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一話



ここは日本ではない。まして、日本から海を隔てて別れた土地でもない。

ここでは君の学習してきた常識は通じないかもしれない。

それでも、君にとってここでの経験は悪いことでもないかもしれなくもないこともなくないかも……。



枕元に置いてあった手紙には、確かにそう書かれている。なんだか文章から後ろめたさを感じる。というか、日本ではないとはどういうことだろう。俺は今も自分の部屋のベッドに横たわっているというのに……。



「おはよう、勇人君。少しばかり周りを見回してみてくれ」



いきなり背後から声が聞こえてきて驚く。ていうかなぜ俺の部屋に女の人が。

声の主の元に振り向く。綺麗な黒髪が瑞々しく(つや)やかだ。寝ぼけ眼にもその光景は輝いて見えた……。

よく見たらここは俺の部屋じゃない。テレビも勉強机も無いし、ベッドが布団に変わっている。



「気づいたかな? もっと驚くと思っていたんだがね……」



少し申し訳なさそうな表情で黒髪の少女は傍に座る。もう一度辺りを見回す。やっぱりここは自分の部屋じゃ無い。

あぁ、夢かこれ。



「実は君には課せられた使命が…………二度寝してる」



==================================



ここは日本ではない。まして、日本から海を隔てて別れた土地でも____



「あれ? なんかデジャヴを感じる……」



何か似たような夢を見ていたような気が……いや、そんなことより今日は楽しみにしていたゲームソフトの発売日なのだ。直ぐにTATSUYAに向かわないと……。


……布団だ。小さい頃から兄弟で使っていた二段ベッドを解体してシングルにしたベッドじゃなくて布団になっている。



「やっと起きた……もう昼だよ」



背中に背中を感じる……アホみたいな文面だがそうとしか形容できない。まさか人生初の添い寝イベントが進行中だというのか。一体どういう状況なのかと女の声に振り返ると、黒髪の少女と目が合った。



「…………」



「今失礼なこと考えてない……?」



何か申し訳ない感情が浮かんできた気がしたが、気にしないでおこう。



「いや、別に君が目を覚ましたら直ぐに伝えなきゃいけないことがあったから布団に入っていたわけで、同年代の男の体に興味があったわけでは無いんだ。パンツも脱がせて無いし」



「俺今全裸なんですけど」



枕元に980円で買ったシャツやトランクスが畳んで置いてある。取り敢えずそれを手に取り布団の中でもぞもぞと着込む。



「とにかくだ……、君には課せられたそれは大事な使命があるんだ」



「そいつは一体誰から……?」



「私だが」



お前かよ。ていうかお前誰だよ。



「自己紹介がまだだったね……。私はリル。もうすぐこの世の全てを統べる王になる者さ……」



ククク、と不敵な笑みを浮かべて喉を鳴らす。内容はともかく、互いの素性を明かすわけだから俺も紹介しないと。



「俺は柊ゆ『いや君のことはいい。股間のほくろの数まで君のことは知っているからね』」



その情報俺の名前より重要か。いや、確かこいつは俺の名前を呼んでいたような気が。



「俺のこと知ってんの、いやそんなことよりここはどこで俺は何故こんな場所に」



「まぁ、落ち着きたまえ。そんなこと、今ではどうでもいいと思わないかい?」



妙に落ち着いた様子で少女は片目を閉じる。どうでもいいとはどういうことだろう。



「まず最初にこの世界の理についてから話そうか」

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