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コントラクト・エンゲーム 4_王国崩壊編  作者: 亥BAR
第1章 絶望のボブと日常の圭
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第7話 チーム分け

 本題に移る、そういった田村がバラバラの位置で立っているメンバーの中央あたりまで歩き、足を止めた。


「まず、わたしたちは三チームに分かれてこれから話を進めていこうと思っています。ちょうどここには六人います。二人ずつ分かれてもらうことになります。

 組み合わせはもう決めてあります」


 そういって田村が流した視線の先は……長井。

「敏和くんは圭くんとペアを組んでいただけますか?」


「……え?」

「……へぇ」

 圭、長井、それぞれが違った反応を出した。


「藤島さんは、アリスさんとペアを組んでください。当然、残ったわたしと武井くんが最後のペアとなります」


 森が長井の側近のうち、女子のほう。田村は男子の方とペアを組むと……。


 随分と奇怪な組み合わせに感じるな……。田村の性格ならば圭を隣に置こうとしてくると思っていたが……。少なくとも、アリスこと森を……。

 だが……そのどちらでもない。


「少しだけ質問してもいいか?」

 森が手も上げないままぶっきらぼうに口をはさんできた。田村はニコリと笑いそんな森に対して促しを見せた。


「そもそもペアに明かれて何をする? チームを作ってどうするんだ? まだまったく説明がないだろ。それでは、なんとも返事ができない」


「むろん、分かっていますよ。これから説明していきます」


 田村がまず向かったのは武井のもと。武井の肩にポンと手を置き、圭たちがいるほうに顔を再度向ける。

「まず、我々のチームですが、真の王に関する調査を行っていきます。具体的に言えば、すでに分かった影武者本人に直接迫っていくことになるでしょうか。

 幸い、その影武者であった人物はわたしも知り合いでしてね。そこから、真の王に迫れないか探っていこうと考えています」


 そんなことを言ったあと、田村はあからさまに圭の顔を見て不敵な笑みを浮かべた。

 影武者……すなわち……西田次郎……。尤も、いまの圭はその事実を知らないという形にはなっているが……。


「続いて、藤島さんとアリスさん……君たちには平たく言えば、はぐれ者集めを行ってもらえるかな、と思っています」


「……はぐれ者? どういうことだ?」

 森があからさまに首を傾げ、藤島も意味不明と言った表情を羽化ゲル。


「わたしも……本当につい先日までキングダムの一員でしたからね……。キングダムの勢力はすでに学校全体に行き分かっていると確認しています。

 おそらく、コントラクトの支配を受けている者、その大半がキングダムのメンバーであるということです」


 ……そこまで……。いや、可能性としては十分にあったのか……。


「ですが、大半……ということは一部はまだキングダムの勢力外もまた存在するということです。そんな人たちを結集しておきたいので、それを君たちにお願いしたいのです。


 藤島さんは偽物ではありましたが、この学校の人たちからは敏和くん……すなわち解放者の側近という認識になっていますから。藤島さんの顔を使えば、集めることはできるはずです」


 ……確かに言っていることは間違っていない……。だが、それならば直接長井を使えばいいことだろう。それを差し置いてでも、長井と圭にさせたいことは……。


「さて、最後は圭くんと敏和くんです。これはわたしが信頼している友人であるからこそお願いできることです」

 そんな臭い前置きを言った後、圭の肩にポンと手を置いた。


「君は解放者本人です」

 そして、さらっとそんなことを告げてきた。


 あまりに唐突の言葉だったので、理解が追い付かずポカンとしてしまう。数秒たちその言葉に意味が頭の中で解釈され始め、やっと反応へと至った。


「……はい?」

 圭が戸惑いの顔を見せても、不敵な笑みを浮かべるだけの田村。離れたところで立っている長井も少し首をかしげて見せていた。


「……すみません。どういう事ですか?」


 しっかりと質問を重ねると、やっと田村は肩に置いてきた手を離した。

「まぁ、すみません。少し説明不足でしたね。君が解放者本人になってもらう、という話ですよ」


 あぁ……なるほどね……そういうことか……、いや分からん!

「すみません……それでもよく……」


 田村は圭の顔に向けて「まぁまぁ」と手を挙げた。

「実は真の王の影武者の正体が分かってことによって、君と……圭くんと少しつながりが出来てしまったんですよ」


 少し間をおいて息を吐く田村。

「圭くんのことを考えて、直接はっきりと影武者の正体を教えるのは避けたいと考えています。ですが、君とつながりがある人物であるということは年頭においてください」


 ……隠しているように聞こえて、実質答えになっているだろう。圭の知り合いでなおかつ、田村ともまた知り合いである人物など、次郎以外いない。いや……でもこれは圭が事実を知っているからこそ、思えるだけか……。

 知らなければ、次郎を疑うなど……純粋な小林圭ならしかいのかもな。


「そして……あの真の王の言動から言えば、真の王は、解放者の正体として、圭くんを候補の筆頭として挙げているのではないかと思ったんです。少なくとも、その推測が正しいのかどうかを確かめようとしているのでしょう」


 ……次郎も同じ結論を出していたな……。勝手に敗北宣言して、影武者の正体を明かすことをためらわなかった……、そしてその正体が次郎。圭の反応を見たい……。そういう事は、田村も推測に至っているということだ。

 尤も、こいつはずっと前から圭をにらんできたはずだがな……。


「俺が……解放者……?」

 一応、何も知らない小林圭を演じてみた。ただ、この場では本当に一応程度の効果しかないように思えてならないが……。


「もちろん、わたしはそんなことはないと考えていますけどね。圭くんはケータイしか持っていないのだから、真の王はとんだ的外れな推測を立てていることになっていますよ。

 ねぇ、圭くん?」


 そしてここ一番、これでもかと不敵な笑みを圭に向かって突き付けてきた。本当にいい性格をしていらっしゃる。


「ですが、ここはあえてそれを利用させてもらうことにしましょう。これから、圭くん、君には本物の解放者であることを匂わす行動をしてもらいます。君が解放者となるんです。


 そうすれば……必ず真の王は君に食らいついてくれるはずです。何しろ、真の王は実質、解放者に敗北しているのですから。この状況下でとどめを刺しにくるはず。


 すなわち、圭くん……君は真の王をおびき寄せるためのエサになっていただきたいということですね」


 ……うまい進め方をするもんだ。田村も、おそらく圭が解放者であるとかなり確信に近づいていることだろうに……。それをこういう形で利用してくるか……。

 ただ……圭として、これを断る理由は逆にないかもしれないな。

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