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コントラクト・エンゲーム 4_王国崩壊編  作者: 亥BAR
第1章 絶望のボブと日常の圭
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第1話 無数の着信

 黒を基調としたチェック柄のカバーがつけられたスマホ。それが震え始め、ベッドのシーツを揺らす。もう、何度目だろうか……、着信を示すその合図に対し、億劫に思いつつ頭からかぶった布団から顔を出す。


「……、はぁ」

 その着信先が西田次郎と分かるや否や、スマホをさらに遠ざけ布団の中にうずくまっていく。

 その後もシーツは揺れ続けたが、やがてスマホの振動とともに終わる。


「……チクショウ……」


 真の王と偽物の解放者長井敏和、そして圭たち三つ巴のエンゲームは、長井が一位、圭が二位で王が三位という結果に終わっていた。


 結果として、影武者が田村零士をキングダムの支配から解放し、圭たちは打倒真の王とする長井たちの目的を阻害出来ない契約をさせられた。また、圭たちが影武者の正体を知る権利を得たが……それは……言うまでもない。

 これですべての契約の処理が終了している。


 田村との共闘契約は続いているが、実質機能などしていない。受けたダメージという観点で見れば、このゲームの敗北者は……圭なのだろう。


 今思えば、なぜ田村に疑いを掛けていなかったのか……、だけど……次郎に関しては……。


 そもそも分からないこともある。次郎は確かにスマホで契約したが、そのアカウント名は「ザ・キング」だった。圭が知っているアカウントは、「ドラゴン@ハンターGXアーキタイプ」。そもそも、スマホの種類も違っていた。


「……どうもでいいか」

 すでにゲームに敗北しているのだ。確かにまだ戦えるかもしれないが、それ以上に今の圭には立ち上がろうとする気概がまるで持てない。

 二人の裏切りが……果てしなく心臓に食い込んできている。


 再び、シーツが揺れ始めた。ブーッというスマホのLIONを通した着信。少しだけ布団をめくり目だけスマホ画面に寄せる。

 今度の着信相手は森太菜だった。


 だけど、彼女に対しても出られる気持ちはなかった。結果、さらにスマホを奥へ押しやった。さっきから何度も同じ動作を繰り返していたため、ついにスマホはベッドの端を超え床に落下。


 だけど、それを気に留めることもなく、ぐっと布団の中にただ包まるのだった。



 布団の中で休日を過ごしたが、時は無情。気が付けば月曜の朝を迎えることとなる。ここで学校を休めば、田村は解放者の正体を圭だと断定してくることだろう。だけど、それでも一向にかまわないと思っていた。


 だが、母親にたたき出されては結局学校に行くしかなかった。


 登校中、スマホ画面を見る。充電などまるでしていなかったため、残りバッテリーは十パーセントを切っている。帰宅するまでには切れていることだろう。


 残り少ないバッテリーを気に留めず、着信履歴を見てみる。予想はしていたが次郎と森からの通話が無数に入っていた。ケータイのほうを見るとそちらも同じように残り少ないバッテリーに大量の着信。


 中には数件、亜壽香や田村の着信まであった。亜壽香は知らんが、田村の用事は大体わかる。別に折り返す気もさらさらないが。


 再度スマホ画面に視線を向ける。次郎からLIONでメッセージも入っていた。既読をつけるのは癪に障るのだが、一応中身を見てみる。


『圭、俺が影武者であったこと、黙っていてすまん。お前を出していたことも当然、謝る。だけど、契約上どうしてもお前にそれを告げることができなかった。

 だが、今なら話せるから、俺の現状をできる限りお前に伝える』


 そんな前置きのあと、さらにメッセージが続けて入っていた。


『まず、俺が使っていたスマホは別の人のスマホだ。真の王が誰かから借りてきたものを利用して作成したアカウントがあの「ザ・キング」。


 もともと俺は真の王とネイティブの二重支配を受けている状態だった。そして、真の王がキングダムを乗っ取るという目標を掲げ、俺にもう一つのアカウントである「ザ・キング」を作らせ、影武者に仕立て上げた。


 基本的に俺は真の王の命令に従い、田村を始めとするキングダムの前に立ちふさがり、戦った。俺はそういう存在だ』


 ……。


『あと、お前に伝えられる真の王に関する情報だが……悪い。ほとんどない、俺も真の王の顔を見たことはないんだ。おそらく、奴の正体を知っている人物は……本人以外存在しない』


 なんだよそれ……、どっちにしてももう必要もない情報か……。


『それと、これは推測だが、おそらく真の王はお前の正体の可能性として、圭が挙がっている可能性もある。


 エンゲームの時、真の王は自ら敗北宣言し三位に落ちた。それは、単純に田村先輩とお前の仲を裂く必要がなくなったからというのも理由だろう。だけど、それ以上に、影武者の正体を、すなわち俺の顔をお前に見せたかったんじゃないかと。


 はっきり言って、あの状況で自ら敗北宣言するなど、影武者の顔をさらすことにメリットがあったからに違いない。もし、本当に圭なら間違いなくこの事実に対して動揺を誘える。


 そのあとのお前の行動からお前と解放者の関係を確かめようとしているのだろう。だからこそ、お前は登校すれば、通常通りのお前を演じなければならない。俺を許せないのは分かるが、ここはそうするしかない。

 許せとは言わないから、現状を分かってほしい』


 長ったらしい連続メッセージを次でラストとなる。

「あと、もう一つ。真の王はさっき言ったように、圭と俺の関係性を少なからず知っている人物ということになる。少なくとも、解放者と圭を結びつけることができるレベルに近い人物。


 同じクラスの人か……一年の時のクラス仲間か。まぁ、もともとは田村も真の王の支配下にあったのだから、そこから情報が流れた可能性も十分あるが。

 どちらにしても、ここから先はお前を頼るしかない。


 また、じっくりと話ができる機会があることを願っているよ』


 そのメッセージが送られた後以降の次郎からの通話は入っていなかった。

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