第5.5話「ようこそアルグワーツへ」
流石に文字数が多すぎたので、分けました。
第7話の投稿もう少々お待ちくだされ!
「アルグワーツの屋敷に、ですか?」
「えぇ、そうです」
マダム主催のアルフィ公開説教ショウが閉幕したのち、優愛はアルフィやマダムに連れられ、再びアルグワーツの屋敷に足を踏み入れた。
そこで夕食をご馳走になり––謎の肉と野菜多め、意外とイケた––、食後のティータイムの最中、マダムに優愛を屋敷に住まわせてはどうか、という提案をされた。
「それって……私たちと一緒に、ユーアも住むってことですか!?」
「そうですよ、アルフィ。家族が増えるのです」
「わぁ……!」
アルフィはキラキラとした目で優愛をじっと見つめてきた。
そんなアルフィに対して優愛は苦笑をこぼす。
その時、テーブルを勢いよく叩き立ち上がるものがいた。
「なりませんっ! いくらマダムのお言葉といえども納得がいきませんっ! 断固抗議いたしますっ!」
––アーヴィである。思えば彼女は最初から優愛を敵視していた。
アーヴィは怒り心頭、と言った様子で続ける。
「そもそも、先の裁判で彼が転生者だった、と話はつきましたが、なぜアルフィお嬢様の部屋で寝ていたのかという根本的な問題が解決していないではないですかっ!」
『ゔっ』
確かにそうだ、と思い返す優愛と、赤面して俯くアルフィの声が重なる。マダムは落ち着いてティーヴァ––この世界でいう紅茶のようなもの––を啜っていた。ちなみにアーヴェンは今10杯目のティーヴァを自分で入れているところだ。
––そういえばそうだ。なんで僕はあんなとこに……。
そんな中、カップから口を離したマダムが口を開いた。
「それについては問題ありません。アルフィが招いたのでしょう?」
「……え」
「お、おばぁ様っ!?」
「なんですって……!?」
優愛は呆気にとられ、アルフィとアーヴィは驚愕し、アーヴェンは変わらずティーヴァを飲みながら茶菓子を摘んでいた。
「大方、屋敷を内緒で抜け出したところに棺から抜け出た彼を見つけて匿った、と言ったところでしょう。––全てお見通しですよ?」
「ヒョエッ」
マダムはアルフィに笑いかけると、潰れたカエルのような声を出してアルフィは震え上がった。
「私が森へ行った際、あの棺は既に開いていたというより、扉が破損していました。恐らく、落下した衝撃で壊れ、さらに中からユーアが転げ落ちてしまったのでしょうね」
それをアルフィが拾ったと、とマダムは続けた。
優愛は、法廷で見たあの白い棺を思い出していた。
「……落下? それってあの、白い棺がですか? しかも僕が転げ落ちたって……」
「神の思し召しにより、あなたを入れ空から飛来したのでしょう。実際、伝説の中にも『棺は空より降る』と、ありましたからね」
そこまで言って、マダムは再びカップに口をつけた。
優愛は、法廷でマダムが言っていた自分と棺の関係を思い出していた。
––色々あって忘れてたけど、棺に入って現れるから、『選ばれし棺の者』なんだ。……だけど棺って、少し悪趣味じゃないか? 神様って何考えてるんだろ。
優愛がそんなことを思っていると、ワナワナと震えるアーヴィがへなりと座り込んだ。
どうやら、対抗できる術をなくしたらしい。
「……ですが、マダム……」
それでも尚、アーヴィは反論を続けた。
優愛から見て、アーヴィはマダムを、さらにその孫であるアルフィを敬愛しているように見えた。そんな人の生活を脅かす異端が現れたとなっては。当然あぁもなるとも思った。
––わかるなぁ。僕も、愛美の部屋で寝てる不審者とかいたら、愛美がなんと言おうと絶対許さないだろうし。
しかし、流石にずっと誤解されたままでは息苦しいと思い、優愛はアーヴィの目を真っ直ぐ見て口を開いた。
「アーヴィさん。僕を信じられない気持ちはわかります。僕も愛美……妹が同じ状況になった時、あなたと同じようなことを言うと思う」
だけど、と優愛は続けた。
アーヴィが、優愛の目を真っ直ぐ貫く。
「僕はアルフィに命を助けられました。彼女への恩は、忘れません。絶対、アルフィを傷つけたり、貶めるようなことはしません」
「……ユーア」
アルフィが、声を漏らした。
優愛は、アルフィが泣きながら自分の身を案じてくれた時のことを思い出した。
出会って一日も経っていない、出会い方も最悪だったというのに、彼女はその深い優しさで優愛の命を救ってくれた。
今更ながら、優愛はアルフィに心の中で感謝していた。故に、アーヴィに宣言する。––しかし。
「アルフィは、僕が絶対に幸せにします。––だから、彼女と一緒に住む権利を、僕にください!」
––それがどう言う意味を持つのかも知らず、優愛は力強く言い放った。
まぁ、と感心するマダム。口からお菓子をこぼすアーヴェン。絶句するアーヴィ。
沈黙する食卓。優愛はきょとんとしていた。
そして––。
「だ、だ、だ、だからっ! 私には、婚約者がいるんですってばーっ!」
––顔を真っ赤に染めた、アルフィの叫びが屋敷全体に響き渡った。
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