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いかんな、服を着ているのに興奮してきた

 コウヤに与えられた力。


 その正体は『脱げば脱ぐほど強くなる』と言う、倫理観に喧嘩を売っているとしか思えない代物であった。


「なんて素晴らしい能力だ。まさに俺の為にあると言っても過言ではない」

「そんな能力で喜ぶのはコウヤさんくらいですよ……」

「よし、この能力には『見せる(ショウ・タイム・)悦び(エクスタシー)』と名をつけよう」

「どんなセンスですかそれはっ!」


 エリンのツッコミにもコウヤはどこ吹く風。

 コウヤにとって『見せる悦びショウ・タイム・エクスタシー』の能力は、まるで自分の趣味を肯定してくれる理解者であるようにも感じられた。


「いかんな、服を着ているのになんだか興奮してきた……少し能力の試しでもしてみるか。身体が疼いて仕方ない」

「あの、そう言う周囲の人のことを考えない発言は本当にやめてもらえませんか? 鳥肌立つんで」


 自分の身体を抱くようにして腕をさするエリン。そんな彼女の訴えもコウヤには残念ながら届いていない様子である。

 『見せる悦びショウ・タイム・エクスタシー』は脱がなければ発動しない能力。脱ぐことが前提であるなら、言ってしまえばこれは露出行為を正当化させるものだ。


 脱いでいいのなら、脱ぐ。それがコウヤと言う男であった。


「よし、では早速――」

「はぁー……まあ確かに能力を確認することは大事ですけど――ってぇ! 何でズボンに手をかけるんですかコウヤさん!」

「バカかお前は。『見せる悦びショウ・タイム・エクスタシー』を発動させるために決まってるだろ。脱ぐんだよ」

「それがズボンである必要ありますかぁ!?」


 何のためらいもなく下半身を露出させようとしたコウヤを慌てて止めるエリン。


「わ、私の気持ちも考えてくださいよ! せめて脱ぐなら上にしてください!」

「チッ、神のくせに人間の裸でおたおたしやがって。だが確かに、露出するにしてもいきなりメインディッシュからいただくのも風情がないか。少し気がはやりすぎたか」


 エリンには露出の風情などわからないしわかりたくもないが、そのおかげでまた自分の目の前に恥部が曝け出されることは阻止できたようで、ほっと胸をなでおろす。


「う、おぉおおおおお……! こ、これはすごい! 身体の隅々まで力がみなぎっているかのようだ!」


 いったいいつの間に脱いでいたのだろうか、上半身裸になったコウヤは今まで感じたことのない力強い活力が身体にほとばしるのを感じていた。


「上半身だけでこれか……いったい全てを解放したら、俺はどうなってしまうんだ……!」


 いくらパワーアップしたからと言って、全裸になることを心待ちにする人間は世界広しと言えど彼だけだろう。


 服を脱いで喜ぶ男。文字にするだけで割とひどい絵面である。

 しかし、そんな場面を間近で目撃したエリンは、文句を言ったりせず、かといって引いたりもせず、ただただ目を見開かせて驚きを露わにしていた。


「す、すごい……なんて強大な魔力……! 全力じゃないのにこれなら、もしかして、もしかして本当にこの世界を救えるかも……!」


 神である自分すら、圧倒されてしまいそうになるほどの魔力。

 これほど強大な魔力は、今まで見たこともない。


「……………………………………」


 そんなエリンの声は聞こえているのかどうか。

 コウヤは黙ったままスッ、と拳を振りかざし――


「SHOW! TIMEッ!! ECSTASYッッッッッ!!!!!!!」


 地面へと、勢いよくたたきつけた。


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