レイシアとの再会
ジュリアとポールは準備を進めていき、いよいよフサンダールへ行く日がやってきた。
ポールは3人の男を金で雇いフサンダールまで同行させようとしていた。
3人の男はならず者で金で雇われればどんな仕事でもするような連中だった。
ポールはその男達を傭兵として雇い、フサンダールに行ってレイシアから魔術書を奪わせようとしていた。
ジュリア達は船でフサンダールに向かおうとしていて傭兵達が船を出す準備をしていた。
船を出発させる準備が整うと傭兵達のうちの1人が準備が出来たので皆に声をかけた。
「いいぞ!船を出航させる準備が出来た!出航させるぞ。」
ジュリア達の乗る船はフサンダールを目指して出航した。
船が出航するとジュリア達は特に何もする事はなく、フサンダールに着くまで皆自由にしていた。
ジュリアは船の上で海を眺めながら物思いにふけっていた。
(まさかあそこにまた帰る日がくるなんてね……。それにしてもレイシアはまだフサンダールにいるのかしら……?村から出る事は許されてないけど流石にもういい大人だものね……もしいないんだったら村の連中に吐かせないと……あの魔術書が無くちゃ話にならない……。)
ジュリアが考え事をして暫くするとポールがジュリアの元に近づいてきた。
「いよいよだな、ジュリア……本当に大丈夫なのか?お前を信じて?」
「ええ……大丈夫よ。1度見たらきっとあなたも信用するわ。それよりも今は魔術書を奪う事に集中しなくちゃね。」
「ああ……そうだな。じゃあそうするよ。」
ポールはそれから少しだけジュリアの側にいたが、少し経つと気を遣うからかジュリアの下を離れていった。
ジュリアはその場所に留まり海の方を眺めていた。
ジュリア達が船に乗って1日程の時間が過ぎた。
すると船の前方に小さな島が見えてきた。
すると船を操縦していた傭兵の男の1人がジュリアの方に来て言った。
「おい、あの島でいいのか?上陸の準備に入りたいんだが……。」
「ええ……あそこよ。いいわ、上陸して頂戴。」
「ああ……分かった。じゃあ旦那にもちょっと言ってくるからよ。」
そう言うと男はポールを探しにジュリアの下から離れていった。
それから少し経って傭兵の男から上陸する事を聞いたポールがジュリアの下まで歩いてきた。
「いよいよだな、ジュリア。魔術書が手に入ったら手はず通り確認させてもらうぞ。」
「ええ……分かってるわ。あなたの方も他の2人をよろしくね。失敗は許されないわよ。」
「ああ……分かってる。2人にはちゃんと話はつけてある。問題無くやってくれるはずだ。……まぁ今は魔術書を手に入れる事だな。この話はそれからだ。」
「ええ……そうね。頑張りましょうね。」
船は間もなくフサンダールに着こうとしていた。
フサンダールに着くとジュリアの指示で船を人気がない浅瀬に上陸した。
船から降りるとジュリアは改めて確認するように言った。
「いい?とりあえず私が1人でレイシアの家に入るわ。あなた達は家の近くで待っていて。もし何かあったら私が合図を送るからそれまでは決して余計な事はしないで!いいわね?絶対よ?」
すると傭兵の男の1人が言った。
「ああ、分かったよ。さっさと終わらせてとっととずらかろうぜこんな場所。」
ジュリア達はそれから皆特に話す事はなく、ただ黙ってレイシアの家まで歩いて行った。
レイシアの家に着いてジュリアが家の窓を覗くと、そこには中年の女と小さな女の子がいた。
ジュリアはレイシアかどうかを確認する為に家のドアをノックした。
「ごめんください。ちょっといいかしら?」
外からドアをノックする音が聞こえて家の中の女が返事をした。
「はーい。どちらさまー?」
中の女が元気の良い返事をしながらそのままドアを開けた。
その女はドアを開けると驚いて一瞬固まってしまった。
「……ジュリア……?もしかしてジュリアじゃないの⁉︎」
「……久しぶり、レイシア。」
するとレイシアは嬉しそうな表情を浮かべて言った。
「やっぱりジュリアなのね⁉︎もう!こんな長い間どこに行ってたのよ⁉︎みんな探してたのに見つからなかっんだから!」
レイシアのその言葉にジュリアは少し困った顔をして言った。
「ちょっとね……まぁ色々あったのよ、私も。そんな事よりあなたは一体どうしてたの?ずっとこの村に住んでたの?」
「うん……まぁ私も1度出たんだけどね……。結局戻ってきちゃって……。まぁとにかく中に入って!中でゆっくり話しましょうよ!」
「そうね……私もあなたに話したい事がたくさんあるし上がらせてもらうわ。」
「ええ!入って、入って。」
ジュリアとレイシアが家の中に入って歩いていると、レイシアが感慨深そうに言った。
「そっかー……もう20年になるんだもんね……。本当に久しぶりね……。」
「ええ……そうね。あなたも随分大人っぽくなったじゃない?」
「えー?そんな事ないよ。まぁ私も色々あったからねー……。」
「そうなの?じゃあ後でゆっくり聞かせてもらおうかしら?」
「ええ……そうね。とりあえずお茶でも出すわ。リビングでくつろいでて。」
「ええ……ありがとう。」
そしてジュリア達がリビングに行くと、リビングには小さな女の子がいた。
ジュリアはレイシアにその女の子について聞いてみた。
「……もしかしてこの子あなたの子供なの?」
するとレイシアが少し照れ臭そうに言った。
「ええ……エミーって言うの。もう5つになるのよ。子供の成長って早いわね、ほんと。」
「……そう。私はここにいなかったからあなたが結婚しているなんて知らなかったわ。おめでとう。旦那さんは?今どうしているの?」
するとレイシアは黙ってしまったが、少し経つと話し始めた。
「旦那はちょっと……別れたの。あの子が小さな時に……。」
「……そう。」
今度はジュリアが黙ってしまったのでレイシアは気を取り直して話を続けた。
「私もエミーが生まれる前はフサンダールから出ていてね。旦那は別の場所の人よ。ただエミーが生まれて少し経ってね、またこの村に戻ってきたの。」
「そう……大変だったわね……。」
するとジュリア達の話をずっと聞いていたエミーが突然話しかけてきた。
「お母さん!その人誰なの⁉︎お母さんのお友達なの⁉︎」
するとレイシアがエミーに言った。
「こら、エミー。ちゃんと挨拶しなきゃダメでしょ。」
するとエミーがジュリアの方を見て挨拶をした。
「こんにちは!」
ジュリアも笑顔でエミーに挨拶をした。
「こんにちは。私はあなたのお母さんと小さい頃から友達なのよ。エミーちゃん、よろしくね。」
するとエミーは大きな声で返事をした。
「うん!よろしくね。」
ジュリアはエミーとの話を終えると、レイシアの方に近づいていって小さな声で言った。
「ねぇ……あなたと2人だけで話したいの……どうにか出来ないかしら……?」
レイシアはジュリアの異変に気付いたのかエミーの方を見て言った。
「エミー。自分の部屋で遊んでなさい。お母さんお友達と2人で話したいの。」
「えー……。」
「エミー。ちゃんと言う事聞きなさい。お母さんを困らせたいの?」
「えー……もう……分かった。じゃあ部屋で遊んでるね。」
そう言うと駆け足でエミーは自分の部屋まで行った。
レイシアは1つ溜め息を吐いた後ジュリアに聞いた。
「それで?一体何の用なの?」
するとジュリアは少しためらったふりをして訳を話し始めた。
「 あなたが昔作った魔術書があったでしょ……?あの魔術書を少し借りたいの……。」
「何に使うの……?あんな物……?」
「ちょっとね……でも私にはどうしてもあの魔術書が必要なの……。貸してもらえないかしら……?」
レイシアは少しためらって窓の方に行き、外の景色を見ていると人影のような物が見えた。
そしてレイシアがジュリアの方を振り返ると、ジュリアは少し微笑んで言った。
「安心して……あなたが魔術書さえ渡してくれればすぐ消えるわ。」
レイシアは溜め息を吐いて言った。
「どうしてこんな事になるのかしら……別に魔術書を渡すのはいいんだけどね……。あなたが会いに来てくれたと思って嬉しかったのに……こんな理由じゃなかったらね……。」
そう言うとレイシアはその場からどこかへ行ってしまった。
レイシアが戻ってくるとその手には魔術書があった。
「はい、これ……。中身を確かめて。あなたなら何となく分かるでしょ。」
ジュリアはレイシアに言われた通り魔術書の中身を確かめた。
しかしジュリアは1度しか見た事が無かったし確認の仕様がなかった。
ただジュリアはあまりレイシアを厳しく問い詰めるような事はしたくなかった。
「ありがとう。この魔術書で本当に合ってるのね?」
「ええ……まぁ信用出来ないんだったら1度確かめてまたここに来たらいいわ。でも何に使うのそんな物……?理由も教えてくれないの……?」
ジュリアは話すかどうか迷ったが、レイシアに悪いと思ったのかそれとも昔から知っているという事で安心したのか、ちゃんと事情を話す事にした。
1度辺りを見渡した後ジュリアが言った。
「レイシア……レールムっていう国を知ってる?」
「レールム……?ええ……昔外にいた時行った事があるわ。あの大きな国よね?確か城下町があった……。」
「ええ……そうよ。その国が今王位継承の争いをしているの。」
「王位継承……?」
「ええ……私はある男を使ってその国の王子とその男を入れ替える気なのよ。」
「……そのある男っていうのは誰なの……?」
「……ポールという男よ。彼は今の王様の弟の子供なの。でも彼には実質的に王位継承の資格はない。でも彼はどうしても王様になりたがっている。まぁ誰をならせても良かったんだけどね……この計画を成功させる為にはある程度権力を持った人がいいと思って……まぁそんなところよ。私が考えている事は。」
「……。」
レイシアが黙っていると、ジュリアはレイシアを安心させようとしたのか言った。
「大丈夫よ。きっと上手くいくわ。この魔術書があれば新しい王様を私の思い通りに操れる。……それに無事済んだらあなたにもきちんとお礼に来るわ。」
レイシアは魔術書を渡してはいけないと思ったがここで渡さなければ何をされるか分からない。何より外にいた人影が気になって断る事など出来る訳がない。レイシアはジュリアに合わせるしかなかった。
「……別にいいわ。お礼なんて。それよりも本当に大丈夫なの……?相手があんな大きな国なんて……危険じゃないの……?」
するとジュリアが笑顔で言った。
「大丈夫よ……何も心配いらない。きっと上手くいくわ。」
すると突然窓の外から人影が動いているのがジュリアには見えた。
ジュリアはポール達が怪しんでいるのだと思い、とりあえずポール達の元へ早く戻る事にした。
「……ねぇレイシア。私もう行くわ。あなたには感謝してる。本当にありがとね。」
ジュリアのその言葉にレイシアは1つ溜め息を吐いて、苦笑いをしながら言った。
「いいのよ、そんなお礼なんて……それにそんな物別に使わなかったし……。それよりもその魔術書が本物かどうか確かめる必要があるんでしょ?どうするの?」
「ええ、その事については私に少し考えがあるの。……大丈夫よ。この魔術書はきっと本当だから。もう戻って来ないから安心して。」
「……ジュリア。」
「私もう行くわ。ありがとね、レイシア。上手くいったらまた会いましょう。」
「……ええ。あなたも気をつけてね。絶対に無理しちゃダメよ。何かあったらいつでも呼んでね。」
「ええ……大丈夫よ。それじゃあね。」
そう言うとジュリアは手を振りながらレイシアの下を後にした。
レイシアはジュリアが遠ざかって行くのをただじっと見つめている事しか出来なかった。




