? なんで最近になって、急に長文タイトルが敬遠され始めたの?」


 というものです。


 これは……

 ですね……


 ……すみません。


 私にもわからないです(おい)。


 確かに、この点を説明できていないのは、この仮説の大きな欠点として、私も認めざるを得ません。


 ただ、私としては……

 後でも少し触れますが、


「総合上位とハイファン上位でタイトル文字数に乖離が起きている」


 ことを示すことによって、


「もはや『なろう』で上位を取るのに長文タイトルは必須ではないかもしれない」


 ことを導く……というのは(仮に事実だとすれば)大きな意義があることだと思うので、


「なんで最近になって?」


 という問いに答えられなかったとしても、この仮説の意義は保たれ続ける、と考えています。




 他にも2つほど、公正を期すために、今回のデータ分析の欠陥を挙げておきたいと思います(主に、作業時間の問題で実施ができなかった項目です)。


 まず、今回の分析では過去との比較をほとんど行っていません。


 一応、週間、月間、四半期、年間のランキングを調べはしました。


 すると、週間、月間には「40字以下強し」の傾向が見られ、四半期にはその傾向が全くない……というのは仮説通りだった一方、年間では再び「40字以下強し」の傾向が現われる、という結果になりました。


 年間の結果は仮説に反するものですが、一応、


「年間ランキングには書籍化作品が多く、書籍化作品はタイトルを短く改題することが多い」


 ためではないか、と私は考えています。


 実際、年間ランキング300作品のタイトル文字数について、タイトルもしくはあらすじの中に「書籍」が含まれている作品とそうでない作品の平均を調べたところ


「書籍」あり:38.9字 (162作品)

「書籍」なし:45.5字 (138作品)


 という結果が出たので、この仮説は割とイイ線いってるんじゃないかなーと。


 が、いずれにせよ「過去の日間ランキング」の分析なども可能なら行いたかったところで、過去との比較という点で、分析としてやや抜けている項目があるのは、否めないところです。



 もう一つの欠陥は、今回の分析が、ランキング掲載作品のみを対象としていることです。

 本来であれば、なろうに投稿された作品全体との比較を行わないといけません。


 つまり、


「投稿作品全体のタイトル40字以下の割合がこう。ランキング作品に限定した割合がこう。だから40字以下の方がランキングに掲載される可能性が高い!」


 みたいな分析をやった方がいいのかもしれないなーと思うのですが、やってません。


 なろうAPIを使えばできるんだと思うんですが……すみません、なにせ本職のエンジニアじゃないもので。


 あれ使って分析するときは、いつもデータ数500件だけでやってるもんで。




 自説の欠陥紹介は、以上です。


 まとめると、今回の分析では、明らかに、ハイファンランキング作品のタイトル文字数が、総合ランキングと比べて多いことが観察できました。


 やや強い表現をしてしまって申し訳ないですが、語弊を恐れず言ってみれば、


「ハイファンランキングの『ガラパゴス化』が進んでいる」


 という印象です。


 この現象の理由が、


「作者に好まれた結果」


 なのか、それとも


「読者に好まれた結果」


 なのかは、まだわかりません。


 ですが、これまでのデータと考察を総合的に考えてみて、ハイファンの作者さんか読者さんのどちらか(もしかしたら両方)が、


「長文タイトルにこだわりすぎておられるのでは?」


 という感想を、私は持ちました。


 一方で、総合ランキングの状況を見る限り、ハイファンではなく「なろう全体」で見れば「40字以下タイトル」の時代が来つつある可能性は、かなりあるのではないか、という状況です。


 つまり、既に読者の多数派は「長文タイトルを敬遠しているか、少なくとも『良い』とは思っていない」状況なのではないかと、私は感じています。




 また、今回のエッセイが筆者の狙い通りにバズってくれた場合、ハイファンでも40字以下のタイトルに挑戦する作者さんが増えてくるかも知れません。


 それでもし、ハイファンの人気が復活したら、


「ハイファンというジャンルが凋落していたわけではなく、長文タイトルが敬遠されていただけだった」


 ことが証明される、という流れになります。

 これは、ハイファン作者さんにとって、希望が持てる話ですね。


 が、このエッセイは決して「ハイファンで40字以下のタイトルに挑戦する」ことをオススメするわけでも、お願いするわけでもありません。


 それで爆死したとしても、このエッセイの筆者には、責任が取れないからです。


 繰り返しになりますが、今回述べたのはあくまで仮説なので、絶対に正しいとは言い切れません。


 なので、ハイファンに限らず「40字以下のタイトルに挑戦する」場合は、そこのところをご理解いただいた上で、くれぐれも自己責任でお願いします。


 このエッセイの筆者は責任を負えませんし、負いません。


 ただ、一言言わせてもらうと、個人的には、ハイファンの人気が後退しているのは、


「長文タイトルで説明する必要が無いような、シンプルな話」


 を読者が好むようになっているからでは……なんて気もしています。


 これからはハイファンも、長文タイトルが必要ないような、シンプルな設定の作品が好まれるようになっていくのかもしれないなあ、と。




 言いたいことは以上ですが、最後に一言。

 本当は嫌なのですが(笑)、どうしても、正直にご報告しないといけないことがあります。


 筆者が今回、この仮説を自ら検証すべく、3月末ごろに、連載中のローファン作品 (長文タイトル)を一時的にこっそり短文タイトルにしてみたところ……


【見 事 爆 死】


 しました……(その後でアクセスが急に伸びているのは、別の事情 (=別の短編がランキングに入ったこと)によるものです)。


 なんで爆死したんだろう……説明が必要な、複雑な設定だったからかなあ……? うーん……


 まあ、こういう例もあるということです……




 なんか最後のオチで全部台無しになっちゃった気がしますが……データが!

 データが言っていることは、変わりませんから!


 私の作品はともかく、データから見た結論で言うと、


「2021年4月現在のなろうでは、40字以下のタイトルが強くね?」


 ということになります(あくまで、仮説ですが)。


 以上です。


 最後までお読みいただき、ありがとうございました!



※2021/04/14 追記


 色々と感想欄で賛否両論のご意見をいただいています。


 まず「ハイファンの評価ポイントが振るわない」という現象について、色々なご意見を聞けて良かったです。ありがとうございます。


 なかなか語り合う機会がないもので……


 で。


 その中で一つ、特筆すべきご意見を見つけましたので、ご紹介したいと思います(これは感想欄ではなく、別ルートからのご意見だったのですが)。


 それは、


「ウマ娘 (スマホゲーム版)が原因ではないか?」


 というものです。


 ああああああああああーーーーー。


 ……と、思いましたね、聞いた瞬間。


 この「ウマ娘原因説」の何がすごいかって、3月上旬頃に、急激にハイファンのポイントが振るわなくなったという部分 (=なんでいま急に? という部分)を、カンペキに説明できているところですよ。


 ウマ娘のリリースが、2月末。

 Googleトレンド検索で見てみると、3月頭に一つのピークに達して、それから「ウマ娘」人気の高止まりが続いている現状がうかがえるんです。


 もう時期的にはカンペキにドンピシャなんですね。


 おまけに、ウマ娘はゲームの内容上、若干ながら男性プレイヤーが多いのかなーと予測されます(もちろんあれだけ人気だと、女性プレイヤーもかなりいるでしょうが)。


 そうすると、女性向け異世界恋愛ジャンルのポイントが衰えない説明にも、一応はなっている。


 強い。

 強すぎるぞ「ウマ娘原因説」。


 正直「タイトル文字数の長さが重要」とした自説が、完全に霞んでしまうほどです。


 参ったな。


 でも、書かないわけにもいかないからな……

 このエッセイを書いたからこそ「ウマ娘原因説」に出会えたわけだし……


 そういうわけで。


 現在の「なろう」で40字以下タイトルが強くなっているのは、依然として間違いないと思います。


 ただし、その原因は「流行の移り変わり」などではなく、ただ単に「ハイファン読者がウマ娘に流れているから」というのが、非常に説得力のある説明である、ということになりました。


 もしこの「ウマ娘原因説」が正しければ……ハイファン読者は、ゲームに飽きた頃に戻ってくるかも、ということになります。

 ハイファン作者さんにとっては、朗報ですね。


 まあ、行ったままずっと戻ってこない、なんてこともあるかもしれませんが……それは考えても仕方ないので。


 で。


 ウマ娘からハイファン読者さんが戻ってきた時に、なろうに何が起こるのか……

 元の流行に戻るのか。

 新しい流行が生まれるのか。


 そればかりは……神のみぞ知る、というところです。


 以上、追記でした。

 

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