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コントラクト・エンゲーム 4_王国崩壊編  作者: 亥BAR
第1章 絶望のボブと日常の圭
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第12話 田村と下校

 さらに数日がたったころ、下校時のことだった。


 下駄箱から自分の外靴を取り出し、地面に投げ下ろすタイミング。

「こんにちは、圭くん。帰るところですか?」

 まさに前と同じような状況で田村が再び話しかけてきた。


 思わずため息をつきそうになったが、それはぐっとこらえ田村に視線を合わせに行く。

「はい。そうですよ」


 一度ニコリと笑い、そのままスリッパを棚に上げる。そのまま外靴に足をかけるころ。


「圭くん。わたしも一緒に帰りましょう」

 そういって田村は三年生の下駄箱へと走っていく。


 前回はフライハイトに連れ出して、今回は一緒の下校か……。まぁ、ここで断るのは明らかに変だし、そもそもそんなタイミングもまるでなかった。

 先に外靴に履き替え終えると、少し昇降口の前で待った。


 やがて、「お待たせしました」と言い、半履きの外靴をしっかり履きなおしながらこちらに向かってくる田村の姿が見えた。

 隣まで来て、靴をしっかり履き切るのを確認し、校門に向かって歩み始める。


「ところで、圭くん。あれから、そちらのチームはどうなりました?」


 ……。まぁ、当然、そういう話題は振ってくるだろうな。それがこの下校の目的である可能性すらある。

「長井先輩から……話は聞いていないんですか?」


 そう返すと、田村は真顔で圭に顔を寄せた後、不敵な笑みに表情を変えた。

「すでに聞いていました」


 だろうよ。

「……であれば、答えはまったく同じですよ、それと」


「そうですか……。少し残念です。……まぁ、でも問題ありませんよ。これからも引き続きよろしくお願いします」


「特に俺……何かしているつもり……ないんですけどね」

「君がいてくれるだけでいいんですよ」


 そんな話をしている中、校門を抜け自宅のほうに向けて足を進めていく。田村の家がどちらの方向にあるのかは知らないが、圭の後をついてくるように、引き続き隣にい続けた。


「そうだ」

 少し沈黙があった後、ポンと声を少し上げる田村。

「もう一つ、圭くんに聞きたかったことがあるんですけど、いいでしょうか?」


「なんです?」


「最近、西田くんと何かありました? 喧嘩でもされたんです?」


 ……今更な質問だな……。というより、ほぼほぼその理由は分かっているだろうに……。


 確かに次郎とはここしばらく校内で口をきいていない。それどころか、連絡すらお互いしない形だ。圭が一方的に距離を置き、次郎も諦めた結果が、今の形。


「まぁ……はい……」

 少し濁すような感じで返事をしてみると、田村はさらに食いついてきた。


「ちなみに……何があったんです? きっかけは?」


「……些細なことですよ……、友人のヒビがあるのって、案外そういうのが大半だとは思いません?」


「まぁ……それは、一理あるでしょうね。でも逆に言えば。些細なきっかけがあれば、すぐに仲直りできるものだとは……、

 いや……どうでしょうね?」


 ……普通、そこは言い切ってしまえよ……。まぁ、田村自体が普通じゃないといえば、それで通るのかもしれないが……。


「よかったら、わたしがその件、持ってみましょうか? 西田くんとも顔は聞いていますし、それなりの役には立てるかなと」


 無茶言っているんじゃねえよ。裏切り第一号の田村が、裏切り第二号の次郎と裏切られた解放者ボブの仲を持つなんて、ジョークにしかならないぞ。

 むろん、分かって言っているんだろうが。


「それは大丈夫ですよ。俺とあいつは……それなりの仲なんで……。先輩の手を借りるのは……ね」

 全力でお断りする。余計なお世話にも程がある。そもそも、そんなことできるはずがない。


 次の分かれ道に差し掛かるとき、圭が曲がるのとは別方向に田村が体を向けた。

「では、わたしはこちらなので。何かあったらいつでも相談に乗ってください。友人として、できる限り協力しましょう」


「それはありがとうございます。その時はぜひ」

 にこやかに言いつつ、裏で「結構だ」と言い放っておく。そのまま、田村が去っていくのを確認し、自宅に向かって足を進めた。



 そして、ちょうど家に着くころだった。急に一本の通話が圭のケータイに入ってくる。その着信元の名を見て思わず一瞬、足を止めた。


 一度留守録にして閉じた後、自分の部屋に入る。そして、再度ケータイを手元に、画面を見た。


 西田次郎からの着信。すでに留守録が終了していたので、それを再生し、ケータイを耳に当てる。


『圭、突然悪い。今の俺とお前の立場関係は理解している。そのうえで聞いてほしい』


 そんな言葉の後、少し向こうで息を吸う音が聞こえてきた。

『田村零士は……やばい。お前の……解放者の目的を代わりに成してくれるような人物ではない。ただの狂ったゲーマーだ』


 ……狂ったゲーマー? 田村零士……が……。


『スマホのほうに、録音したやり取りの一部を送る。これを聞いて、どうするかは、お前が決めればいい。判断はゆだねる』


 しばらくすると、音声は止まり『このメッセージを消去する場合は……』という電子メッセージが耳に届き始める。

 そんな中、スマホのほうに、LIONを通じた音声ファイルが届いたのをたった今、確認できた。

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