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コントラクト・エンゲーム 4_王国崩壊編  作者: 亥BAR
第1章 絶望のボブと日常の圭
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第3話 協力要請再び

 一気に缶コーヒーを半分ほど飲み、そっと机の上に置いた。そして、協力を要請してきた田村を見据える。


「……また……ですか」


「はい。ですが、まずはその件についてお礼と結果の報告をしておきましょうか」

 田村も缶を机にコンと置くと、両手を机の上で組む。


「前の演説でもあったように、解放者と王とのゲーム対決が行われました。そして解放者は王に一時的な勝利を収めることができました。

 そして、圭くんには隠していましたが、実はわたしもまた、解放者の人間だったんですよ」


 ……“偽物の”が抜けているぞ。心の中では毒づいておきながらも、小さく首を縦に振る。

「そうなんですか……。では、悲願は達成できたというわけですね。おめでとうございます」


 そう、当たり障りない答えを出してみたが、田村はそれに対してじっと圭の顔を見てきた。

「疑問は……ないのでしょうか? あえて、大量の疑問を残すような説明をしてみたつもりだったのですが……」


「疑問? ……まぁ、ありはしますけど……正直どうでも……。コントラストのことも、それによって起こっていることも、特に興味はないですし」


「そこまでドライに返されると、さすがに悲しいですよ。あと……まだ悲願を達成できたわけではありませんよ。まだ、キングダムを倒しきれてはいませんから。

 ですが、確実にその時は近づいています。


 きっと、君の友人、西田くんも救うことができますよ」


「それは良かったです。お役に立てたのなら幸いです」

 そういえば、次郎を助けるという名目で田村に協力するという話になっていたのだったな……。

 事実を知れば、あまりに滑稽な話ではあるが……。


 ここで田村がう~んとうなる。そしてあからさまに首をかしげて見せた。

「やはり不思議です。なぜ、君はわたしに質問をしないのですか? わたしは解放者の仲間だとはっきり言いました。だけど、君にはその解放者である長井の隣につけと言ったんですよ」


 ……。

「それは……先輩が話したいという解釈でいいのでしょうか? でしたらどうぞ」

「……そ……そうですか……」


 しばらく顎に手を当て考える田村だった。しばらくして一度缶コーヒーを口につけると、一つ咳払いして、状況の説明をし始めた。


 その内容は本当に事実通りのこと。解放者とプラス偽物が存在したこと。田村が偽物側であったこと。影武者の正体を知れたこと。

 解放者の正体が西田次郎であるということ以外の事実をすべて隠すことなく圭に説明してきたのだった。


「これが……現状の話となります。おそらく、君がコントラストと本当に関わりないのならば、この説明ですべてをつかみ取れるとは思えませんが……」


「……まぁ、そうですね。思ったよりずっと複雑なことになっていたみたいですね……」


 圭も説明の嵐に対して一息をつくように缶コーヒーに手をかけた。そのままクイッと喉にミルクコーヒーを流し込んでいく。

 その後、口から缶を話した直後、田村の口が開く。


「で、ここからが本題になってくるのですが」

 田村は右手から三本指を立てた。


「わたしたちはこれから三つの手に分かれてキングダムに……そして真の王へと立ち向かっていくつもりです。その一チームの側近として、君を採用したいと考えているのです」


「……側近……ですか?」


 田村はニコリと笑って続ける。

「はい。君は本当に優秀な方です。コントラストと関わりないという立場も含めて、非常に便りになるんです。

 もう一度、今度はより直接的に力を貸していただきたいのです」


 そのまま手を圭に向かって伸ばしてくる。

「どうか。お力添えを願えないでしょうか?」


 そんな田村の手を一瞥し、そのまま缶コーヒーをすべて飲み干した。

「申し訳ございません。丁重にお断りさせていただきます」


 その圭のセリフが田村の動きをしばらく停止させた。不敵な笑みが少し硬直した表情へと変わっていく。


「お断り……なのですか?」


「えぇ。さっきの先輩の説明で、想像よりはるかに面倒だというのは理解しました。ならば、俺としてはこれ以上かかわりたくないですね」


 その結果、田村が圭を解放者だと断言するならすればいい。もう、どうだっていい。隠すことに何の意味もない。


「……ですが、次郎くんを助けたいとは……」


「きっと先輩なら、俺がいなくてもすべてやってのけるのではないですか? というより、先輩だからこそ、俺はこうして任せられるんだと思います」


 そうだ、たとえ放っておいても、こいつはキングダムを……真の王を倒すんだ。田村本人が言ったように、圭が黙ってみていれば、すべてを達成してくれるのだろう。


 だったら、それでいいじゃないか。

 なにより、もうこれ以上、戦いを挑むのは……疲れた……精神的な意味合いで。


「ですが……、君がいれば……より確実にそれを遂行できるとわたしは思っているのですよ。君の力がどれほど影響をもたらすか」


「もう、俺は無理ですよ。先輩のこと……陰ながら応援しておきますから」

 空になった缶コーヒーを手に持つとそのまま席を立つ。そして、実質田村から逃げるようにその場を離れていった。

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