フサンダール出発
レイシアの魔法が成功してから2カ月の時が過ぎようとしていた。ジュリアはその間ずっと魔術書を手に入れる方法を考えていた。
しかし魔術書を手に入れるのは簡単ではなかった。
レイシアの家に遊びに行って、レイシアがいない間にレイシアの部屋の中を探したりしたが見つからなかった。
レイシアは自分から魔術書の話をする事まなかったので、ジュリアは少し苛立っていた。
レイシアに直接聞く事も考えたが、レイシアはおそらく魔術書を渡しはしないだろうと考えていた。
ジュリアはどうにかレイシアにバレないように魔術書を手に入れる方法がないか、その事ばかり考えてただ時だけが過ぎていった。
ある日ジュリアはフサンダールを船で出ようとするおじいさんを見つけた。
フサンダールでは特別な用がない人以外村から出る事は許されていなかった。ジュリアはそんな暮らしにずっとうんざりしていた。
そのおじいさんは靴職人で靴の材料を買い付けに行く為に、小さな船で大陸に向かおうとしていた。
ジュリアは思いきってそのおじいさんに話しかけた。
「おじいちゃん、これからどこに行くの?」
するとおじいさんは船を出す準備を止めて、ジュリアの方を振り返っていった。
「ああ……ジュリアか。これからちょっと材料の買い付けにな。どうしてだ?」
するとジュリアはおじいさんの目を見つめながら言った。
「私も付いていきたいんだけど……ダメかな……?」
するとおじいさんは慌てた様子で言った。
「なっ……?いやダメだ、ダメだ!この村から出ちゃいかん!それに他の場所に行けばこの村と違って何が起きるかも分からん!危ないんだぞ!」
そう言うとおじいさんはジュリアの事を相手にしなくなり、船を出す準備をまた始めた。
おじいさんは荷物を積み終えると船からロープを外そうとしていた。
ジュリアはその様子をただじっと見ていた。
おじいさんの乗っている船が海に出た瞬間、突然ジュリアが船に飛び乗った。
「こりゃ!何しとる⁉︎」
おじいさんが慌てた様子で言ったがジュリアは引き下がらなかった。
「だって……!私はもう15よ!このままずっと村の中に居続けるだけなんてうんざりなのよ!」
「いかん!村の外に出る必要はない!それにお前さんを連れていけばワシが何を言われるか分からん!さっさと帰るんだ!」
「イヤよ!絶対に帰らない!」
おじいさんはジュリアの反対を押し切って船を漕いで陸に戻ろうとした。
「待って!」
ジュリアはおじいさんの体に飛びつき必死で抵抗しようとした。
おじいさんはそんなジュリアを見て溜め息をつき船を漕ぐのを止めた。
そしてジュリアに理由を聞いた。
「どうして村からそんなに出たがる……?お前は魔導師なんだ……。正体がバレたら村の外じゃただじゃすまないんだぞ……。」
するとジュリアは悲しそうな表情を浮かべて言った。
「だって……私はずっとここだけで暮らしていくなんて嫌なの!お願い!1度だけでいいから外の世界を見せて!そうしてくれたらもうワガママ言わないから!」
おじいさんはすごく困っていたが、ずっと村に居続ける事しか出来ないジュリアの気持ちが分からない訳でもなかった。
そしておじいさんはジュリアの方を見て言った。
「……はー……分かった。今回だけだぞ。ただ約束してくれ。町に着いても決してワシのそばから離れんと……そうしなければワシは連れていく事が出来ん……。約束出来るか?」
するとジュリアは嬉しそうな顔をして言った。
「ありがとう!約束する……!絶対に離れたりしないから!」
おじいさんはジュリアの言葉を聞くと1つ溜め息をついて反対側を向いた。
そして1度ジュリアの方を振り返って言った。
「……出発するぞ。しっかり掴まっておくんだぞ。」
そう言うとおじいさんは船を漕ぎ出した。
船を漕いでいるおじいさんの後ろでジュリアが小さな声で言った。
「ありがとね、おじいちゃん……。」
おじいさんは前を見たまま船を漕ぎ、そのままジュリアに言った。
「村から出たという事は誰にも言っちゃいかんからな……。何、お前さんも1度他の場所を見てみたら案外思っとったのと違うと思うじゃろうて……。まぁ1度位見ておくのもいいのかもしれんな。」
そう言うとおじいさんは船を漕ぐのに集中して話す事はなかった。
船はゆっくりと大陸に向かって進んで行った。




